小説・まんがコミュニティ トップへ
 ようこそゲストさん コミュニティトップへ スレッド一覧へ カテゴリ一覧へ ログイン ユーザー登録

竜の小太郎第一話 10
投稿者 君塚正太[1]
投稿日時 2009年05月18日(Mon) 13時47分51秒
「初めまして、僕は竜の小太郎といいます。この“竜の”とはもちろん僕ら竜族の肩書きです。ですが小太郎という名前、実を言うとこれは本当の名前ではないのです。本当の僕の名前は、僕自身分かりません。なぜなら僕は捨てドラゴンでしたから、親の顔すら知らないのです。そして当然僕の名前もないということです。けれど、これは僕にとってはひとつの悩みの種なのです。まあ、こんなくだらない話を初めてお会いした方に長々と聞かせるのは失礼だと思いますので、ここで一旦打ち切りたいと思います。さて、そろそろ僕もあなたのことを多少なりとも知りたいので、早速あなたの名前をお聞かせ願えませんでしょうか?」
そう僕が挨拶を終えると彼は急に体をゆらりとさせ、獲物を狙う狼のような鋭い眼光で僕をにらみつけました。僕はその目に、果てしない空虚を感じました。それは僕が広い草原に独りぼっちにされたときに感じた印象と似ていた。そして彼はその鋭い威圧的な目つきで僕を見ながら、淡々とした調子で自己紹介を始めました。
「私の名前はトーレンと申します。この私の名前は本名ではありません。私の友人たちが私を呼ぶときに使う愛称です。しかしこの名前に深い意味があるか?と質問されれば、“それはない。”と私は答えます。なぜなら人の名前などというのはたいした重要な意味などない飾りのような物だからです。そんなことにいちいち文句をたれてもことは進みませんので、私のことは普通にトーレンと呼んでください。さて、お会いして間もないのに大変失礼だと思いますが、ひとつあなたに私の疑問をぶつけてみたいと思います。なぜ、あなたはこんな飾りに悩むのですか?大抵の人はこういう問題を自分の目の前に出されると、閉口するのですが、あなたに限ってそういうことはないと思います。ですから、私は、安心しきっております。むしろあなたが私より優れているのではないかと思い、はっきり言って少し怖いぐらいです。こんな私にも判りやすいようにそのことを説明していただけないでしょうか?むろん、あなたにできる範囲で一向に構いませんが。」
彼がこの言葉を言い終えたとき、少し笑っていました。この笑みを見たとき僕は身震いがしました。その身震いを抑えようと、色々考えを廻らしていると、不意に僕は、「彼の態度が気に入らないなあ」と思えてきました。よくよく考えると、さっきの笑みは人を誑(たぶら)かしていると僕には思えたのです。そうです、彼の挑発的な態度に僕は少し怒っていたのです。その証拠に僕が意識していないにも関わらず、背中の羽が跳ね上がっていました。これは僕が怒ったときによくやることです。そしていらいらしながら僕は間髪入れず、彼に向かってこう言い放ちました。