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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第23回   茂野河キャプテンの予言・金野河の「匂い」
 その日の夜、戊野河メンバー一同は明日以降のことについてミーティングを行った。明日の試合は木野河対火野河、土野川対金野河で茂野河は休みであるが、その茂野河の様子をよく見ておく事が重要だと全六は言った。茂野河の何が重要なのか?それは明日の球場で明らかとなる。
 そして迎えた翌日、石・鉄・木三兄弟はスタンドで観戦している茂野河の何かを探りに球場へと足を運んだ。試合は木野河対火野河が行われている。その時茂野河のキャプテンらしき男が何かを呟いている。ここは僕に任せて、と木三郎がその呟きを解読し始めた。
「この打者は三振、次の打者ライト前ヒット、その次の打者は・・・」彼は次から次へと来る打者の結果を予言していた。「こいつはたいした奴だ」と木三郎が呟くと、彼は「まずい事を聞かれた」と呟くのを止めた。「木!余計なことを言いやがって!」と思わず叫ぶ鉄次郎。しかし石一郎は「それで良いんだ」ときわめて冷静である。自分達の力を見抜く力を持った奴がいると茂野河に思わせる事が一番だ、と言うのだ。そして試合は終了。4−2で木野河が勝利をおさめた。次の土野河対金野河の試合が始まるところで石一郎が「帰るぞ」と一言。明日の試合に備えて休んで置こうと言うのだ。二人もこれに賛成して、三人は球場を後にした。しかしこれから起こることを誰か見ていたか?それが一番重要なことをこの時は誰も知らなかった。
 それは金野河の攻撃九回の裏に起こった。先頭打者に土野河の投手が投げた第一球を打った時に、金野河のベンチから奇妙な「匂い」が立ちこめ始めた。それは茂野河のキャプテンは見ていたが、戊野河の誰も見てはいなかった。だが「匂い」は木三郎には届いた。全員が休んで寝転がっている時に、「何だ?この匂いは」と跳ね起きたのである。
 その「匂い」が立ちこめた後、土野河の選手から戦意は完全に消え去った。それまで4点差あった点差がいとも簡単に逆転され、結果は5−4で金野河の勝利。この「匂い」の元を解明しないと、明日の戊野河対金野河の試合で戊野河が勝つ事は不可能であろう。そこで石・鉄・木三兄弟は、何とかその「匂い」を解明しようと試合の終わった球場へと足を運んだ。もう誰もいない球場だが、「匂い」はかすかに残っている。その「匂い」を手がかりに金野河の秘密を探る三兄弟。それを見て笑っている茂野河のキャプテンの姿を誰も見てはいなかった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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