MORASH2 魅惑のミニスカート [突風変人 メークル星人 登場]
ある日、変質者排除隊PETの隊員、山田太郎と田中二郎は、ネコ型専用車・ネコンダー1号で東京R地区を訪れていた。ただし山田隊員は運転免許を所持していないので、ハンドルを握っているのはもっぱら田中隊員である。 なぜ彼らが東京にやって来ているのかというと、戦闘機の部品の購入のためだ。先日、山田隊員がおかしな運転をしたせいで、コンドル型戦闘機・メリコンドル1号は使い物にならなくなってしまった。それを復元させるための部品を調達しに来たのである。 「まったく貴様って奴はろくなことしないんだから」 田中隊員は不機嫌だ。「おかげでただでさえ少ない給料がよけい減ったじゃねーか!!」 「いやあ照れるなあ」 助手席の山田隊員は顔を赤らめている。 「ほめてないっちゅーの!!」 「じゃあ賞賛してんの?」 「同じだろーが!!」 ネコンダー1号は、交通量の多いスクランブル交差点に差しかかった。この車はネコの形をしているので非常に目立つ。街行く人の注目を浴びながら走り抜けなければならない。 「だいたい隊長も、何でまたこんな間抜けなデザインにしたんだ?」 田中はネコンダーに文句を言いはじめた。「いくら『PET』だからって、わざわざ動物をモチーフにしなくてもいいのに」 「いいじゃん、別に。分かりやすいんだから」 「貴様は黙っとけ!! 無能人間の分際で」 「ひ…ひどい。田中、最近キレぎみだぞ」 そのときである。交差点の真ん中に突然つむじ風が発生した。枯れ葉やゴミを巻きこみ、それは一瞬にして巨大な竜巻きに発展した。 ゴゴゴゴゴゴ…!! 「な、なんだ!?」 田中はネコンダーを緊急停車させた。竜巻きに巻きこまれるか巻きこまれないかのギリギリの瀬戸際だった。 ゴゴゴゴゴゴ…!! 竜巻きは勢力を増してゆく。あっという間に交差点を覆いつくしてしまった。人々が多く集まっているため、交差点は大混乱である。 女子高生のスカートがめくれて中が丸見えになる。OLのスカートがめくれて中が丸見えになる。買い物帰りのおばさんのスカートは…めくれなかった。 山田は喜んだ。 「スゲーぞ! スカートがめくれ放題だ!! なんて過激な光景なんだぁ〜〜〜〜っ!!」 山田は鼻血を噴射した。おかげでネコンダーのフロントガラスが真っ赤に染まってしまった。 「バッキャロー!! つまらんことでコーフンするな!! 前が見えなくなっただろ―――――――!!」 前が見えないせいで、田中は運転を誤り、車体を歩道に乗り上げてしまった。そして信号機に衝突し、ネコンダーのボンネット部分はつぶれてしまった。 ドガ――――――――ン!! まあもともとボロかったから、そろそろ壊れても文句は言えなかったかもしれない。 「くそ、山田! 貴様のせいでまたポンコツが増えた。帰ったら、隊長にケツバット三百発やってもらうぞ!!」 「ひい〜〜〜、それだけはやめてけろ!!」 「どっちみち、こんな大竜巻きが発生してるんだ!! 基地に連絡しないと」 田中は腕にはめたPETシーバーを起動した。
PET秘密基地。通信業務担当の鈴木花子隊員が、手動でアンテナを回転させていると、田中の通信を受信した。 『こちら田中、こちら田中! 作戦室応答せよ! 作戦室応答せよ!!』 「はい、こちら作戦室。どうしました、田中隊員?」 『あっ、花子か。隊長にすぐ伝えてくれないか。東京R地区のスクランブル交差点で巨大な竜巻きが突然発生。女性のスカートがどんどんめくれて大混乱…』 「はぁ…? スカートがめくれて?」 『いや、今のところそういう被害だけだから…』 「つまらないことで基地に連絡しないでよ! 通信にいくらかかると思ってるワケ? ただでさえ資金が不足しているっていうのに…」 花子は不機嫌だ。 『とにかく隊長に知らせてくれ!』 「了解、了解」 『あ、あとネコンダーのボンネットがつぶれたからよろしく』 「はいはい」 通信が終了した。ちょうどそこへ、源海蔵隊長がやって来た。昼間っから酒を飲んでいたようで、少々顔が赤らんでいる。 「花子クン、今のは?」 「田中隊員からです」 「田中…? 山田がゲロ吐いてもだえてるから助けてくれとでも言ってきたのか?」 「いえ。R地区で巨大な竜巻きが発生して、女性のスカートがめくれているそうです。バカみたいですよね」 「何――――!! それはきっと、メークル星人のおかげ…いや、しわざに違いない。奴は女性のスカートをめくることを生きがいとしている、なんともうれしい…じゃない、凶悪な変質者だ。なんとしても、その秘技を伝授してもらいに…じゃなくて、その悪行を止めにゆかねばならん!!」 言葉を何度も言い替えながら、源隊長は一気にまくしたてた。 「それにしても隊長…何で鼻血がたれてるんですか?」 「はうっ! いかんいかん」 源隊長は慌ててティッシュを鼻に詰めこんだ。「過激な光景を思い浮かべてしまってな…」 こんなことで興奮してるのは山田と同類だ。 「…男ってサイテーな生き物ですね」 「ゴホン」 と隊長はせきばらいをした。「とにかく、今すぐ出撃しなければ」 「でも…ネコンダーもメリコンドルも使えませんよ」 「心配するな。私がカッコいいだけで隊長をやってるとでも思ったか。こういうときのためにスーパーマシンを用意しておいたんだ」 「あんまりカッコいいとは思えませんけどね(キッパリ)」 「まあ来たまえ、ベイベー(ヂェントルマン的口調)」 源隊長は、花子隊員を格納庫に連れていった。
