怪しく光るヴィコー星人の目。彼は新たなる獲物を求めて闇をさまよっていた。 と、そこへ偶然、若い女性が通りかかった。しかもたった一人で歩いている。 「ヒッヒッヒィ〜〜〜、見ィつけたァ!!」 星人はさっそくストーキングを開始した。電柱の陰、看板の陰、車の陰と、隠れ場所を変えながら女性に近づいていく。ストーカーを初めて、はや五百万年。これまでいろいろな星の女をストーキングしてきたが、地球の女性は特に素晴らしい。これほど美しき人種は他に類を見ないのだ。星人は満足感でいっぱいだ。 「いっそのこと、この星で一生を過ごそうかなァ。ヒッヒッヒィ〜〜〜〜〜ッ!!」 と、うっかり声を出してしまったため、女性はマント男の存在に気づいてしまった。 「キャ―――――――!! ストーカーよ――――――!!」 と悲鳴をあげる。付近の住民が何事かと家から出てくる。 「ま…まずい、気づかれた! こうなったら奥の手ェ!! バズーカ砲―――――――――!!」 しかし、バズーカの弾はさっき使った一発でなくなってしまっていた。 「ガビョ―――――――ン!!」 武器がなくなると、とたんに弱くなるやつである。ヴィコー星人は腕っぷしの強そうな女子プロレスラーたちに取り囲まれた。奇遇にも、この近くに女子プロレスラーの合宿所があったのだ。 「ストーカーは女性の敵よ! 許さないわ!!」 グシャベキドカバコ―――――ン!! 「ギャ――――――――――――――――!!」 ヴィコー星人はボコボコにされた。そしてマントをひんむかれて隅田川に突き落とされた。 住人たちはせいせいしたように帰っていった。 「うおおおお〜〜〜〜っ!! このヴィコー星人様をなめやがって〜〜〜〜〜〜!! 巨大化ああァ!!」 ヴィコー星人はキレて巨大化した。周りのビルディングより高い身長である。 「オラオラァ〜ッ! 女子(おなご)ども出てきやがれ〜!! ストーキングしちゃるぜ、ベヒョベヒョ〜〜〜!!」 狂って建物を破壊しまくる。付近一帯に緊急避難勧告が出された。
そのころ花子隊員と源隊長を乗せたネコンダー1号はようやく東京都に入った。現場までもうすぐだ。 「花子クン」 源隊長は深刻な顔で言った。「山田の報告によると、奴はヴィコー星人らしい」 「ヴィコー星人!? 宇宙人…なんですよね、『星人』がついてるってことは?」 「うむ。ヴィコー星人は宇宙一のストーキング魔だ。絶対に倒さなければ…」 彼らPETの任務は変質者の排除である。どんな小さな変態行為でも、厳しく取り締まらねばならないのだ。 しかし源隊長は、なぜヴィコー星人のことを知っているのだろうか。謎である。花子隊員は運転に集中していたため、それに疑問を抱く余地がなかった。 「隊長、そろそろ到着します」 「うむっ!」 源隊長は気合いをためこんだ。
山田は、巨大化して暴れ回るヴィコー星人を発見した。 「ななな、何てこった! あ、あいつデカくなってやがる!!」 思わず腰を抜かしそうになった。「た、田中め…ひとりだけ逃げやがって…」 星人を攻撃しようと思うのだが、体が震えてPETガンの照準が定まらない。間違って民家の窓ガラスに撃っちゃったらどうしようどうしようどうしよう…という不安も加わり、よけい震えてしまうのである。 「ああああ…たいちょお〜〜〜!! 星人が巨大化しちゃいました! どうしましょう!!」 PETシーバーに向かって情けない声を出す。 『メリコンドル1号に乗って上空から攻撃だ! 我々もようやく到着しつつある! 我々は地上から攻撃し、おまえらは上から攻撃、すなわちはさみうち戦法だ』 「んなこと言ったって俺、戦闘機の操縦免許持ってないんですよぉ〜〜〜!! 田中は被害者の女性を病院に連れてってここにはいませんし…」 『ああん!? 何だって!? 雑音が入ってよく聞こえんぞ!! 何でもいいからやれ!!』 「ひえ―――――――――!!」 