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竜の小太郎第一話 12
投稿者 君塚正太[1]
投稿日時 2009年05月18日(Mon) 13時49分54秒
「あのう、司教様。もうひとつ質問があるのですが、聞いてもらえるでしょうか?」
それに司教様は少し疲れた表情を見せながら、静かにうなずきました。
「僕がここに来る前に感じた怒りと、その後に感じた怒りは種類がどうも違うようなのです。ですから、もしよろしければそのことについて少しお話できないでしょうか?」
彼はその問いに少し困った顔つきをしていました。ぼんやりと宙を見、頬の横に片手を添えながら考えこんでいます。そしてすこし間をおいてから、彼は僕にひとつの提案を出してきました。
「私の知り合いがそのような話には詳しいので、そちらに明日ぐらいに行かれたらどうですか?そのときにはもちろんこのトーレンをお供させますが。なにぶん今日はもう遅いですし、私としても今日の話し合いは一旦打ち切りにしたいのです。これはご了解いただけますか?」
司教様は、ずっと疲れた声でお話をされていました。この声を聞いていて僕は、ずいぶん話し込んだなあと思いました。どれぐらい時間が経ったのかな?と知りたくなり、振り返って、後ろの時計を見ました。すると、おやまあ、ずいぶん時間が経ってるじゃあないですか。今、時計の針はちょうどてっぺんから左に少しずれているぐらいでしたから、ただいまの時刻はだいたい十二時です。こんな遅くまで話し込んで悪いと思った僕は、すぐさま挨拶も適当に荷物をかき集め、教会から走り出ました。そしてその走りつづけている僕の後ろで教会の門の前に立っているトーレンが叫んでいました。(5)
「明日十時にお前の家に行くからなあ。それだけは忘れるなあ。」
僕はそれに答えるように小さい羽を二三度パタパタさせ、家路に急ぎました。そのときに僕はこんなことを思い出そうとしていました。「彼に僕の家の住所教えたかなあ。」と。