「一時間触り放題で1万円です♥」
「カラダはダメだけどパンツだけならいいよぉ〜」
「デートだけっ!ね?」
僕はキャバクラ店でバイトをしている。 もちろんそんな店があるのはそんな町。 その日も夜なのに町は明るく、騒がしかった。
「帰りますね〜」
僕はバイトを終え、家に帰ろうと店を出た。 ここからはそう遠くないマンションだ。 しかし、帰る道にはラブホテルや風俗店があふれかえっている。
そんな、明るいラブホテルの前だった。
「・・・・・・?」
ふと、足を止めた。 ホテルの前で、小さな女がいる。 いや、女ではなく、少女かもしれない。 着ている服はところどころ破れていて、こんなところですすり泣いている。
僕はこんな危ない町で少女がひとりでいたら・・・と思うと心配になった。
「どうしたの?」
僕が声をかけたときから、雛は囚われの身になってしまったんだ。
「・・・・ぇぐ・・クスン・・・」
雛は泣いたままなかなか話せなかった。
「こんなところにいたら、危ないよ。うちに、来る?」
やっと顔を上げて僕の顔を見た雛は、本当に綺麗な子だった。 僕の顔をじっと見つめ、やがてこくんと頷いた。
「名前はなんていうの?」 「……名前なんかない…」 「いくつ?」 「12歳……?」
家に連れ帰って、少女でわかったのはこれだけだった。 しかし、破れているとはいえ、僕の目には着ている服はとても高級そうに見える。 年と、性別以外なにもわからない。 どこからきて、なんであんなところにいたのか――――――――― それ以上は聞き出せなかった。
「………行く所がないんなら、このまま僕の家にいる?」
偶然とはいえ、自分で声をかけてきて連れてきてしまった。 そう言うしかない。
「……うん…」
そう、このときは僕は、雛に対して同情の気持ちで家に入れたのだった。
「じゃあ、家にいるんなら名前がないといけないね。」
僕が話していると、少女はついていたテレビに見入っていた。 画面には小さな鳥。とその雛。 とても安易だったけど、少女がテレビに見入っていたので、
「雛はどう?」 「ひ・・・な・・?」 「君の名前だよ」 「うん!」
にっこりと微笑んだ少女はとても可愛かった。 今日から君は雛。
僕の、カゴの中の小鳥。
僕だけのために、鳴き声をあげつづける・・・・
|
|