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家系つながり 作者:米沢涼

第1回   出会い
      そうやっていつもいつも俺を馬鹿にしやがって・・・
 
 乖離(かいり)。今になっての後悔が嫌いなのだ。いつもいつも後悔しまくる魁人(かいと)俺ら二人は、何かの縁でつながっているような気がした。俺は乖離のほう。俺といっているが、本当は女。男っぽいといわれるので男っぽくしている。
 逆に魁人は女の子っぽい。肩につくかつかないか位の髪の長さ。なぜきらないのかというと、親がそういう趣味だからだ。そのせいで、馬鹿にされている魁人。名前は男っぽいのだが。
 俺らがつながっているものはなんなのかはわからないが、とりあえず親同士友達同士だということだ。そのせいで、性格が逆。俺は髪が短く、ちょいと背が高い。けれど、魁人はチョッと低めだ。
 なにかあれば俺がなぜか助けていた。けれど、俺も魁人ももうそろそろいい加減にしないといけないということは、誰もが判っていると思う。
 もちろん俺たちもわかっていることなのだが。
「乖離・・もうそろそろご飯よ」
 リビングから聞こえる声。それに目を冷める俺は、今まで寝てたらしい。けれど、さっきの夢はなんだったのだろうか。
 階段を降りながら乖離は考えた。それは、自分が変身し、しかも外見が完璧女の子だ。じぶの性格をわかっている乖離は、気持悪いと思っていた。
「どうしたの?変なことでもあったのか?」
 父さんが、心配そうに言ってきた。
「いや・・へんな夢見ただけ・・」
「そうか?」
「なんかあったら、この姉に話してね」
 ドドーンと座っている髪の長く、茶色に染めているこの女は、乖離の姉。累加(ルイカ)だった。
「ハハハッ」
 と軽く流す乖離。乖離は、この家族が大の苦手だった。家にいるくらいだったら、学校に行ってやる。そういう、皮肉というのだろうか、そんな女の子。というか、男っぽい女。
 ケンカだって、負け知らずだ。といっても、売られる喧嘩は買うだけだ。売ることはしない女だ。