山田は仕方なく、公園に停めておいたメリコンドル1号に乗りこんだ。しかし前方に細々と並んでいる機器の操作法を、彼は全く習ったことがない。適当にレバーをいじってみたら、機体は猛スピードでバックしはじめた。 「あ〜〜〜〜〜っ!! ちがうちがうまえにすすむんだまえにまえにまえにあああひょ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」 ドゴオオオン!! ビルに衝突したメリコンドル1号は鉄くずと化した。どうやら花子だけでなく山田も機械オンチのようだ。 ヴィコー星人は街を破壊し続ける。 「ヴェヒョヒョヒョヒョ〜〜〜〜ッ! ストーキングはたぁのしぃ〜ぞぉ〜〜ッ!!」 もう手がつけられない。あまりの危険さに、自衛隊や警察や機動隊も近寄れず、お手上げ状態。あとはPETを待つばかりだ。 と、そこへ――ついに到着した! ネコの形をした奇妙な車両・ネコンダー1号がやってきたのだ!! 源隊長と花子隊員は、ネコンダーから降りると、すぐに攻撃体勢に入った。 「奴の弱点は股間だ! 股間を集中的に狙え!」 と源隊長が命令する。 「ラジャー!!」 PETガンから発せられたレーザーが星人の体に火花を散らしてゆく。 ズビビビィ〜〜〜〜〜ッ!! バチバチッ! しかし星人は、蚊でも止まったかのように手を振るってレーザーを跳ね返していった。 「くそ、効果なしか…」 源隊長は唇を噛みしめた。「やはり…やるしかないのか…アレを…」 「隊長、メリコンドル1号はどうしたんでしょう?」 と花子隊員が上空を見上げた。 「そうだ。山田と田中のことを忘れていた。何やってんだ、あいつらは!? はさみうち戦法をすると言っておいたのに」 公園の方角から上がっている炎が、メリコンドル1号によるものだとは気づかないようだ。 女性を病院に届けた田中隊員が、源隊長のもとヘ急いで走ってきた。 「隊長―――――、遅くなって申し訳ありません!!」 「おお、田中か。即攻撃開始だ!!」 「ラジャー!! …って、ところで、山田はどうしました?」 「知らん。おまえと一緒じゃなかったのか? まあどうせ、あいつはいてもいなくても変わらんがな」 源、花子、田中は星人の股間を集中攻撃した。 ……しかし、本当に股間が弱点なのだろうか。全くこたえていない御様子だ。 「ヴェヒョヒョのヒョ〜〜!! ストーキングいの〜〜ち!!」 ストーキングに一途な彼は、股間の痛みなどもろともしないのだ。 東京D地区は火の海と化してしまった。建物は崩れ去り、木々は倒れ、人々は息絶えていった。地獄のような光景が今、目の前に広がっている。 「隊長! 私たちは何もできないんですか!?」 花子隊員が泣きそうな声で叫んだ。 「このまま黙って見てろって言うんですか!?」 と田中隊員もつめよった。 源隊長とて気持ちは同じ。この地球を変質者の魔の手から救ってやりたい。その思いを強く持っているからPETという組織が誕生したのだ。 源隊長は決心した。 「アレを…やるしかない!!」 言うやいなや、彼は駆け出していた。近くの草むらの中に。あまりの早業だったので、花子にも田中にも気づかれなかった。 草むらに隠れた源隊長は、いきなりズボンを脱ぎ、下半身を荒野にさらけ出した。 「モラッシュメルト!!」 源隊長は下半身に全エナヂーを集中させた。体内に宿る未知なるモラッシュエナヂーを。そして思いっきりふんばった。 「うおおおおお〜〜〜〜〜〜!!」 彼の全身は炎に包まれた。やがてその炎は高く高く登っていき… 「モラッシュチェ〜〜〜〜〜ンヂ!!」 火柱が最高点に達した。と、その柱がバッと散ったかと思うと、そこには何者かが立っていた。大空にそびえ立つ、光り輝く巨人の姿が。 あまりにもまばゆい光のため、人々はなかなか上を見上げられないでいた。目が慣れるにしたがって、それが人間の形であることに気づいた。 