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処女限定 作者:柚良あず

第1回   プロローグ
細くて長い指が、私の髪をかきあげる。白い手が自分に触れるたび、私はビクッとする。

「・・・・ホントにいいの?」

私はこくりとうなずく。
メガネをかけた、綺麗な顔が近づいてきたかと思うと、その唇は私の首筋に向かう。
温かい舌の感触が、首筋を伝う。
ピチャ、といやらしい水音がする。

「・・・・んっ」
「随分いやらしい顔するんだね」

その言葉につい顔が赤くなる。恥ずかしい。

「お願い、だから・・・そんなに見ないで・・」
「やだね」

彼は卑猥な言葉を言い、かけていたメガネをはずす。
また髪を手で触り、私にこう言う。
「綾瀬のこと、食べていいの?」


食べる。
こういうときは普通、セックスするってことだろうな。もうひとつの意味は、ご飯を食べる、みたいな感じ。栄養源にするってこと。
彼の場合、どっちかわからない。
でも私は、小さくうなずく。

「・・・・・うん」

と。




「石川可奈って子、夏目くんに告ったらしいよ」

朝学校に来ると、友達の桜井由麻に言われた。

「ええ・・・・また?」
「ほんっと女が絶えないというか、不思議な人だね」

石川さんは私の隣のクラスで、けっこう可愛い子。清楚な感じで、密かに私も可愛いと思っていた。
でも、夏目くんに告ってほしくなかったな。私は、夏目くんが好きだから。

「・・・」
「あんな女好きやめて、桃そこそこ可愛いんだから別の男にしときなさいな」

あきれたように言う由麻に私は反論する。

「夏目くんは女好きじゃないんだって。女の子が寄ってくるだけ」
「じゃあ桃も夏目に寄っていってアピってこい」
「・・・・・・彼氏がいる由麻はいいよねえ」

ひがんだって仕方ない。私の好きな人はとてももてる。1人の人にしぼっても、すぐに別れてしまう。
でもね、そんな軽いひとってわけじゃないんだ。だから、絶対すぐ別れるのにはなんだか理由があると思う。
 「そんなの桃の幻想」って由麻は言うけど、私はそう思わない。
好きって言いたいけど、大勢の女の子たちみたいにはなりたくないって贅沢な自分がいる。だから、見てるだけ。
 自分に自信があるわけでもないし、夏目藤くんにつりあうような私でもない。あんなにかっこいいのにな。
 そのメガネの奥の目で、私を見てくれたら嬉しいのに。

そうぶつぶつ思いながら由麻と話していると、徐々にクラスの人たちがやってきた。
 その中に、藤くんが混ざっているのが見える。

「おはよう」

教卓の前に座っている私に、毎日声をかけてくれる。
 それだけでも嬉しくて、その笑顔がもっともっと好きになる。

「・・・・ぉ・・はよぅ・・・」

なんでこんなぼそぼそとしか話せないんだろ。自分がやだ。


「藤!」
「可奈?」

さっき藤君がはいってきた扉の向こうには、石川可奈さんがいる。

「どしたの?」
「んー、せっかくさっき渡したのにお弁当忘れてったよ」
「ありがと」

にこっと、石川さんに微笑みかける。石川さんは笑って、藤君と話している。

いいなあ、話せて。私なんか、彼女でもないのに嫉妬してる。藤くんの彼女は石川さん。
 藤くんのこと考えるなら彼女と長続きして欲しいって思うのに、心のどこかで石川さんをうとましく思ってる自分がいる。


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Novel Editor by BS CGI Rental
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