それから僕は、以前にもまして雛を部屋から出さないようにした。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんて、名前はなんていうの?」
その日、雛が僕に尋ねた。
「僕の名前?」 「そう。わたし、考えたらお兄ちゃんの名前を知らないの」
今まで告げなかった僕の名前。
「僕の名前はね・・・・・・・・・・ゃ……」
こそっと雛に教えてやる。
「素敵な名前!」
君は気づかなかったんだ。 君が初めて僕の名前を呼ぶとき、君はもう、いないってことに。
雛はカゴの中の小鳥のように、僕と猫だけを遊び相手として暮らしていた。 毎日必ずすることは、僕とのセックス。朝ニュースを見たことを思い出し、僕は雛の体の上でだまっていた。
「………続き、しないの」 「する気が起こらないんだよ」 「じゃあ、わたしがしてあげる」
一年前から、教え込んだ雛は、僕のペニスを口にくわえた。
「え?」
ピチャ、ピチャピチャ 雛はゆっくりと手でペニスを扱きながら、ざらついた舌で舐めあげた。 一度萎えたそれを、また大きくしていく。先からあふれるカウパーも飲み込んでいく。
「ちょ…ひな、あっ……あぁ」
とろけるような口の中と、舌の感触。 死ぬほど気持ちがいい。
「お兄ちゃん、感じてる?」
一年の間に、僕は何度この口の中でイッただろう?
「うん…気持ちいいよ」
雛の口の中が液でいっぱいになるのに、それほど時間はかからなかった。
「沙良ちゃんのココ、本当に綺麗だね…」 「そんなこと言わないで。社長さんのほうがまだまだ固くて」 「そういえば社長さん、このまえテレビに出てなかった?」 「ああ、ニュースだね。」 「たしか、娘さんが行方不明だとか」 「一年前、娘は誘拐されて、金を渡したのに戻ってこなかった。目に入れても痛くないほど可愛がっていたのに…」 「じゃあこんなところにいてていいの?」 「かまいはしないさ」 「すきよ」
沙良は微笑んだ。 沙良と同じベッドの中にいる人、それが、雛の父。
如月光喜(キサラギコウキ)
|
|