結局由麻に何も話せないまま、昼休みは終わってしまった。5限目の数学の小テストも上の空。 わたしはただぼーっと、今日自分の身に起こったことを思い出していた。
「…石川さん、大丈夫なのかな」
まだ倒れてる?授業なんか、耳を突き抜けていく。
「綾瀬」
とんとん、と後ろの席の小田君に肩を叩かれて私は振り向いた。
「え?」 「テスト、回収だって」 「え?ええ?あ、ああー!!」
上の空すぎて、わたしの小テスト用紙は真っ白。ああ…。ろくなことが無い。仕方なくわたしは、真っ白な答案を提出した。 チェックしていた先生の顔は、ピクピクと引きつっていき、
「綾瀬、今日放課後居残りな」
そう言われてしまった。
「…ハイ・・」 藤君の、せいだ。 ぷ、とクラスの子が笑う中、扉の前の藤君が視界に入った。クス、そう笑っていた。
真っ白で提出した答案を全部解かされ、わたしが教室を出たのはだいぶ後だった。これを今から先生に提出しに行かなきゃいけない。 カバンを持って、机から立ち上がる。廊下を1人で歩くのは寂しかったけど、まだそんなに暗くない。 わたしは、このときすっかり…資料室の存在を忘れていたんだ。自分のクラスと、隣のクラスの横にある資料室。その扉が半開きになっていた。
「まだ、人いるの?」
鍵閉めをついでにしておこうと思って声をかけた。しんとしていて、人がいる様子は無い。
「閉めていっか」
少し開いたドアにわたしが手を伸ばすと
私の体は資料室の中に引き込まれた。
「あーやせ」
まだ資料室の中には、夏目藤君の姿が、あった。
「………ほんとだったの…?」 「あたりまえ。ご飯頂戴?」
藤君は、わたしを待ち伏せていたかのように。 わたしを資料室に引き込んだ。わたしは、これから何おこるのか、怖くて仕方がない。
「やだ…!やだよ…っ!」
怖くなって、資料室から逃げ出そうとした。そのとたんに、腕をつかまれる。そして、壁に体を押し付けられた。
「痛くない。むしろ気持ち良いよ。だから、快楽に身を委ねるのもどう…?」
真摯な瞳で、私を見つめる。わたしはその視線に絶えられなくなり、藤君を見るのをやめた。
カイラク。ツイラク。怖い、よ
「俺だって生きたいし」 「・・・・・・・・・・・・」 「ねえ、俺を見て」
私が、仕方なく視線を戻すと、そこにはまた藤君の綺麗な瞳が映った。顔が赤くなるのがわかる。
「綾瀬」 あやせ
小さく私の名前を漏らす藤君を見ていると、わたしはめまいを起こしそうになる。カラダが熱くたぎって、変な気分になってしまう。 まるで、藤君の瞳に酔っている様な
まるで、藤君の瞳に犯されているような
侵されているような
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