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処女限定 作者:柚良あず

第2回   Virgin Only
というか、そんな幸せそうな二人を、わたしはあんまり見たくない。嫉妬ばかりして、自分が嫌になるだけだから。

「いつまで続くかね、あのふたり」

横目で藤君と石川さんを見ながら由麻が言う。

「・・・・前の彼女は一週間だっけ?」
「そうそう。んでその前は確か3日だったような」
「彼女途切れないって疑問も歩けど、何で別れるのいつも早いのかな」

自分で言ってて悲しい。でも藤君は不思議だ。
 告白してくる女の子と付き合っては、すごく仲良さそうに見えるのにすぐ別れてしまう。
 もちろん自分から振る。普通振られたら未練タラタラの人っているけど、藤君の元カノは絶対にそれがない。みんなその後も、普通にぽへーっと元通り藤君と知り合いに戻るだけ。
 以上、私、綾瀬桃が藤君を観察してわかったこと。
 私がその疑問を投げかけると、由麻はちょっとびっくりした顔をした。そして、声をひそめる。

「ここだけの話慶太にきいたんだけど」
「うん」

慶太というのは、由麻の彼氏である。

「夏目藤ってさ、処女としか付き合わないんだって」


しょじょ。

「処女・・・?」
「うん。なんでか、夏目くんて処女の子しか付き合わないんだって。処女キラーってか、ヤッちゃったらポイとか」

私でも、処女の意味はわかる。まだセックスしたことが無い女の子。由麻の話によると、藤君の彼女は、処女限定ってこと・・・?

「まあ桃も、まだ処女でしょ?じゃあ望みあるって!」
「あの・・・そんな堂々と言わないでよ・・・」

由麻は何の恥じらいも無く言うからびっくりする。でも、確かに私はこの年になって、まだ処女です。

「別にいいじゃん!桃は純粋だから」

席を立って、由麻は言う。

「そんなんだったらいつか男に食べられるよん」

食べる。食べられる。私もいつか処女を失う日が来るのかなって考えてしまう。
 とりあえず、処女限定彼女の望みはありそうです。


「藤〜」
「何?」
「ぎゅってして」
「いいよ」

いちゃいちゃ、見せつけたいんでしょうか。由麻が席を立ったあとも、私は藤君と石川さんを眺めていた。教室の扉の前で抱き合ってる。石川さんは、藤君の胸に顔をうずめてる。

「・・・・・・・・はあ」

わかってる。嫉妬だって。でも藤君を見るたび切なくなってしまう。サラサラした黒い髪の毛、細身だけど背が高いカラダ。黒ぶちメガネの奥の目。全部がすき。
 でも、彼女といるところを見たら悲しくて。教室にいる限り聞こえてくる声がうっとおしくなって、私は屋上へ行くことにした。

「あったか」

ここにはいちゃつく石川さんもいない。春の屋上はあったかくて、かなりいい感じ。前由麻がサボりには最高だって言ってたっけ。
 私は結構広い屋上のすみっこに、ちょこんと座る。

「・・・このまま授業サボッちゃおうか」

空が青い。ってあたりまえだけど。ぼーっと眺めているうちに、まぶたが重くなってきた。今まで授業サボッたことなかったけど、初めてなんだからいいよね。
 あとはゆっくりゆっくり、夢の世界に落ちてく感じ。




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Novel Editor by BS CGI Rental
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