ギシ、ギシ。音を立ててベッドがきしむ。
「おまえん家、ホントあきねえのな」 「穂高の家もだろ」
まだガキだった、中学二年生。中学に上がると同時に、藤と穂高は吸血鬼に儀式に望んだ。代々夏目家と冬馬家は親交が深く、よく一緒になることが多かった。藤の父、朝日の妹が冬馬家に嫁いだのをきっかけに、さらにそれは深まっていった。 そして、夏目家、冬馬家双方に同じ年の男児が生まれた。つまり、藤と穂高はいとこ。
「藤は吸血してみたいって思ったことある?」 「まだいい。いつかはしなきゃって言われてるけど、想像すると気持ち悪いから」 「ふうん」
ふたりが一緒に寝転ぶベッドのある藤の部屋と、藤の両親の寝室は近い。両親がどんな「吸血行為」をしていようと、丸ぎこえなのだ。
幼い頃から聞かされてきた。おまえは吸血鬼に生まれてきたんだよと。いつかおまえも女の血を吸って生きていくんだと… 藤と穂高にはそれがおぞましかった。まだ、何も知らなかった 想像することさえも。穂高が、ぽつりと言った。
「セックスって気持ちいいわけ?」 「やったことないのにわかるわけないだろう」 「じゃあさ。してみればいいじゃん」 「は?」 「俺と藤で」
突然の穂高の発言に、藤は動揺を隠せなかった。
「馬鹿?」 「将来の予行演習」
そう言って、藤の体はベッドの上に投げ出された。その上に、とさ、と穂高が覆い被さる。対して身長差もない二人だが、若干穂高のほうが大きい。 ベッドの上に寝かされた藤が上を見上げると、そこには間近に穂高の顔があった。
「セックスに興味ないの?」 「微妙。で、なんで俺は押し倒されてるわけ」 「俺がしてみたいから。嫌?」
こいつ馬鹿か、と藤は思わず言いたくなった。
「俺が抱かれるの?」 「まあ、そう。ダメ?」
藤の返答を待たず、穂高は藤の前髪をかきあげ、おでこにそっと唇で触れた。
「ぅあ」
藤の顔が、少し紅く染まる。
「何すんだよ」 「好奇心をなくしてはならない」 「おまえはマジでアホだな…」
穂高にあきれつつ、藤は心のどこかで自分も興味を持っていたのかもしれない。体を委ねるのに、時間は要らなかった。
「キスする」
穂高はそう言ったかと思うと、藤の唇に触れた。軽く、触れるように。それがいつしか、舌をねじ込んでいき、藤の口内深く侵入する。
「…っは…ぁ」
舌が絡み合い、粘着質の水音が部屋の中に響いた。藤はきゅっと目をつぶっている。
「そんな怖がらなくて良いじゃん…」 「怖えって」
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