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少女調教 作者:柚良あず

第17回   決別
それは、突然で、僕が予想もしていなかったことだった。
 僕はいつもどおり、キャバクラのバイトから帰ってきて、家の中に入ろうとした。
 マンションのエレベーターを降りて、廊下を歩いていたとき、悲鳴が聞こえた。

「離して!やだ、やだ!離してよっ!」

雛の声だった。
 僕は、なんで雛が離してなんて言ってるのかと思い、自分の家まで走った。

「だから、あなたは、間違いなくお嬢様です!12年間、あなたのお世話をしてきた私をお忘れですか!?」

雛の腕を掴んでいるのは、数人のスーツ姿の男。



ドクン、ドクン。


頭が、真っ白になった。


「あなたたちは…誰ですか?」

僕は、ふるえる声で言った。男たちは、一斉に振り向いた。

「お兄ちゃん!」

雛が、僕を見て叫んだ。

「あなたが、お嬢様と暮らしてらっしゃる方ですか?」
「そうです。けども、あなたたちは誰ですか」

雛の腕を掴んでいた男は、僕に向かって話した。

「私どもは、如月財閥のものです。一年前誘拐され、行方不明になっていたお嬢様を見た、という人がいたのです。そして確認しに来たところ・・・やはりこの方は、如月愛香様です」

かしこまった、事務的な口調。

「僕はそんなこと、知りませんでした。さっさと、かえってください」

怖かった、なんと言い返されるか。


「そういうわけにはいきません。社長の命令です。愛香様は、連れ帰らせていただきます。約一年、愛香様の面倒を見てくださってありがとうございました」


静寂を破ったのは、愛香こと、雛だった。

「なにそれ・・・・私、愛香なんて人じゃありません!!いやだ、お兄ちゃんのところを、離れたくなんかない!」
「あなたは間違いなく愛香様です。はやく、この方を連れて行きなさい」

まわりのスーツ男たちに命令する。

「いや!いや!離して!お兄ちゃんっ」





「雛を、連れて行かないで下さい」


僕は男の腕を掴んだ。

「やめてください。一年も一緒に暮らしてきたんです!今さら、身勝手なことを言わないで下さい!」
「本当にありがとうございました。それにはそれ相応の御礼をします」

そう言って、男は大きなトランクケースを出した。中に何が入っているかくらい、僕にもわかる。
 僕はなおも懇願した。

「お願いですから!だから…!」
「黙らせろ」





僕は、腹のあたりを誰かに殴られた。
 ふらつき、かすむ視界の中で、雛が泣き叫ぶのが見えた。



「お兄ちゃん、お兄ちゃん!!お兄ちゃ…彩人!!あやとぉ!!」






彩人。僕の名前。
雛が僕の名前を呼んだのは、これが最初で最後だった。
 あとにも、先にも。



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Novel Editor by BS CGI Rental
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