竜巻きは、さらに勢力を増していた。ビルや人間に危害が加えられたりはしないが、若い女性のスカートのめくれは深刻である。 山田はあることに気づいた。 「この風…スカートだけをめくれ上がらせる特殊な風なんじゃないか!? しかも二十三歳未満のうら若き女性のものだけを!!」 「山田、何でそんな細かいところに気づくんだよ!!」 「だってそうじゃないか!!」 確かに、スカートがめくれているのは、女子幼稚園児、女子小生、女子中生、女子高生、女子大生、若いOLだけであった。男ども、おばさん、おばあさん、オバン、オバタリアン、ババアなどは、別に平気な面持ちで歩いている。 「その通りだよ、山田太郎クン!!」 どこからともなく聞こえてくる無気味な声。「キミの洞察力には恐れ入ったよ」 「だだだ…誰だ!!」 勇ましく言ったつもりだったが、山田の声はすごく震えていた。「で、で、出てこい!!」 「また異星人か?」 田中はPETガンに弾をこめた。「今回は一発でしとめてやるぜ!」 ブルーンという音が上空から轟いた。山田と田中がきょろきょろと周りを見渡していると、スタッと何者かがネコンダー1号の上に着陸した。そのせいでネコンダーはつぶれ、より使い物にならなくなった。 「テメェ! 何者だ!!」 田中が「何者か」にガンを向けた。 そいつは、両手に換気扇や扇風機、そして背中に二枚のウチワをつけるという奇抜な格好をしていた。 「俺様の名はメークル星人! 全宇宙一のスカートめくり魔だぁ〜〜〜っ!!」 星人はウチワをパタパタと動かしてみせた。まるで羽がついているみたいだ。 「貴様がこの竜巻きを操っているのか!?」 田中がPETガンを向けたまま尋ねた。「何の目的でこんなことを!!」 「俺様は全宇宙の女のコのスカートをめくるのを生きがいにしとるんじゃい!! 他に理由などないわい!!」 メークル星人は、両腕の扇風機(中古)と換気扇(どっかの家から奪ってきたもの)を高速回転させた。 ブル〜〜〜〜〜〜〜〜ン!! たちまち竜巻きが山田と田中を襲う。 「ぐわ〜〜〜〜っ! 何であんなボロい扇風機がこんな強力な風を出せるんだ!?」 「知るか―――――――――――!!」 二人は五百メートルもぶっ飛ばされ、電柱にズゴッと衝突した。あやうく背骨が折れるところだった。 「見よ、見よ! このチラリズム!! わはははは…」 それはまるで道を知っているかのようにビルの間をすり抜け、世界各地に散らばっていった。 「今にこの星の女のコのスカートは全てめくれ、チラリズム大國になってしまうのだあ〜〜〜〜〜!!」 山田は、星人の言う「チラリズム大國」を想像してみた。街を歩けば常に風が吹いている。そして女のコのスカートが風になびいている。なんと素晴らしきパラダイスではないか。 「う…マズい…また鼻血があ〜〜〜」 山田はノーズから赤血球を噴射した。どうやらこの男、鼻が異常に弱いようだ。 「いいかげんにしろ、山田! 想像だけでコーフンしてたら女と渡り歩けないだろ―――――――!!」 「…って、そう言ってる田中も鼻血がたれかけてんじゃねーか!!」 「ううっ!」 と田中は慌ててティッシュを鼻にこめた。「くそ、俺としたことが…」 山田と田中は鼻血の処理に忙しくて星人を攻撃できない。さらに二人は体内の血流量が低下し、貧血をもよおしてしまった。 「ぐはっ!! 立ちくらみがする…」 「こんなとき赤十字の職員が来てくれたら血液をわけてもらえるのに…」 二人はブラッドを渇望した。 「わははは…PETなんてざまあねえな」 メークル星人は高笑いした。 このまま地球の女のコたちはスカートをめくられる日々を送るハメになってゆくのだろうか。男性は喜ぶかもしれない。しかしこの世は、男中心の世界ではないのだ。女性も男性も同等に暮らしてゆけるのが民主主義なのである。黙って見ているワケにはいかないのだ。 だが…山田も田中も興奮のため戦意を失っている。果たして彼らは、この悪らつな変質者を倒すことができるのだろうか。立ち上がるんだ、山田! 戦うんだ、田中!
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