「…やべ。」
俺はまだ血の味がする口を、手でぬぐった。綾瀬の血をもらったのは、今で二回目。もともと綾瀬桃なんて、ターゲットにする気なかった、のに 今までの女の中で、一番血が美味しい。ちょっと弄ってやっただけで、最後までヤッた奴よりも格段に美味い。
「……なんでだよ…」
もっと欲しくなってきた。もっともっと、極上の血が飲みたい。綾瀬と最後までヤッて、飲んだ血はどれくらい美味いんだ? 俺には予想もつかない。でも、嫌がることはしたく無いしな しばらくは、冷蔵庫のトマトジュースで我慢しますか。 まあ俺に「処女キラー」なんて異名がついたところで、女が寄り付かなくなるわけが無い。 少し日の傾いた道を歩きながら、俺は家に帰っていった。
「よお」
俺が家に帰ると、見覚えのある人物が1人、いた。名前は冬馬穂高。(トウマホダカ) そいつはいつものように、ちょこんとリビングのソファの上に座ってやがる。
「・・・・・何しに来たんだよ」 「藤君、それは酷いんじゃないの。まあ君は石川さんをヤッてポイしちゃう鬼畜だからね」 「人聞き悪いな」
それは確かに外れてないんだけど。言われるとムカツク。 で、こいつがこの家にいるわけは
「嫌味言いにきたのかよ」 「いや。石川、不味くね?藤の中では下のランクだと思うんだけど」 「否、普通?てかお前、その趣味どうにかしろよ。俺の捨てた女食べて何が楽しい?」 「別に。美味い血に巡り会いたいだけ」
そう。穂高は、俺と同じく吸血鬼である。しかも穂高の獲物は、俺の捨てた女。こいつの趣味は高尚過ぎて理解できないのだが。 俺はぽす、と部屋にカバンを置く。すると台所の方から、母さんの声が聞こえた。
「藤君、ほーちゃん、ご飯できたから食べにきなさい〜」 「ハーイ」
て、なんでちゃっかりお前が返事してんだよ。俺たちは母さんの作ったトマトリゾットを食べた。 ふと、頭に綾瀬の顔が浮かぶ。もし俺が捨てたら、次に穂高に狙われるのはあいつか。 でもな、俺は処女以外興味無し。綾瀬もいつか、役立たなくなるときが来る。
いつか、な。
「昨日ヤりすぎて腰が痛い…」 「何してたの?」 「フェラしてあげたりなんかいつもより奉仕してあげた」
いつもなら過激な友達間の会話に私は混ざらない。というか、混ざれない。過激すぎて。 その話に、なぜだか今日は混じっている。
「ねえ、ね…」 「ん?何、桃」 「処女って男にとって一番気持ちいいの!?」
わたしの発言に、まわりにいた由麻、那都(ナツ)、冴子(サエコ)など友達が飲んでいたジュースをブッと吹き出し、持っていたお菓子を落とした。
「!?な、何いきなり言い出すの?」 「や、別に、素朴な疑問なんだけど…」
藤君の話は出したく無い。わたしはしまった。と思った。なんで聞いちゃったんだろう。 すると、那都がははぁ、と言い出した。
「桃、夏目藤とすんの?」
にやり、と笑う那都に、わたしは顔が赤くなる。
「付き合い始めたんでしょ?あいつ、処女好きって有名だもんね」 「違うよ!!藤君は、関係ないもん」 「あいつ、よっぽどのテクでも持ってんのかなぁ」 「よし、じゃあヤッて確かめて来い」 「や、違」
わたしの疑問は勝手に想像を膨らまされ、いらぬ方向へと飛んで行った。質問の答えは?
「答えてくれないのっ?」
一応これでも、勇気持って聞いたんだけどな。すっと、冴子が手に持っていた雑誌を差し出した。
「見て」 「処女はまだ入れたことないから、一番締め付けが良いんだってさ」
その雑誌は女の子向けエロ雑誌というやつで…。
「ぶはっ」
あまりの過激さにわたしはくらくらした。
「桃は純粋だね〜。ちゃんと勉強しとかないと怖いよ?」
と、那都が頭をなでる。
「でもさ」
黙っていた由麻が口を開く。
「夏目は処女だけでしょ。ヤッたら、捨てられて終わりじゃないの」
忘れていた。
そのことを。
わたしは馬鹿だ。
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