「あ、あれは…新たなる敵か!?」 田中隊員が叫んだ。 光の巨人は、まだ暴れ回っているヴィコー星人のもとへとゆっくりと歩を進めていった。 「ヴィコー星人よ! いいかげんに街を破壊するのをやめたまへ!!」 巨人は、地球の言語を発して警告する。ヴィコー星人は無視して暴れ続ける。 巨人は星人の背後から手を伸ばし、羽交い締めにする。かなり腕っぷしが強い。星人は足をばたつかせるが、抜け出すことができない。 「グワッグワッ! なァにしやがんだ、こいつゥ!!」 「街の破壊を即刻中止しろ!」 「やァなこった! 俺はストーキングが大好きなんだ! 全宇宙の女性をストーキングするまで死なない!!」 巨人はさらに強く羽交い締めにする。星人は苦しそうだ。 「ストーキングと街の破壊がどう関係あるんだ!!」 さらに続けて、頭にスーパー脳天かち割りチョップを喰らわす。あまりの豪腕に星人は気絶しかけた。 巨人とヴィコー星人の激戦を目の当たりにし、田中隊員はうなった。 「あいつ…俺たちのために戦っているのか…? 俺たちの住む美しい地球を守るために…」 「きっとそうよ、そうに違いないわ!!」 花子は目を輝かせた。 巨人は星人を持ち上げ、地面に叩きつける。星人のアバラがボキッと折れる音。 「とどめだ!」 巨人は下半身のアンモニアノズルにエナヂーを集めた。それを一気に液状光線として噴射! 「アンモナ〜〜〜〜〜〜光線!!」 ヂョバ――――――――ッ!! 星人の体に黄色い液体が降りかかる。 「ぐわああァ〜〜〜! なんて臭い光線だ〜〜〜!!」 星人はだんだん小さくなっていった。アンモナー光線は生物の細胞を溶かしてしまう、強力なアルカリ性光線なのだ。 「む…無念…ストーカー万歳…!!」 ジュルジュル…。 ついにヴィコー星人は溶けてしまった。 人類の勝利だ。 「やった!! 地球は救われたぞ!!」 「みんな、あの光の巨人のおかげだわ!」 人々は抱き合い、泣き合い、笑い合って、喜びを噛みしめ合った。 「ありがとう、ありがとう!!」 皆は巨人に礼を言った。 東の空から朝日が登りつつあった。それを合図にしてか、巨人は空を見上げた。そして、彼は空に飛び上がると、遠い遠い宇宙へ帰っていったのだった。
「あの巨人は何だったんだろうな…」 やけにオヤジくさい声がしたと思ったら、田中と花子の隣に源隊長が立っていた。 「うわっ! 隊長、今までどこ行ってたんですかぁ!?」 「あれ、そういえばさっきからいませんでしたね」 二人がいろいろと尋ねる。 「いや…急に便意をもよおしてな…」 源隊長は適当にごまかした。「とにかく、モラッシュマンの活躍でこの世は平和になったんだ。それでいいじゃないか」 「モラッシュマン!?」 と田中が叫んだ。「それがあの光の巨人の名前ですか!?」 「そうだ。地球を守るために宇宙からやってくる、正義の味方、モラッシュマン。カッコいいじゃないか。何しろこの私が変身…」 「え!?」 二人は同時に疑問符を放った。 「…いや、何でもない。わっはっは。そろそろ基地に帰還するとしよう」 変質者排除隊PET隊員は、平和な笑い声をあげながら、ネコンダー1号で長野の奥地に帰っていったのだった。
「でも、何か忘れているような気がするんですけど…」 「気のせいだろ、花子」 「…そうよね、きっと」
そのころ山田隊員は、メリコンドル1号の機体の残骸に埋もれて動けなくなっていた。彼が発見されるのは、それから三日経ってからである。 「たすけて――――――――――――!!」
(つづく!!)
次回予告 街を襲う激しい突風! 女子中生の、女子高生の、女子大生のスカートがめくられてゆく! この風の正体はいったい何か!? 次回「魅惑のミニスカート」をみんなで見よう!!
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