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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第24回   対金野河戦・「匂い」を消せ
 その夜、戊野河メンバー一同は金野河の「匂い」の元は一体何なのかと話し合っていた。その結果出た答えは「天下の回り物の金についた宇宙のカス」。しかしカスだけに洗い流すのは大変な事である。明日の試合は一番最後だから、水河からの恵みの雨に期待したいところだが果たしてそう上手く行くかどうか。兎も角明日の事は明日になってみないと解らない、と一同は床に就いた。
 そして迎えた翌日、今日の休み組は火野河チームである。茂野河は第一試合、土野河とである。結果は9−0で茂野河の勝利。ここで大河億次郎の心の声が石・鉄・木三兄弟に響いた。
「茂野河は勝っちゃいけないんだ。そのことを君達が茂野河の連中に思い知らせてくれ」
「最終日に茂野河に僅差で勝つ!」この誓いを改めて胸に刻む一同だが、その前に金野河の「匂い」と戦わなくてはいけない。そんな思いを胸に抱えて気分が虚ろになっている戊野河一同を見て、試合を終えたばかりの茂野河のキャプテンが「又」笑いかけてきた。億次郎の言葉を知ってか知らずか、その笑いに「なにくそ!」と気を吐いたのは木三郎。そこで虚ろだったメンバーに「気合い」が満ち始めた。
「金野河の『匂い』くらい俺達が消し去ってやる!」
 金野河との試合は第3試合である。

 迎えた第3試合、金野河のベンチからはもう「匂い」が立ち込めている。ここで五郎あたりはもう戦意を削がれかかったが、石一郎の一言で状況はガラッと一変する。
「お前達、それでも地球人か!」この言葉を聞いて変わったのは「匂い」だけではない。それまで笑っていた茂野河のキャプテンの笑いも消えたのである。その瞬間から空からポツリポツリと小雨が振り始めた。水河からの差し入れだ。そんな中始まった試合、後は特に変わった事もなく展開し、結果は5−3で戊野河の勝利に終わった。これを見て茂野河のキャプテンの顔に走った「何か」を感じた人は誰もいなかっただろう。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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