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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第4回   特別修学旅行、垓乃島・外山にて
「それじゃあ、気を付けて行って来るんだぞ」
「はーい父さん母さん、それじゃ行って来ます」
 全六、奈々美に見送られて三人は戊野河駅を出発した。目指すは垓乃島である。先ず垓乃島へ行って茂野河から来る何者かと会って、それから外山へ行って外宇宙からの何者かと会う、それが今回の旅の目的である。列車は江戸城を横切り、海上を渡り始めた。間も無く垓乃島である。ここで降りて待つ、といったときに海が突然シケ出した。一体どういうことなのか?それは次に聞こえた声で直ぐ解った。
「現・地球連邦大統領、大河遼太郎様到着。一堂面が高い、控えおろう」大河億次郎の子孫が今の地球連邦の大統領となっていたのだ。三人はその場に土下座をして、シケた海の中の垓乃島で彼の到着を待った。やがてやって来た遼太郎は、御付きの者の静止を振り払って、
「やあ、君達が七木一族、石・鉄・木の三人か。名前はこちら、丸打まで届いているよ」と三人に近づいて来た。これに対する三人の受け答えがまた三者三様で、
@ 石一郎:ひたすら頭を下げたままじっと動かなかった
A 鉄次郎:「何かお近づきのものを」と指輪を差し出した
B 木三郎:「会った記念にサインして下さい」と自らしたためた文書を差し出した
こんな感じである。遼太郎もこれには大笑いして、
「正しく、君達は『石・鉄・木』だねえ。君達なら、これから行く外山でも面白いことがあると思うよ」と、三人のこれからを予言するかのような事を言った。そして、
「天!」と天指しを一回、あれだけ荒れていた海が一気に治まった。そして其処にある銅像を指差しながらこう言った。
「見たまえ、坂本竜馬の像だ。戊野河日本海軍創始者として、此処に残っている。そしてこれから君たちが向かう外山には、戊野河日本陸軍創始者として、河合継之介が飾られている。行った際にはそれに触れるといい」
 そして、遼太郎は茂野河・丸打へと帰って行った。これから三人が向かう外山で何が待っているか、それは三人の想像を遥に越えるものだった。

 垓乃島から列車を逆行して、外山まで向かう。そのとちゅうで江戸城、戊野河駅の所で何人か人が乗ってきたが、三人は「こんにちは」と挨拶するだけで、特に気にも留めなかった。それがまさかあんな事になるとは、誰も思わなかっただろう。
 やがて列車は外山へと着いた。其処で三人は見た。今まで列車に乗っていた人々が人間・地球人以外の姿に変わっていくのを。こりゃあいけない、と三人は列車の外に飛び出して、其処にある戊野河日本陸軍創始者の河合継之介の銅像を触った。すると其処から紫の光が輝き始め、地球人以外の姿に変わった人々を消していった。其処に現れたのは、何と大河兆一!無量紫光団の一員として、今も現役で活動している彼が、現在に至るまでの丸打・茂野河・戊野河の歴史を語り始めた。

 七木穣次郎が地球連邦の大統領になった後、次の大統領を七木一族から出す事を穣次郎は止めた。「民主主義に反する」ことが理由だったが、そうして次の大統領は一般の民衆から選ばれて、穣次郎は自分の子供を戊野河へと向かわせた。今の大統領が億次郎の子孫になっている事は全くの偶然で、億次郎自身は今も無量紫光団の一員として活動している。
「君たちがいずれ宇宙に出る事が会ったら、億次郎と会う事もあると思うよ」と兆一。三人の力がもっと上がれば、それも可能だと言う。
「兆一さん、それにはどんな事が必要ですか?」石一郎のこの言葉への兆一の答えは、「人と逢う」というものだった。億次郎の子孫、遼太郎や自分だけでなく、河山伍四郎、空穴球八の子孫など、今までの丸打・茂野河・戊野河に携わった人たちの子孫に逢って、その「力」を貰う事が重要だと言う。
「でも、今回の旅は戊野河から外へは行けないんですよねえ」この木三郎の言葉に鉄次郎が「渇!」を入れた。今回じゃなくて、次回以降にすればいい、ただそれだけのことだ。これには石一郎も同意。かくして、今回の特別修学旅行は、三人の中に「次」を思わせるものとなった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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