晩夏ひと月ぶりの にわか雨傘をささずに とぼとぼと歩む舗道の 淋しさよ浮かぶ想い出 去年(こぞ)の夏輝く瞳 その人と今日は聞こえぬ セミの声ただ雨音あ 窓の外夏の終わりを 告げている出会いと別れ くりかえし季節は巡る 人の世を雨も上がりて 月明かり鳴きだす虫は コオロギかやるせぬ胸に 響く声語り明かした 腕枕眠れぬ夜に 秋の風1995年 8月 作