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竜の小太郎第一話 5
投稿者 君塚正太[1]
投稿日時 2009年05月18日(Mon) 13時44分32秒
「何であんな奴が選ばれるんだよ。あんな奴より困っている人なんてここに沢山いるじゃないか。俺だってそうだ。あんな体がでかくて、のん気そうな野郎に何の悩みがあるって言うんだよ。こんな奴を選ぶ司教様じゃどうせたいしたことないね。結局こんな小さな村に来る司教なんてのは、だめな奴が多いんだよ。あぁあ、こんな奴らに期待した俺が馬鹿だったんだな。」
それを聞いたときに、僕は生まれて初めて怒りを覚えました。しかも、それを、彼らは仲間内で、こそこそと司教様に聞かれないように言っているのです。それがもう、なんと言うか、僕には彼らがとても卑しい人間としか見えないのです。だってこの人達は、人の悪口を隅で言い散らして、その後はひょうひょうとしているのですよ。こんな彼らには祝福より罰を与えた方がいいのじゃなんかと僕は思いましたよ。特に僕が嫌だったのが、彼らが司教様の悪口を言ったことなのですよ。だってそうでしょ、彼らの眼差しを見れば、そんないい加減な気持ちで、ここに来ていないことぐらいすぐ分かるもんでしょ。そんなことすら分からない人達に司教様の悪口を言われたのが、僕にはすごく悔しかったのです。
そして少し冷静になると、今まで抱いたことのないような気持ちが僕の中に充満している事に気付きました。それが少し表情にでも出たのでしょうか、僕が、ジュクジュクしているその様子を察して、司教様は歩きながら耳元でこうささやいてくれました。
「私の見る限り、あなたは少し気が立っておられますね。」
僕は、その質問に対して黙ってうなずきました。
「では、その理由を私にお聞かせ願えませんでしょうか?もちろんこんな喧騒とした場所ではなく、教会の中ですが、よろしいでしょうか?」
僕はその質問に対しても前と同じように少しうなずいて答えました。このときもやはり心の中で何かが渦巻いて、それはもう僕に笑顔を作らせようとはしませんでした。
僕は教会の扉に向かってとぼとぼ歩いていく途中でも、そのことについて考えていました。
「なんか今日の僕は変だなあ。いつもならみんなに言われることに対して、少し笑顔でも作りながら、がんばってその場を切り抜けるのになあ。やっぱりその後はいつも通りにうじうじするだけなのになあ。でも本当に今日の僕は変だよ。まあ、しかしなんだなあ、今は司教様と一緒だし、このことは頭の隅にでも置いておくことにしよう。それは家に帰ってから一人で考えることにしよう。」
そう僕は決心しました。それがちょうど終わったころ僕はもう教会の中に立っていました。僕の目の前には大きなガラスががっしりとした窓枠にびちっと、はめ込んであります。この表現はちょっとおかしいかもしれない、けれどもそれは本当に僕の目の前に突然現れ、大きな衣装を着、立っていたのです。そのガラスには、赤、青、紫、黄色などの衣装が散りばめられていました。不意に僕はそのガラスを通って、目の前に降りた光に釘付けになりました。その光はまるで、何か別次元の者のようでした。光の反射した床をぼぅっと眺めていると、背後に立っていた司教様が「ぽん、ぽん」と僕の肩をたたき、話しかけてきました。