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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第22回   対元山戦終盤・最後に起きた思わぬ「事件」
 かくして打席に入った石一郎。一球目の完全なボール球を打ってライト線のギリギリのファール。次の投球の際「これから終盤までこの状態を保つ!」と叫びながら一振り、結果はライトフライ、三塁ランナーの一美がホームに帰って点差はまた同点になった。
 そして大事なのは結果だけではない。石一郎の叫んだとおり九回までは元山にも、戊野河にも点が入らなかったのである。ランナーが出るには出るが皆残塁で終わってしまう・・・そんな事の繰り返しだった。
 そして迎えた九回の裏、元山は一番打者からである。ここで戊野河の投手は木三郎に交代した。「天地ボール・二人版」をどう打ってくるか、ベンチのミゾレ・ユキ・伍子にも解らないというが、「絶対打ってくる」と確信しているのは鉄次郎である。
 その確信は確かだった。先頭打者はボールが落ちて来る時を見計らって打った。打球は三塁の五郎の横を抜けるかと思われたが何とか捕球。しかし一塁には投げられずに内野安打となった。
 ここで集まるナイン。次の打者は代打となって、既に木三郎の球を「打てる」気分で満々。「ホームランだけは避けよう」と話し合いがまとまってナインは散った。
 そして木三郎が「天指し」をしながら投げた第一球、石一郎の「地打ち」と共に落ちて来る球を打者は「打った」。その瞬間鉄次郎が「人呼」をして打球は石一郎へのファーストライナー。塁を踏んだままだったのでランナーもアウトとなりダブルプレートなって2アウト。しかしベンチの全六は「このまま終わる訳がない」と一言。その通り、次の三番打者・四番打者と連続ホームランを放ち、五番打者は三振に切って取ったものの、九回表を終わって点差は2点差に広がってしまった。しかし九回裏の戊野河の攻撃は木三郎から、ここで再び同点に追いつければ延長戦に持って行くことが出来る。ここで元山は投手交代、今度は目にもとまらぬ剛速球を投げて来る。
「僕はなんとしてでも塁に出るから、鉄兄後を頼むよ」木三郎の言葉に頷く鉄次郎。かくして九回裏の攻撃は始まった。
 相手投手の剛速球に2−0まで見逃しを続ける木三郎、三球目を何とかバットに当ててバックネット側のファールを打つ。四球目から三球連続でボールを選んでカウントは2−3。六球目をカットして一塁側のファール。誰もが四球を選ぶのかと思った七球目を今度は痛打。結果はライト前ヒットだった。一塁上で鉄次郎に「任せたよ」と告げる木三郎。鉄次郎は「解った」と目で合図。そして迎えた鉄次郎の打席、一球目をフルスイングして結果はセンターオーバーのホームラン。かくして点差は再び同点となった。この後の五郎・一美・次代の三人は連続三振で終わったものの、これで試合は延長戦に突入する事となった。延長戦の最長回は十五回まで。戊野河チームの誰もがそこまで頑張るぞ!と気合をいれて十回の表を迎える。
 十回から十四回までは、どちらのチームも三者凡退で終わった。木三郎・石一郎による「天地ボール・二人版」や元山チームの投手の球の切れ味がよく、どちらの打者も手が出せなかったのである。そして迎えた十五回の表、元山チームの先頭打者は「何としても打ってやる」と気合満々。ここで石一郎はタイムを取り、これからの守備をどう連携していくか再確認をした。そして一球目、相手打者が石一郎の「地打ち」のタイミングを狙って打ってくる所で鉄次郎が「人呼」をした。結果ボールは三塁の五郎を強襲して、捕ったものの一塁へ投げられず結果内野安打となった。ここで次の打者は送りバントの構え、ここで木三郎は「天指し」をせずに普通のボールを投げた。驚いたのは元山側、思わず打者がバントをミスして小フライを上げると、木三郎自身がダッシュしてそのフライを捕り、一塁の石一郎へ送りダブル・プレーで2アウトとなった。ここで元山は代打を出し、いかにもホームランが打てそうな打者が出て来た。そこで戊野河も投手交代。再び石一郎が投手となった。渾身の力を込めて投げた一球目を打たれたとき、誰もが「ホームラン」と思ったその球を外野の一美・次代・三子が連携して何と捕った。結果十五回の表を終わって同点。誰もが「戊野河の勝ちだ」と思ったその時「事件」は起こった。空から落ちてきた隕石が何と球場を直撃、幸い誰も怪我人は出なかったが、試合続行不可能となった。審判団が協議をして元山の監督と戊野河の監督・全六を呼んで結論を出した。結果は「引き分け」スタンドからは不満の声が上がったが、戊野河のメンバーは内心ほっとしていた。「元山とは引き分けで終わる」という当初の目的が無事果たせた事にである。グラウンドでは落ちた隕石を片付ける作業が始まった。この為残りの試合は明日へと延期となり、戊野河のメンバーは心身ともにすり減らした戦いの後の休息が出来た事でまたほっとしたのであった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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