「やめろ―――――――っ!! メークル星人!!」 遠くのほうから、何者かが叫ぶ声がした。山田の声でも田中の声でもない。 皆が声のするほうを見やると、源隊長と花子隊員がボロい自転車をぶっ飛ばしてくるところだった。これが源隊長の開発したウマ型スーパーマシン、ウマイナー1号、2号である。と言っても予算の都合上、不法投棄されていた自転車を拾って、「ウマイナー」とペンキで書いて、おうまさんのお面をくくりつけただけの、ちゃちな代物だ。二人はこれを長野の基地からずっとこいできたのである。ちなみに隊長が1号、花子が2号である。 「山田、田中! あとは我々に任せろ!」 源隊長はやる気満々だ。「今日こそこのマシンの威力を見せつけるときだ。花子クン、行くぞ!!」 「ラ、ラジャー!」 花子隊員はあまり乗り気ではない顔だ。この自転車でやる気になれというのはかなり無理な話だ。 メークル星人は背中のウチワをパタパタさせて笑い転げた。 「ギャハハハハ…源海蔵、そんなバイシクルでこのメークル星人様を倒せるとでも思ってるのかぁ!?」 「うるせ――――――!!」 ウマイナー1号、2号は星人に突進していった。 星人は驚いた様子も見せず、ニヤニヤしながら構えている。と、その瞬間、星人の姿が視界から消えたかと思うと、星人の体は宙に浮いていた。背中のウチワを羽ばたかせて飛行している。 「へへへ…俺様が飛べないとでも思ったかぁ!?」 星人は両腕の換気扇と扇風機を高速回転させた。竜巻きが上空からウマイナーを襲う。 「しめた! これを待っていたんだ!!」 源隊長はウマイナー1号を大きく時計回りに旋回させた。花子のウマイナー2号も、1号に続いて回転しはじめた。この回転は星人の竜巻きと逆方向の回り方である。 「これが俺の開発した秘技、ウマイナースピンだ!! 竜巻きとは逆方向に回転することによって、竜巻きの威力を打ち消そうという素晴らしい作戦だ!! わっはっは」 「すごい! 気づかなかった!! やっぱり隊長はすごいなあ」 「どこがだ…」 田中は小さい声でつぶやいた。 ウマイナーは横にガタガタと揺れ、バランスが安定しなくなってきた。竜巻きに逆らって進むのはかなりの重労働なのだ。源隊長も花子もだんだん足が疲れてきた。 「隊長! もうだめです!!」 「耐えろ、花子クン! 頑張れば道は必ず開ける!! …14パーセントぐらいの確率で」 メークル星人は扇風機の回転速度をさらにアップした。竜巻きの大きさも超ドデカ級になる。 源隊長がウマイナー1号から投げ出されそうになったときである。花子隊員のスカートが風になびいた(PET女性隊員の制服は超ミニスカートなのだ!)。そしてスカートの中が丸見えになった。源隊長の目はそれを見のがさなかった。 「は、花子クン! キ、キキキ…キミはなんて過激な下着を着用してるんだ―――――――――!!」 異常な興奮により、源隊長の身体機能は最高潮に活性化した。今までの数百万倍のスピードでペダルをこぐ。付近一帯は真空状態になり、鋭いカマイタチが発生した! カマイタチは竜巻きをズバズバズバッと切り裂き、ついでに星人の体にも大きな傷を作った。 「ぐはっ! くそ…チラリズムエナヂーを利用してパワーアップするとは…!!」 「とどめだ!」 ウマイナー1号は宙に飛んだ。「くらえ〜〜〜〜い!! ウマイナー大車輪!!」 ズガッと強烈なタックルが星人に加えられた。しかも運のよいことにタックルは股間に命中した。 「ギャア〜〜ッ!! ゴ、ゴールデンボールがつぶれた〜!!」 源隊長は体操選手のごとくスタッと地面に着地した。 「フッ、ざまあみろ」 「すごいすごい、さすが隊長!!」 山田は拍手した。田中はア然と見ていた。花子はあきれていた。 スクランブル交差点を覆っていた竜巻きは全て消え去り、女のコのスカートのめくれはおさまった。 「おのれ〜〜〜〜、源海蔵!!」 メークル星人のツラが怒りにゆがんだ。「こうなったら巨大化じゃ――――!!」 メークル星人は巨大化した。回りのビルより高い身長だ。扇風機を回転させて建物を削っていく。 「デカくなりやがったな!!」 田中隊員はPETガンに弾丸を充填した。 「奴の弱点は股間だ! みんな股間を集中攻撃!!」 「ラジャー!!」 「私は少々用事があるのであとは任せたぞ!」 「えっ!?」 隊員たちの疑問を背に受けつつ、源隊長は路地裏へと駆けていった。 人がめったに通らない路地。源隊長はズボンを脱いで下半身をむき出しにする。下半身に風を感じながら、ふんばる。 「モラッシュメルト!!」 説明しよう。PET隊長・源海蔵は、戸外でふんばることによって血流量を増大させ、その熱で体内のモラッシュエナヂーを溶け出させ、下半身に流れこませることが可能なのだ。