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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第28回   茂野河対戊野河終盤戦・その結果と目が覚めた茂野河
 戊野河対茂野河、この試合は15回まで続いた。茂野河が1点取れば戊野河が1点取る、2点取れば2点取るといった具合で15回表を終わってスコアは6−6となっていた。打順は木三郎から、茂野河はこの回からどうやら秘密兵器らしい投手を出してきた。投げた球が捕手へ届くまで肉眼では見えない。こんな球をどう攻略して行くか?しかし木三郎・鉄次郎は「心配ない」と言った。投げた球が見えているのだろうか?その疑問は直ぐに解消した。見えている訳ではない。木三郎は打席に立って、何と目をつぶった。見えない球を心眼で捉えようとしているのだ。1、2、3球と見逃して「よし、捉えたぞ!」と一言。その通り4球目を痛打。打球はセンターを越えて結果は2塁打となった。次の鉄次郎も目をつぶって打席に立ち、初球を痛打。打球はライトを超えて結果はホームランとなり、この時戊野河の勝利が決まった。そして此処から七地球の行く末を問う会話が始まったのである。七木3兄弟と茂野河のキャプテンの間で。元山のメンバーはそれを見ている。一体その結果はどうなるのか?
 茂野河のキャプテンは、3兄弟に「よくも勝ちやがったな!」と怒りの言葉を心の声で言って来た。返事を舌のは石一郎。
「俺達は皆の為にこの勝負に勝ったんだ」
「どういうことだ?勝ったらまずい筈じゃなかったのか?」
「勝ったらまずいのはお前達・茂野河だ。そう言ってなかったか?兆一さんも、芳和さんも」
 これを聞いたキャプテンははっとした。そしてスタンドにいる元山のメンバーを見てそれが正しいという事を知ると、「すまなかった。俺達は茂野河の人間である事に慢心していたようだ。そうだな、茂野河の基本は勝つことじゃなくて負けない事だったんだな。次の勝負のときは俺達は負けない。だからお前達も負けないでくれ」
 かくして七校対抗戦は戊野河の優勝で幕を閉じた。この後七木3兄弟を待っている事があんな事だとは誰も思いもしなかっただろう。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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