少しその後の話をさせて戴きましょうか。
その後学校があったのだが、それが大変だった。 なんとその日にあの事が、町の新聞の一面でトップに躍り出てしまった事によって、学校ではその話で持ちきりになってしまっていた。 まぁ、あまりに怖かったからか、私が警察に脅しをかけた場面は載っていなかった。危ない危ない。あんなの岸辺君にでも見られたらたまったものではない。最悪暫くは学校にいけない事態になる所だったわ。 でもま、名前は載ってしまったわけで。
「泉さん、カッコよかった〜」 「麻耶ちゃん凄いね。大変だったでしょ!?」 「話聞かせて!!」
なんて言ってきやがる馬鹿共が多かったのだ…… 頭痛いわ。 「あら、別に私達は何もしておりません」 これは嘘だ。 実質私なんて強盗相手に大立ち回りを繰り広げた訳だし。 しかし今回はなんといっても、麻耶のおかげであろう。 この子の幸運がなければ、あの男の子が大変な目に会っていたかもしれないのだ。 そこら辺、心優しい麻耶がいたからこそ、あのような終わり方にできたのだろう。本当にこいつに感謝しておかねば。 ぶっちゃけ言って、あの時私は不覚にも、恐怖を覚えていた。 それを克服できたのだって、麻耶の幸運のおかげか奴らの不幸のおかげか、手に持っていたナイフが刃毀れしていて使えなかったからによる。 しかし銀行強盗にとっては、確かに不幸な一日であっただろう。
なにしろ人質の中に、「幸運少女」がいたのだから。 彼女の得意技の一つに、嫌いな相手を不幸にするというものがある。
これはそのままの意味ではなく、要は麻耶が「その人に反省してほしい。悪い事をするのを止めてほしい」と強く願う事によって、その人がどんな悪い事をしようにも、不運続きで上手くいかなくなってしまう、というもの。 なにより、彼女は私や、人質の人達の幸福を願ったのだ。 だから人質が半分近く逃げられ、残りは私達によって助け出されたのだ。 あの男の子も、麻耶がいなければ今頃どうなっていた事か。 そう考えると、あの時あの場所にこの子がいた事は、銀行で捕まっている人質にとっては幸運だったのかもしれない。
しかしその後の彼氏連中が凄かった。 金城なんて行き成り麻耶に抱きついて「もう離さないからな」とか言っている始末。そりゃいくら麻耶が天然でも顔真っ赤にするわな。 そして岸辺君であった。 私がとても心配だったらしく、目に涙まで溜めて優しく抱きしめてくれました。 っていうか私、岸辺君が思っている程弱くないんだけどな。でもま、岸辺君が心配してくれているって事は嬉しいわね。 照れ笑いをするのに一苦労だったのは言うまでもなかった。
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「お母さん、少し出掛けてくるわね」 「何よ、せっかく帰ってきたのに」 「日記帳がなくなったから、新しいの買ってくるわ」 「はいはい。車に気をつけるのよ」 「はーい!」
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