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処女限定 作者:柚良あず

第20回   End?
全て俺が綾瀬の中に入ったとき、綾瀬は泣いていた。処女限定。そうだ。綾瀬の意味はなくなっちゃうんだよな。
とめどなく流れる綾瀬の涙を見ると、俺は胸が苦しくなる。

「は…っやぁ!!」

苦しそうに喘ぐ表情を見て、俺の瞳からは無意識に、雫が落ちた。綾瀬、こんなにも好きなんだ。
ただのえさじゃないんだ。俺は綾瀬が好きなんだよ。
単純明快で、口にしてみれば簡単すぎる、短いコトバ。

怖かった

君を繋ぎ止める理由が無くなる事が
カラダだけなんて虚しいものだけど
それでも俺は離したくなかった
そうまでして手に入れたかったものは何だ?

『君だ』

今更手放そうなんて思わない

だって
だって

「…俺も、好きだからっ…」


俺は綾瀬の首筋に噛み付いた。吸血した血は今まで味わったことの無いくらい、極上の味がした。
 ぱたん、と綾瀬がベッドのうえに倒れこんだ。

「……」

ベッドの上の、朱い鮮血に触れてみる。綾瀬の流した血だ。俺が奪った処女の血だ。
綾瀬が好きだ。処女を失っても、俺は愛しつづけたい。

「綾瀬」

俺は綾瀬に声をかけた。まだ吸血されたショックは残っているかもしれない。
 ゆっくりと、まぶたが開く。

「ふじ、く」

そして俺を視界に捕らえた表情は、今にも崩れてしまいそうだった。
 何が言いたいのかは大体わかるんだ。

「元気になれた?じゃあ、もうわたしは用済みだね」

声が震えて、最後まで言い切れていない。そんな綾瀬に、俺は、俺は、俺は…
 綾瀬は泣いた。

「…ぁ…っく、あぁ…」





くちゅ
 ぺろりと、藤君の真っ赤な舌がわたしの唇を舐めた。わずかに切れたそこから、赤い血が染み出す。

「処女じゃなくなって良い」


「だってこんなにも綾瀬は、美味しいんだから」


「だから」

だから


「ずっと俺のそばにいてください」

ああ
これは嘘だろうか
嘘のような本当で本当のような嘘なんだろうか
わたしは答えることも出来ず、ただ夢中になってもっともっとしゃくりあげるだけだった。

「すき…藤君が、すき…っ」

藤君のシャツにしがみついた。そっと彼は、わたしの背中に腕を回し、抱きしめる。あたたかい感覚。

「俺もだから」


あなたが、好きです。好きで好きで、どうしようもないんです。ずっと、わたしをそばにいさせてください…






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Novel Editor by BS CGI Rental
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