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処女限定 作者:柚良あず

第12回   昼ご飯にはまだ早い。
休み時間ももう終わりかけた所、教室の扉が勢いよく開いた。ばん、という音を立てて入って来たのは、藤君。
 なぜかはあはあ、と息を荒くしながら冬馬くんとこちらへ向かってきた。

「綾瀬!!」

名前を呼ばれると昨日のことを思い出し、私は視線をそらした。

「綾瀬、きいてんのか?」
「桃、何避けてんの」

避けたい、わけじゃないけど、まともに藤君の顔が見れない。どうしても昨日の行為が、頭に浮かんでは消えていく。
 今、わたしを呼ばないで。

「ちゃ…避けてない・・から…」
「じゃあ、綾瀬もらってくな」

は?
そう、声を漏らす前に、わたしは力強い腕に手を引っ張られた。ぐいぐいと、藤君は早歩き出歩いてく。
 その顔は少し汗がにじみ、メガネがずり落ちかけている。

「ど、何処行くのっ」
「荷物運ばされて、腹減った!!」


!?
お昼休みには、まだ早いんですけど…。
 がん、と強引に藤君は資料室の扉を開いた。昨日の、場所。また同じように、わたしを机の上に座らせる。

「伊吹のババアに資料運ばされて、疲れて、腹減った…。血、頂戴?」

現国のまだ20代で若い伊吹先生をババア扱いの藤君が疲れていたのはこれらしい。

「そんなに、血が欲しいの?」
「だって血が足りなかったら俺活動できないもん…」

目の前で藤君は暑いらしく、シャツのボタンをぷちぷちと開け始めた。首筋が見えて、なんともいえない色気、が出ているように思える。

「綾瀬、顔赤いよ?何想像してんの」

意地悪に言う藤君は可愛くて、しゃがんでいるから上目遣いにわたしを見る。その表情に、思わず私の理性も揺らぐ。

「してない、から…っ」
「ふーん?じゃ、昨日の続きといこうか」
「や、」

やだ。流されまいと思ったのに、ちょうどそのときチャイムが鳴った。

「ホラ、授業始まるよ!?次は物理だしっ河合先生厳しいしっ」

慌てて私は言った。そのことばに藤君は眉をしかめる。

「綾瀬、俺の食事時間にそんなのは関係ないんだよ。だからどうでもいいの」



「ね?」

完全に忘れていた。昨日のことだったのに。私は藤君と目を合わせてしまった。きっと見つめられた視線。カラダが動かなくなる。

「ぅぁ…」

ぺろり、と唇を舐めて藤君が言う。

「今日は下弄ってもいいよな?」

抵抗できないの、知ってるくせに。縛らなくてもいいの。
 あなたの視線で、わたしは侵されるから。追い詰められるから。
 スカートの中に入ってきた手を、わたしは今度は拒めなかった。










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Novel Editor by BS CGI Rental
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