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夢紡ぎ詩 作者:秋桜

第12回   物語

   〜青い鳥と虹〜

ある日曜日の昼下がり、公園のベンチに座っている一人の大学生の女の子がいました。
そこへ今までボール遊びをしていた男の子がボールを追いかけてやってきました。
「おねーさーん、ボール取って〜!!」
男の子の声に今まで俯いていた顔を上げて手を延ばしてボールを取ってやりました。
はい、と言ってボールを渡したとき何かキラキラしたものが膝から落ちました
「ありがとうー!
でもおねーさん、何か落ちたよ〜、
はいコレッ」
そういいながらも男の子はそのキラキラしているものをじぃー、とみています。
「気になるの?!それ。
いいもの見せてあげようか?」
というと男の子の手からそれをつまみあげて太陽に翳しました。男の子もベンチに座りました。
「おねーさん、お名前なんていうの」

ミチルっていうの、といいながらもキラキラした物体を太陽のしたで指先で転がしています
「君は?」
不意に男の子に向き直って名前を聞きました
「うーん、…おねーさんがミチルっていうならボクはチルチルだ」「変なの。『青い鳥』ね?
あ、ほらみて!これ、プリズムっていうのよ。キレイでしょ?」
そういってキラキラした物体の正体を明かした。
男の子は太陽に翳したプリズムをしたからのぞきみた
「…!
わぁっー、虹だ!虹が出てるよ!
スゴーイっ!」

ミチルはクスクスわらって、なんか元気が出たわ、といいました。よく晴れた春の日の出来事でした。

それから何日かしたある日、ミチルと男の子はまた公園で出会いました。
「おねーさん、こんにちは。またそのキラキラしたやつ持ってるんだね、

「、こんにちは。チルチルくん。また会ったね」
「おねーさん、なんでいつもそれ持っているの?」
「ああ、プリズムね。
わたしは大学で絵を描く勉強をしているの、プリズムを題材に何かを描かなくっちゃいけないのだけど…なかなか思いつかなくて。
ここに来たらまた君に会えるかなって思って来てみたんだ」
未だチルチルと名乗る男の子は、ふーん、と興味なさそうに相槌を打つだけだったけれど、いきなり思いついたのか
「ねえ、それボクも虹を出してみたい。教えて!」
と言ってミチルの手から少し強引にプリズムを奪った。
ミチルは難しいかもしれないよ、と言って教え始めたけれど
やっぱり難しいようだった。
でも熱心に練習し続けて虹を出せるようになった。
別れ際、「これ、チルチルくんにあげるよ」
といってミチルプリズムを手渡した。
「ありがとう、うれしいなっ!
宝物にするね」
そう言って男の子は帰って行きました。
見えなくなるまで見送ってミチルも歩き始めました。なんだか胸が温かくなった気がしました。

その日からしばらく雨が降り続いて公園に人の気配はありません。
ミチルはまたあのチルチルと名乗る少年に会いたくなりました。
しかし雨は三日たっても止む気配がありません。

それから二日後の昼下がり、やっと雨がやみました。ミチルはただ何となくあの公園へ行ってみました。
公園はまだ濡れていて誰もいません。…不意にあのベンチの方から音がしたような気がして後を振り返りました。
そして気付いたのです、
大きな半円が空を覆っていることを…
紛れも無い、真っ青の空に浮かぶ美しい7色の虹でした
「わぁっ…キレイ…っ
何だろう、この気持ち……やだっ、涙出てきちゃっ…、
!!えっ?」
ミチルはベンチにプリズムが置いてあることに気付きました。
そしてなんだか不思議なキモチになりました。
もしかすると全部夢だったのかも知れない、
あの男の子と会ったことも話したことも…

それから数日後、あの公園のベンチには大きな虹を描いたキャンバスが置かれていました。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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