12歳の少年が、おんぼろの校門の前に立った。ある少年の名前は岡部禽禎(おかべ とりよし) 校門の片隅には、立て看板が立てられていた。 「第69回入学式」 非常に伝統ある中学である。 生徒数は1学年3クラスで330人程度の比較的小さな中学校だ。 ただ、生徒数330人程度に、校舎がやけに広い。使われていない教室も2、3室あるそうだ。
禽禎は、生徒会の役員に連れられて、1年2組の教室に入った。 中ではもう殆どの生徒が着席していて、先生が名簿を読み上げていた。どうやら『遅刻』の様だ。 クスクスクス―と笑い声が聞こえてきた。禽禎は、あっという間に真っ赤になった。 「岡部君、遅刻ですか。まっ最初だから許しましょう。着席しなさい。」 先生の声に、禽禎は、ササっと座席に座り、鞄で顔を隠した。 担任の名前は、参陽堂朋子(さんようどう ともこ)というそうだ。 「では、改めて呼びます。岡部禽禎君。」 「・・・・・・はい。」 「んっ?声が小さいなぁ。それじゃ体育館で聞こえないよ!」 (えっ?) 禽禎は、心の中で叫んだ。どうやら入学式の中で、名簿を読み上げて、それに合わせて起立するという事らしい。 禽禎は、人前で声を発するのが苦手なタイプである。 少人数なら良いのだが、クラス内の発言や、まして全校生徒の前で返事など出来る筈が無い。 禽禎は、小学校の先生の言葉を思い出した。 「中学生の内は、大人になる為の修行の時期だ。沢山の苦労が有るだろうと思う。しかし、それから逃げていては、成長しない。禽禎、どんな困難にも確りと向き合い、挑戦して行け!」 この高松健人(たかまつ たけひと)先生は、小学校で1番大好きだった先生だ。 この言葉は、卒業式の時に言われた言葉で、これを聞いた途端に泣いてしまった(*_*) 「では、体育館に移動して、いよいよ入学式です。元気な声で返事をよろしくね。」 そして、最初の試練、入学式の行われる体育館に移動した。
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