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竜の小太郎第一話 4
投稿者 君塚正太[1]
投稿日時 2009年05月18日(Mon) 13時43分43秒
「何で僕は、こんなに運がないのだろう。あの時にもうちょっと考えて、こうしておけば、よかったのになあ。」と心の中で思い。その後地面に人一倍大きい鼻息を「ふぅ」とかけ、砂ぼこりが「ちら、ちら」と目の前に舞うのを見ながら、さらにまたふさぎ込んでしまいました。
その時です。突然司教様が教会の大きな門から出てきて、「静粛に、静粛に」と大きな声で、みんなに向かって叫びました。今までうるさかった観客が急に一同正立するのに続いて、二十歳ぐらいのブロンドの髪をした青年が、波風のない海のような澄んだ目をして、「かっぽ、かっぽ」と革靴を打ち鳴らしながら外に歩いてゆき、そして司教様の斜め後ろに立ちました。ぼくはこの光景を涙でいっぱいになった目で見ながら、「どうせ、司教様は僕にお声なんか、かけてくれないんだい。」と半分すねた子供のようにぶつぶつと言いました。
予想通り僕のことを目にもかけないように司教様は、話を始めました。
「ああ、迷える子羊達よ。あなた達が今日この場所に来たのは、神のお導きのおかげなのです。しかし神の言葉を授かった私たちにも肉体があるように、今日だけではここの全ての人達を救うことは出来ません。だが神はまたこうもおっしゃいました。『あなたたち神の使徒は、この地に布教が終わるまで留まりなさい。』そのお言葉によって我々はこの地に今後数ヶ月は滞在するでしょう。よってあなた達は何も悩むことはないのです。我々はこの限りある肉体を持って人々に救済を施し、この町を救済するのですから。」
その演説が終わると、人々は歓喜の声を「わぁ、わぁ」と上げながら、司教様の前に詰め寄りました。そのときも僕は相変わらず、小さな足を折り曲げ、地面に目を向けながら、「しく、しく」と一人か細い声で泣いていました。その間も彼は人々にたんたんと話を説いていました。
「イエス・キリストはこうも言われた。『私たちは生まれながらに罪を持つ。すなわちこれは原罪である。この原罪は人が生きる中において、昇華せねばならぬ物である。そして死後霊世において、我々はその戒脱の恩賞として、日の栄を見るのである。』彼の言うことを要約すればこういうことである。人とは生まれながらに罪を持つ。そしてその人生において善行を行い、神を信仰することによって、我々は死後神によって恩恵を授かるのである。」
話が一段落すると彼は息をすぅっと、吸い、そしてまた力強く話し始めました。
「私は今日この町において、その神の偉大なる恩恵の光の元に、一人の若者を使わそうと思う。」そう短く言い終わると彼は、ゆっくりと僕のほうに振り返り、そのおおらかな手で僕を指しました。
「彼はこの神の御許においても、深く嘆き悲しんでおられる。そのような者に対してわれわれ神の使徒は施しを与えなければならない。よって、この町で最初の神の使徒に加わるのを、彼とする。」
そういい終わると、くるりと体の向きを変え、横の階段をこつこつと革靴を打ち鳴らしながら下り始めました。そのときになってやっと僕は自分のことを言われているのだと、はっと気付きました。そして僕はまだ涙で真っ赤にはれた目を、きょろ、きょろ、とさせながら、予想外の事態に驚いています。やっと今の状況が分かると、僕は子供のように「わぁい、わぁい、神様は僕のことを見てくれていたんだ。うれしいなあ、本当にうれしいなあ。」と飛び跳ねながら、「どっすん、どっしん、どっしんこ」と大きな体で宙に舞っていました。
その演舞が一段落終わると、穏やかな瞳をたずさえた司教様が僕の手を軽く握り締め、教会のその大きな門に向かって、僕を導いてくれました。僕は導かれるまま、歩を進めます。そんな心地よい気分の中、僕は笑顔でした。けれどその途中で、僕は少し嫌な光景を見ました。それは周りの人達のこんな声が始まりでした。