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処女限定 作者:柚良あず

第15回   ループ
最 初 は た だ の 餌 の つ も り だ っ た


「…俺は、アホか」

みんなと同じで、俺の顔目当てでやってくる女達。ちょっと触ってやれば、甘い声を出して悦ぶ。
 そして抱いてやる代わりに、血をもらう。そんな、たった一度きりの行為のはずだった。
 極上の血の、綾瀬桃。いつもどおりの俺の行為で、初めて三回も血をもらった女。
モットオイシイチガホシイ……
 俺の勝手な欲望ばかり押し付けて、倒れさせた。貧血なんて、理由は俺以外ありえないよな。
 初めて罪悪感が生まれた。初めて、倒れた綾瀬の顔を見て、自分が悪いことをしたと思った。
いたたまれなくなった。

『大丈夫だよっ』

無理していってるのが見え見えだった。そうさせているのはほかの誰でもなく、俺。
 そんな綾瀬の顔を思い出しては、ぽつりとことばが出てくる。

「ごめん、ごめん、ごめん…」

なんでこんなに胸が締め付けられるのだろう。
「馬鹿」

心の中で、そう思った。

「藤のばーか」
「・・・・・・・穂高」
「初めてじゃねぇの?藤が三回も吸血したのって」

廊下の先には、穂高がいた。いつものように、俺のことを全て知っているかのようにたたずんでいた。

「…のぞきの趣味でもあるんか?」
「やだなあ。違うって。綾瀬桃はそんなに大事にするほどデリケートで、藤のお気に入りなわけ?」

お気に入りとか、そんなんじゃない。俺は綾瀬にそんな感情を抱いていないはずだ。

「違う」
「…じゃあなんでそんなに、依存するのさ。さっさと処女奪って、極上の血をもらえよ」
「いやだ。あいつは、そんなんじゃない…っ」

俺のことばには、不思議と熱がこもった。穂高とのただの、やりとりなのに。

「ヒトに食い物以外の感情を持つな。惚れた所で、藤は綾瀬に何をしてやれる?早く、楽にしてやれ」
「だから、惚れてなんかない…っ!!」

廊下で、俺は無意識のうちに叫んでいた。穂高は、ピクリとも動かない。

「そう熱くなるな。藤が捨てた所で、俺がちゃんと処理してやるから」


 カラダが、氷のように冷たくなるのを感じた。ぽん、と穂高が俺の方に手を置く。

「藤」

耳元で俺の名前を囁き、首筋に指をやる。穂高の顔が、俺にギリギリまで近づいてきて、俺の首筋に顔をうずめた。ピチャ、と、ざらついた舌で舐められる。

「…ッ!!」
「藤はさ」

俺は手を振り解こうとしない

「俺が誰を好きか知ってるよね?だからそんな感情は

 許さない」

ぞわり。ぞわり。ことばの意味に、穂高の舌の感触に、俺は身動きできなくなる。




向こうへ、行った。

「・・・・・・・・ぁ…」

俺は無気力に膝をついた。まだ、首筋には穂高の感覚が残っている。あいつの、ことばの意味。
 それは、ふたとおりの意味に取れた。
 ひとつは、綾瀬を奪ってしまえば、あいつは、穂高に喰われる。

 もうひとつは…

「穂高になんか…やらねぇよ…っ」

惚れていなんか無い。ただの、綾瀬に対する依存だ。

『惚れた所で、藤は綾瀬に何をしてやれる?」』

吸血鬼に惚れられた女は、一生血を求め続けられる。

「惚れて無い」

自分に言い聞かせるように言ったこのことばに、なんの意味があるのだろうか。綾瀬の顔が、浮かんでは消えていく。
 そんなの、今の俺にとっては苦しくなるばかりだ。穂高のことば全てが。俺の頭の中でぐるぐると回っていた。





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Novel Editor by BS CGI Rental
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