源隊長は炎に包まれた。 「モラッシュチェ〜〜〜〜〜〜ンヂ!!」 源隊長を包んでいた炎がバッと消え、光の巨人・モラッシュマンが姿を現した。 また説明しよう。炎に包まれた源隊長は、モラッシュエナヂーを体全体の細胞に感化させ、超限界戦士モラッシュマンに変身することが可能なのだ!! 「モラッシュマンがやって来たぞ!」 人々は口々に叫んだ。 モラシュマンはビルの狭間を駆け抜け、メークル星人につかみかかった。 「メークル星人! スカートめくりはもうやめるんだ!!」 「うるせ―――!! 俺にはカノジョがいないんだ―――!! だからこうやって、欲求不満を解消しようとしてるというのに――――――!!」 「…それが貴様の本音か!? アホらしい」 モラッシュマンは星人の右腕をわきの下で挟みこんだ。右腕は換気扇がついているほうの腕だ。 「どうだ。これで竜巻きも起こせまい」 「何を――――――――っ!!」 星人は左腕の扇風機を振り回した。しかしそれはモラッシュマンのチョップで粉々にされた。 「おのれ〜〜、俺様の自慢の扇風機をぶち壊すとは〜〜!!」 星人は怒ってひざ蹴りを喰らわせた。ひざ蹴りとは予想外だった。よろけるモラッシュマン。星人は背中のウチワをパタパタさせて突風を発生させた。足元がふらついていたモラッシュマンはぶっ飛ばされた。 「モラッシュマンが危ない!」 「援護射撃だ!」 PET隊員たちは星人にレーザーを撃ちこんだ。 ズビビビィ〜〜〜〜ッ!! レーザーの一つがウチワに命中した。たちまちにウチワは炎上した。 「なんだか背中が…アチ、アチ、アチチチチ〜〜〜〜!!」 星人は背中に火がついたまま走り回った。まるでカチカチ山のたぬきさんのようである。そのすきにモラッシュマンは立ち上がって体勢を立て直した。 「メークル星人! 喰らえ! アンモナ〜〜〜〜光線!!」 ヂョバ〜〜〜〜ッ!! モラッシュマンのアンモニアノズルから発せられた黄色液状光線が空を切った。アンモナー光線は星人の全身に降りかかった。 「ぐわああ…とける、とける、とけるぅ〜〜〜〜〜!!」 アンモナー光線は強力なアルカリ性の溶液でできている。そのアルカリ度は、厚さ五百メートルのコンクリートを二秒で溶かすほどだ。 メークル星人はどんどん小さくなっていった。 「ス…スカートめくり…バンザーイ!!」 メークル星人は他界した。地球に平和が戻った。もう女のコのスカートがめくれることはないだろう。誠に遺憾な…いや、非常に喜ばしいことだ。 モラッシュマンは空を見やると、遠い遠い宇宙の彼方へ飛んでいってしまった。
PET隊員が一息安堵の笑みを浮かべていると、源隊長が走ってきた。 「いやー、すまんすまん」 ぜいぜい息を切らしている。 「隊長! 今までどこに!?」 三人は同時に尋ねた。 「いやー、急に便意がこみ上げてきたものでな」 「ちゃんとケツふきました?」 と山田が聞いた。 「いやー、紙がなかったから手でふいて、もったいないから食べちゃった」 そう言うと、田中隊員と花子隊員がさっとのけぞった。 「やだ隊長! 寄らないでください!!」 花子隊員が軽蔑の眼差しでにらみつける。「しかも私の下着を見てコーフンするし…」 「いやー、見かけによらず大胆な代物だったからな」 「サイテ――――ッ!ですっ」 「まあ最後に一つだけみんなに言っておこう。人の手によってめくられるスカートは、何の情緒も価値もない。残るは深い罪悪と後悔のみだ。真の価値あるスカートめくりとは、風のイタズラによって引き起こされる意外性と、それを目撃した偶然性だ。そのことをよーく知っておくんだな。そもそもスカートめくりの起源というのは、古代ギリシャにおいてアリストテレスが…」 「はいはい」 と田中隊員が手をたたいて演説を中断させた。「バカやってないでそろそろ基地に帰りましょう」 「でも…ネコンダー1号はつぶれちまってるぞ」 と山田。 「ウマイナー1号、2号もモラッシュマンに踏みつぶされちゃったわよ」 と花子。 「何ィ――――ッ!! どうすりゃいいんだ――――!!」 結局PET隊員は、長野の奥地まで歩いて帰るハメになったという。(貧乏なのでタクシーやバスや電車に乗る金はなかった)
(つーづくっ!!)
次回予告 源隊長を襲う突然のBEN意! 無事排泄したはいいものの、彼の手には残りわずかのペーパーしか残されていない! 地球の汚染は食い止められるのか!? 次回「同情するなら紙をくれ!」をみんなで見よう!!
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