「てゆうか亜矢、毎日声聞いてんの?」
にたり、と笑う。
「っ!聞こえてくるの!」 「へえ。それ聞いて感じてる?」
悠は女好きだ。それが亜矢にはむかつく。亜矢は学校でも優等生であり、中々整った容姿から、人気を博している。 その双子の兄は、女好きで遊び好きで、何度も停学になったこともある、松本悠。 亜矢はいつしか、悠の姿を見ると嫌悪するようになっていた。いらつく。むかつく。
「・・・るさい!うざいのよ!毎日毎日とっかえひっかえ、違う女の子連れ込んで・・・学校でもいい加減なことばっかりして・・!」
亜矢の怒りも爆発寸前だった。本当に小さな頃は悠が大好きだった。けれどその面影は無く。
ただうっとおしいだけの存在
亜矢は日ごろ思っていることをまくし立てた。悠はだまって聞いている。
「大体、何人連れ込めば気が済むのよ!有香に奈々に、皐月に亜衣、サトミさんとこの奈穂だって!数え切れないくらいの女の子と寝て、何が楽しいの!?」
亜矢は息切れしていた。 すました顔で、悠は口を開いた。
「じゃあさ、亜矢はなんで女の名前知ってるの?」
亜矢は口をつぐむ。
「・・・話してるのが、聞こえただけ・・っ!」 「なんで会話きいてるの?」
耳に入ってくるから。 そう言おうとしたとき、悠は亜矢を見ていた。 真剣な目で、見つめていた
「なによ・・見ないでよ」 「亜矢はなんで俺が女の子連れ込むか知ってる?」
そんなの、セックスがしたいからに決まってるからじゃないの。 本当の理由なんて、亜矢は知らない
「そんなこと、知るわけ無いでしょ」
悠は亜矢を見つめつづける。その沈黙に、亜矢も冷静さを保っていられなくなる。 亜矢からそらされることのない悠の瞳。
「・・・やめて」
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