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処女限定 作者:柚良あず

第7回   Promise
なんだったんだろう。好きだったヒトが、吸血鬼で、セックスしてて、まだ石川さんは倒れたままで、・・・・・・?
 頭がグチャグチャになってきた。

「・・・・・っ!」

教室に戻りたくて立ち上がろうとしたけど、うまく立てなくてかくんと膝をついた。

「はぁ」

横目で石川さんを見ると、無残にも服ははだけたまま。気を失っているらしい。着せてあげる、べき?
 けど石川さんに触れるのが怖くて、わたしはもう一度立ち上がった。今度はちゃんと立てた。

「ごめんね」

そう動かない石川さんにいって、わたしは屋上から出て行った。
 教室に戻ると、今は昼休みだった。

「桃、何処行ってたの」
友達とお弁当をつついていた由麻にきかれたので、

「サボッてたら、そのまま寝ちゃった・・・」

と答えた。

「ふうん。てっきり拉致られたのかと」
真面目な顔の由麻にわたしと周囲の友達はぷっと笑う。拉致られてなんかない。けど・・・・・由麻に言いたい。
 藤君が、実は、吸血鬼で、私が次に血を吸われるってこと・・・!
 まわりに聞かれたくなかったから、わたしは声をひそめた。由麻が耳を傾けてくれる。

「拉致なんかされてない・・・けど、わたし・・・ふ」

藤君に、そう言おうとしていた。すると、わたしの口は大きな手でふさがれた。

「綾瀬」

言葉の途切れたわたしをふさいだのは、藤君だった。

「?桃?」

藤君が後ろに立っているのを見て、由麻が言った。

「!?なんで、夏目が・・・?ていうか、桃の口塞がないでよ」

ぱっと手が口から離れ、わたしは藤君のほうを向いた。

「はは。ごめんごめん」

謝りながら、にやりと笑う藤君は明らかに、わたしが言おうとしていたのを知っているみたいだった。

「・・・・・・っ・・・」
「何しにきたの?」

藤君はさっきまで屋上にいたはず。そして教室へ帰ってきて―――――――

「なんでもない。彼女が見たくなっただけ」

って、石川さんはまだ屋上で気絶してると思うんだけど・・・
由麻はそんなこと知らないから、何もいえないわたしのかわりにきく。

「?石川可奈なら、隣のクラスでしょ」

そのとき藤君は、思いもしない言動をとったの、です。
 ぎゅ。後ろからわたしは抱きすくめられ、感覚を失った。背中があったかい。わたしの体は、すっぽりと腕の中に収まった。

「・・・・・!?・・・ふ、じくん・・・!?」

後ろからわたしを抱きしめた藤君を見て、みんなが驚くのが見えた。

「・・な、夏目、何して・・・」
「ふじく、な・・何・・・?離してよっ・・」

わたしは腕の中でもがく。藤君は友達に言った。

「可奈は彼女じゃない。今日から綾瀬が俺の彼女ね?」



はぁ?



「・・・・・・・・・・ええ!?」
「ちょっ、桃!?」

わたしは口をただぱくぱくとあけて

「俺たち今日から付き合い始めたんだよな」


なにがなんだか、わからない。極めつけの、藤君が首元でささやいた言葉。

「秘密だっつったろ。今日早速餌もらうから、資料室来いよ」


「な、・・・・・!!」

やっと振りほどけた腕の主の方へ振り向くと、わたしの大好きな笑顔で笑ってる。

「待ってる」

彼女なんて約束しなかったのに。藤君は、本気で血を吸おうとしてる。

「桃」

由麻に呼ばれたのも気づかずに。
 わたしは男子の方へトマトジュースを片手に戻っていく藤君を、眺めるしかなかった。



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Novel Editor by BS CGI Rental
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