 その日の夜。乖離はなかなか眠れず・・きっと眠れないのは、さっき寝たせいだろうが。乖離は窓を開け、ベランダに出た。涼しい風が乖離に当たっていく。ふと目線を前にすると、なんだか浮いて光っているものが見えた。なんだか蛍ではないのだが。しかも、その光は、桃色というなんという女の子っぽい。
 ふと手を差し伸べると、その光は乖離の近くにより、急に手の中に入って行った。真面目に驚いた乖離は、どうするべきかと考えていたが、すると、身体がピンクに囲まれた。
 焦らずに乖離は、深呼吸して焦りを止めた。
 すると、いきなり何か自分が変わりだした。気がついてみると、服がヒラヒラになっており、しかも身体がリボンにまきつかれたように、けれど、その服がこれまたかわいい。リボンは丁度ピンクだった。しかも、髪の毛と肌の感覚が変わった。髪の色は、チョッと薄茶になり、髪が肩くらいに伸びた。
 光が消えたと思い、部屋に入って鏡に向かった。すると、なんだか本当に可愛くなっちゃってる。しかも、いつの間にか黒い靴を履いていた。お嬢様みたいな靴だ。
ベランダにもう一度出て、そこから飛び降りるように、地面に着地。サルみたいなことはなれていて、結構いいものだとも思う。
 そして、そのままてきとうに夜の街を出歩いてみた。丁度お金が無いから、絡まれても知らんで済みそうだ。
 さすがに、このヒラヒラでこの顔だからか、かなりこっちをチラチラ見てくる人がいる。
「なぁ、君いくつ?」
 見回りみたいに、警察の人が後ろから話しかけられた。
「何歳だと思う?」
 側から見たらいくつぐらいに見えるのだろうかと、不思議に思いながらも聞いてみた。
「14歳くらい?」
 十四歳。今の年と同じくらい。今は中二。確かにこんな時間に出歩いていたら、完璧につかまっても仕方ないと思うけど・・・
「ほら来なさい」
「え・・や・・」
「放してあげてください。そのこ・・俺の妹だから」
 そう言って後ろから助けてくれたのは、見知らぬ男の人だった。見た目十八くらいかな?
 警察の人は、信じてどこかに行った。
「馬鹿か。こんな時間にお前みたいなガキ歩いてて!」
「あんた誰?名前は?いくつ?」
 真剣に聞いてるような目で見つめてやった。
「俺は・・白岡鈴斗って・・・何自己紹介してるんだ?俺は・・・って、そういうお前名前は?」
「圷岑(あくつ みね)」
 もちろん偽名だ。もし、どこかで合ったりしたら、運が悪いですんでしまうからだ。名前がかぶると、いろいろ問題があるからな。
「俺は実際のところ十四。おまえは?」
「へぇ〜・・十八だと思ってた。私は十四だよ。タメだね」
「やっぱり見える?十八に・・・いつも言われるんだよな」
 おとなっぽから。
「なぁ、どこの中学?」
「内緒。それまではいえないな」
 そういって、手を振ってバイバイだ。すぐに家に帰った。あれ以上聞かれては、なんだか不思議な感じがしていやなのだ。
 部屋のベランダに、上手く登り、部屋に入るとともに、すぐにもとの自分に戻った。なんだか不思議な感じがしたが、別にいいかという、気ままな性格のおかげで、頭を使わなくても良いのだ。
 そのまま布団に入ると、疲れたのか、すぐに眠りに入ってしまった。
 朝起きて、すぐに鏡に向かった。いつもと同じ顔がそこには映し出されていた。
「どうしたの?鏡をじっと見て。もっと男っぽく髪型してあげようか?少し伸びたんじゃない?」
「うん切って・・・」
 そういうと、準備していましたというように、どこからかはさみを出し、サクサクときっていく。
 いつもの髪の切り方だが、なんだかいつも以上に男っぽくなったような気がする。
 服を着替えて、学校に向かった。カバンは、なんだかいつもより重く感じた。かなりの運動神経をもっているが、結局なんの部活にも入っていない。だからか、なんだか筋肉が衰えてきたのだろうか。
 特別に重いものを入れたわけじゃない。言うなら昨日より軽い。はずなのだが、やはり思い。
「どうしたの?」
 顔を覗きこんできたのは、魁人だった。なんだか、たくましくなった?とおもいながらも、いやぁべつにと頭を振る。
「そう?なんかさ、最近力ついてきたんだ!あれかな?部活のおかげかな?」
 そう。こいつは男だったらということで入った部活がある。それは、バスケ部だった。この学校一厳しい部活だったはず。一瞬抵抗はあったものの、本人がやりたいというなら、否定はしないということで入らせたのだが、やはり不安だ。
 教室に着くと、重く感じたカバンをすぐに下ろし、椅子に座った。なんだか、本当にひ弱になってきている気がする。階段を上るだけで、すこし、息が切れたという。

 そんなこんなで放課後。のんきに階段を降りていくと、影でこそこそという声が聞こえた。すぐに隠れて聞いた。すると、たまに聞くこんな話。
「鈴川乖離。最近目立つようになったよね。」
「あぁ、あの女?ってか男か。よく魁人とつるんでるよね・・・」
 ということばだった。
 またこの話か・・・と呆れながら、玄関に向かった。たまに聞くこの陰口。もう聞き飽きたというか・・単に魁人って、かわいいよねぇ〜乖離とは違ってとか、乖離とか邪魔くせえとか言う奴だ。
 もう慣れ飽きていることばだが、たまに心が弱るときまでもがある。
 特に今日は、胸にズキッと当たった。なんだか、今日に限って女の気持がわかるようなわからないような・・・。ふと思い出した顔。それは鈴斗だ。けれど、ほんとうになんで顔が浮かんできたのだろうか。そう不思議に思いながらも帰っていった。
 昨日の場所に行けば・・・・
 などと考えにも行った。けれど、行けば本当に会えるかもしれない。

 今日の夜。また何かのピンクの光で包まれた。
 これはラッキーと指を鳴らし、ベランダから飛び降りた。軽々と着地は上手くいき、走って昨日の場所へと向かっていた。
 ただし、その場面を見た人が一名それは・・・

