残った団員達が何もしていなかったかというとそうではない。皆それぞれに動いて、そして乱れていた。 先ず最初に動いたのが善三郎と順子である。自分達が結ばれるきっかけになった火野河、それを此処に再現するべく、球体をさながら火野川の火山に見立てたのだが、球体から火が出るわけでもなく、火傷をした人が出るわけでもなく直ぐに頓挫してしまった。 「そんなにしたければ、火野河に戻れば良いだろうが。何故此処を通りたがる?」球体からそんな声が聞こえて来た。 次に動いたのが劫太郎である。木野川で動いたように球体への道を探るのだが、ミニ茂野河号もなくなった今、為す術はない。やがて球体から、 「そんなに木野川での行動が懐かしいんだったら、戻れば良いじゃないか」との声、どっちにしても「何故此処を通りたいのか?」である。此処で水奈美が、 「皆お父さんと兆一兄ちゃんに任せて、落ち着いてようよ」と一言もらしたが、天河と明が「それは違う」と一蹴した。こうして自分達が乱れていることを二人に教えて、それを解決するには戊野河に行くしかないのだと。 「それにしても、京はどうしたんだろう?」 と言ってきたのは寛である。自分の広い視野に京の姿が全く入ってこないのは何故なのか、と。それに水奈美は今自分が見ている京の乱れの全てを伝えた。これに答えたのが明である。よし、京を助けに行こう。その為には自分達のガンダ石に念を込めて広美と順子の二人に京の乱れの中に入ってもらうしかない、と。
応援団員残り八名とマネージャー残り二名と水奈美による、京救出作戦が始まった。八名で輪を作り、輪の中心に水奈美が立ち、その両脇にマネージャー二人が並び、そこで各々のガンダ石に念が込められた。そこで放たれる紫の光。それは兆一にも、億次郎にも、そして乱れの最中にいる京にも届いた。兆一・億次郎は「何かやっているな」と感じただけだったが、京の場合は違った。今まで自分一人で守っていた始太郎・穣次郎の所に広美・順子が現れたのだ。 「え?・・・二人とも、どうして此処に?」 「そんなことはどうでも良いわよ。京ちゃん、ここから呼ぼうよ。戊野川の笙子ちゃんを」 此処で三人は笙子を呼び、その呼びかけに笙子が答えた!それと同時に五つの地球からの幻も消え、始太郎と穣次郎は安堵の声を上げ、茂野河へと帰って行った。 「笙子ちゃん。」言い出したのは京だ。「これから兆一があなたを呼びに行くけど、ちょっと手違いがあって、兆一は直ぐにあなたの名前を言えないかも知れない。だけど兄さんが手助けに行くから、あなたから名乗るのは止めてね」 「解りました。京姉ちゃん・広美姉ちゃん・順子姉ちゃん・水奈美姉ちゃん、又ね!」
一方兆一と億次郎はもう直ぐ球体に辿り着く位にまで近づいていた。遂にこの章のクライマックスを迎えようとしている。
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