投稿者
| OWL | [1] |
投稿日時
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2008年04月03日(Thu) 22時22分59秒
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お久しぶりです、OWLと申しますが、まず覚えていらっしゃいますかorz かなーり離れていましたのでもう初めましてで構いません。 あれから。自分も連載を開始してみたはいいのですが、 更新が中々うまく行きません。何だか更新しても更新一覧に出て来ないみたいですし; あの頃のようなひたむきさのない自分にすこーし落ち込みつつ。
何だか宣伝とか紹介とか多いんで、それとは全く違ったことを。 季節モノ、と言うことでテーマを桜と置きまして、 何かしらこの文字制限の中、ワンレスで書いてみてください。 詩でもSSでも構いませんが、SSは例によって(? オチがないとダメと言うことで。とか言ったら誰も書いてくださらないのか;
但し、最後に自分の連載を宣伝して構いません。 興味持ったら読みにいくかもしれないなんて、スリルを楽しんでください。 と言うわけで自分のSSを一本。自分でオチ付いてるか結構不安(ぇ
Hey BOSS
「桜って言ったら、やーっぱ夜桜よねー」 スーツをビシっと着こなし、いかにもキャリアウーマン然としたマダム、否、女性がうっとりと呟いた。 「都竹さんの場合、桜と言うよりどっちかと言うと花見酒って言うか……」 「あら、何か雑音が聞こえたようだけど」 「すみませんハエが飛んでるみたいですね」 そう言って男性は女性の耳元でしっしと手を振る。彼もまたスーツを着ている。しかし彼のスーツは体にあっていないらしい、腕はビチビチなのに肩はがぼがぼで、ヒップはピチピチなのに、丈はだらだら。彼は若い。フレッシュマン、新人に程なく近い所に居るのだろう。その分金も無い。だからしてこの女性と通勤鞄を持って並ぶと部下と上司そのものだ。そんな二人が紅く夕日に染まった河川敷の桜道を歩く光景は、何かしら倒錯的なものを感じなくは無い。 女性がのろい歩みを止めて、はぁっと一つため息を吐いた。その夕日を反対の頬に受けて紅く縁取られた横顔の影が鋭く、柔らかい。その強烈な目力を更に増長させるような睫までもしっかりと彼女の影にくっついている。ビシリと結い上げたつやつやのお団子に、白い細い首筋で襟足がふわふわと少しうねっているのが大人の魅力を醸し出す。しかしこの男性にはこの色香は全く効果がないらしい。 「まぁ、寸胴君もずいぶん頭回るようになったじゃないの」 「寸胴ではなく須藤です」 「桜の花びら口でキャッチ出来たら願いが叶うんだものね」 「去年そうやって社員全員の前で恥をかかせてくださいましたね」 どうやら須藤はロクな目に合っていないらしい。 都竹が自分の背の高さまで垂れ下がってきている桜の枝を手に取ると、ぽきっ、一房手折る。 「都竹さん、やめてくださいそう言う大人気ないことは」 「別にいいじゃない、減るもんじゃなし。それより寧ろアナタのあのミスの方が……」 「あの時はフォローありがとうございました、でもそれとこれとは話が別です」 呆れる須藤を尻目に、都竹はその枝を落ち着いたベージュのルージュの唇で食んだ。 「……苦い」 「えっと、この辺黄砂とか粉塵の汚染地区に指定されてたと思うんですけど」 実際問題、今この河川敷でも真っ直ぐ前を見ても、夕日が途中で若干かすんでいる。まるで世界の彩度のスイッチをひねられたかのように。 「大丈夫よ、去年も私の桜餅食べて誰も体調壊さなかったでしょ?」 「え、まさか」 そこから先の言葉が途切れる。と言うか二の句が告げない。自分の腹に入った量は本人が一番よく知っているのだ。 「この前の私の結婚式の時の桜茶だって」 「やめてくださいもう分かりましたから」 この須藤、桜茶を桜まで食べたことが鮮明に蘇り、頭を抱えた。 「ていうか、アナタここの桜どれだけ使ってるんですか? 駄目でしょ、公共の財産勝手に使っちゃ。大体小学校の頃からそうでしたよね、サクランボ取って来ちゃって」 「誰も食べないから腐らせちゃ勿体無いと思って摘んであげたんじゃない」 都竹は美人ではあるが、まるで数々の修羅場を潜り抜けてきたような、そんな底力や貫禄が感じられる。 「アレ、毎日世話してた子、泣いてましたよ? 恥ずかしかったんですから、自分の母さんがあんなこ……あっ」 「所帯じみた呼び方は止めなさいって言ったわよね」 ぎろりと都竹の目が据わる。しまった、と須藤の顔が歪む。 「私の旦那さんは都竹さんだからもうアナタは私の子じゃないの。そこんとこ、忘れないでよね」 「……はい」 須藤の元々小柄な体が更に縮こまる。都竹は先の桜の一房を胸に挿して、背筋をビシリと伸ばし、すたすたとヒールを進めた。その後を追うようにして須藤が小走りで追いかける。 ふわり、一陣の風が吹いた。桜の花が二人に降りかかる。刹那、都竹はぺろりと舌を出す。ぴとり、その上に花びらがひとひら、着地したのだった。 |
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