 走ってやっと着いた場所は、やっぱり昨日の場所。行けばわかると思い、行ってみただけなのだが。やはり、誰かを探しているように、キョロキョロしていた。声をかけようか迷っていると、いつの間にか目が合ってしまった。もういいのか、こちらに近づいてきた。
「オイオイ。その年齢でここにいるのはまずいんじゃないか?」
「人のこと言えるのか?」
「いえないな」
 と、笑って過ごしたもんだ。どこかでお茶などをおごってもらい、なんだかそんはしなかった。
「なぁ、そういえば、なんでここにいたの?」
「え?それは鈴斗に合えるかな?って思って」
「ハハッ。なんだ、同じこと考えていたのだ。俺も、また岑似合えるかな?って思ってきてみた」
 おんなじことを考えていて、なんだか嬉しくて、ニヤニヤする乖離。嬉しいのだ。本当に。もちろん鈴斗も笑っていた。けれど、それを後ろからつけていたたった一人の女。その視線に気付いた乖離は、ふっと後ろを向いた。すると、やはり見覚えのある顔。それは、姉貴の累加だった。
 どうしたんだろう?そう思いながら、話をしていた。
「あ。もうそろそろ戻るね」
「あ。うん。」
 といって、乖離は急いで家に向かった。やはりつけてきた。誰もいないようなところに入り、後ろを振り向いてみた。
「なに?ずっとつけてきて」
「やっぱり気付いてたのね」
「うん。」
 出てきたのはやっぱり累加。
「ねぇ、乖離よね?なに?それ・・・服着ただけじゃないわよね?なんか、いつもより背が縮んでるし・・」
「まじ?縮んでるんだ・・」
「で?なんなの?」
「それが・・・・・」

「まじで?すごいじゃん。じゃあ、乖離で決定ね」
「は?」
 急に喜びだした累加は、かなりルンルン状態だ。
「実はね、鈴川家には、ある事情がありました。それは、鈴川家に生まれた女の子は、ある日突然変身してしまう。それは、何か強い思いを表しているものに慣れるんだって、女の子が男になりたいと、何か分けありで深く願うと、そうなってしまうもの。とくに、恋愛に対しては、敏感よ」
 恋愛に対してとか言う前に、恋愛に興味が無い乖離は、どうもいえない。けれど、今思って見れは、乖離は鈴斗の事をもっとよく知りたいと思ってきているのかもしれない。
「それと、もう一つ。その力を持っているのは鈴川家だけじゃない。徳嶋家もそうなの」
 徳嶋。
 徳嶋といえば、徳嶋魁人。
「徳嶋家は女じゃなくて男なのよ」

 それを聞いた後、乖離は家の屋根に上り、しばらく考え込んでいた。真っ暗な空を眺め、なんだか、自分が自分じゃなくなっているような気がする。
 あれから部屋に戻って、とりあえずいつもの体形に戻った。あれからずっと、鈴斗の事しか考えれないという、不思議な頭になってしまっている。

 次の日。微妙な眠気さで、リビングに降りていった。軽くその場で伸びをすると、軽々と、天井に手がついた。今まではつかなかったのに。
 というか、伸びすらあまりやらないのかもしれない。背が伸びたなと、また確信を持った。
 ドンドン伸びるままで、縮んだり、止まったりはしない。まだ成長期なのだろうか。
「あ。学校学校」
 学校があることを忘れていて、急いでご飯を食べ終えて、学校に向かった。
なんだか、本当に眠くて、机によしかかるように伏せただけで、ぐっすり眠ってしまった。

「り・・・乖離・・・乖離!」
「うわっはい!」
 びっくりして飛び起きた。すると、まだ教室に居た。乖離を呼んだのは、魁人だったのだ。
 さすがの乖離も驚きだ。
「何?」
「何?ってもう昼だよ」
 よく見てみると、弁当をもっていた。
「あぁ・・うん。」
 そう言って、乖離もカバンから取り出そうとしたら、ハッと気付いた。
「ヤバイ・・・」
「どうした?」
「弁当忘れてきた」
「ったくそんなこったろうとおもったから、持ってきてあげたよ」
「ありがと・・」
 そういうと、何か悲しい目つきでこちらを見る魁人。
 不思議なことが起こりすぎて、いろいろ頭が整理できていないのだ。余計眠くて、もうだめだという感じだ。
「無理。屋上で寝てくる。この後はどうにかしといて魁人」
「えぇ〜!」
 急いで屋上に向かった。
 急に屋上に向かった理由は、それだけじゃない。なんだか、何よりも違和感が出てきたからだ。いつものあの感覚が沸いて出てきた感じ。
 屋上の扉を開き、急いで閉め、奥まで急いでいった。すると、やっぱり予想通り、いつもの女になってしまったのだ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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