「・・・・・・・・・・・え?」
確かに首筋に走った痛み。そして藤君から滴る血。間違いなく、わたしの首に噛み付いた。 わたしはびっくりして、血が出ていないか首を確かめたけど、指に赤いものはつかない。
「・・・なん、なの・・・・・・?」
一体わたしに、何をしたの。目の前の藤君は、ぺろりと血のついた唇を舐めた。
「ご馳走様。快感与えてないのに、可奈の血よりずっとおいしい」
私の好きだった笑顔で言った。
「なに?なにしたの・・・?」
藤君が、怖くて。私はあとずさった。それに合わせて、藤君は私の方へ詰め寄ってくる。 「ごめんな。綾瀬の血、もらった」
ケロ、とした顔で言う。
「・・・・・・・・・は!?・・」 「だからさ、俺、吸血鬼なんだよ」
藤君の言ってることが理解できない。
「吸血鬼って、ドラキュラとか、にんにくとか、十字架とか、トマトジュースとか・・・え?・・ええ?・・・!」
私の頭はパニック。浮かぶのはドラキュラとか、怪物みたいな想像だ。
「うーん、じゃ長いけど説明します」
そんなのいるわけない。って思ったけど無理。実際自分が血を吸われているのに? かくかく、かくかく、私は震えたまま。
「俺、代々吸血鬼の家系でな、女の血を飲まないと生きてけないんだよ。だから付き合った女の血をもらってるんだけど。見られたのは綾瀬が初めて」 「・・・・・・・吸血鬼、なんているわけないよ・・!」 「へえ。実際自分が体験したのに?悪いけどさ」
「見られたからには、次から綾瀬の血、もらうからな」
その瞬間、背筋が凍りついた。藤君が、私の髪に触れる。
「・・・・・・っや!」 「そんなビクビクしないで」
私に顔を近づけ、頬に唇を重ねる。ちゅ、と軽い音がして、私の頬は熱くなってく。
「!?」 「可奈はもう処女じゃなくなったし。綾瀬、処女だろ?ちょうどいいや」
その言葉から、私は疑問だったことを思い出した。
「なんで、処女にこだわるの・・・?」
藤君は、きっぱり言った。
「処女の血が一番美味しいから。もっと言えば、快感を与えられた処女の血が一番美味しい」
だから、処女限定。吸血鬼は処女限定。藤君の彼女は、処女限定。 わたしは、わたしは―――――――――――――――――――。
「・・・・・・・・・・!」
ふふ、という感じで藤君は笑う。
「そんな怯えなくてもさ、これから毎日俺の餌になってもらうから」 「わたしは・・・やだ・・!血なんか吸われたくないっ・・!」
藤君は、ふいに立ち上がった。屋上の風が、サラサラの髪をなびかせる。
「もう決まった。桃ちゃんは、俺の彼女決定。ね?」
綾瀬桃、処女喪失のピンチです。
|
|