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善兵衛の葬式のあつた翌日の晩

  善兵衛の葬式のあつた翌日の晩 病院薬剤師求人サイト最新人気ランキング 2013/09/29 16:34:31 

善兵衛の葬式のあつた翌日の晩 [返事を書く]
 善兵衛の葬式のあつた翌日の晩であつた。偶然にも其晩四五人の男が平七の家へ集つた。大抵は平七と親密な人でお桐の見舞旁々遊びに来たのである。
 雨は頻りに降つて居た。大勢集つたので話に花が咲いた。皆病人が居るといふことなどは忘れて了つて大声に笑ひ興じた。久し振に平七の家に笑声が起つた。
 一しきり風が起つて、雨戸に降りつける雨の音が烈しかつた。皆言ひ合せた様に黙つて、
「甚い雨になつたなあ。」と異口同音に言つた。
「よく毎日かう降られるなあ。」と一人が言ふと、
「ほんとにどれだけ空に溜つて居るやら。」と言ふ者もあつた。
「さあしまつた! 格子窓を明けたなりに来たが今晩は家に誰も居らんし、大変吹き込んだらうなあ。下手なことした。」と心配する者もあつた。
 一人が昨日善兵衛の葬式に雨で困つた語をしだした。
「善兵衛さんは焼けなんだと言ふが本当かいね?」とお光は暫くしてから其男に尋ねた。
「えい、……何でも夜明までお骨が上らなんださうな。」
「どう言ふ工合だつたかねえ。」
「身体も大きいにや大きいが……」
「それあさうと、何でも死際に大変難儀したといふ話ぢやが、お前さん知らんかね?」
 と相手の話を誘ふ様に云つた。死際に苦しんだり、骨が都合よくあがらなかつたりする者は、本人に何か罪があつて、極楽往生が出来ぬのか、家人に悪いことがあつて死後までも迷惑を残すのか何れかだといふ迷信があるのである。
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