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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第20回   対抗戦開戦式・対元山先序盤
 丸打へ着いた一同を待っていたのは、遼太郎と何と、億次郎と零子だった。
「やあ、石鉄木の三兄弟。君達の噂は、この子孫・遼太郎から聞いているよ」
 億次郎の突然の登場に呆気に取られている一同だが、零子がそんな皆にこんな言葉をかけた。
「あなたたちの活躍に、この七地球の命運が掛かっているのよ。それを忘れないでね」
 俺達の活躍が七地球の命運を握っているだって?驚いた石一郎をそういうことだよ、と鉄次郎がなだめ、だったらやってやろうじゃないかと木三郎が気を吐いた。ということは他のチームに地球人でない者がいるのかも知れない。

 そして七校対抗戦の開戦式が執り行われた。次々と入場する各学校の生徒達。最後に入場する順番になっていた戊野河士族学校の面々は彼らの中に「宇宙人」が居るか居ないかを凝視していた。その結果解ったのが、「宇宙人は元山の中に居る」ということである。しかし問題はそれだけではない事も同時に解った。地球人同士でも、相性の悪い人類が居たのだ。それは茂野河高校の生徒達と、木野河・火野河・土野川・金野河の生徒達である。茂野河の生徒達は、自分達が四つの地球を造ってやったと思い込み、そんな茂野河を四つの地球の生徒達は快く思わない。七地球の生みの親である大河兆一の「負の遺産」がこんな所に隠れていたのだ。
「七地球を造ったのは、兆一独りじゃない。君達七木の血筋もあっての事だと、茂野河の連中に思わせないといけないんだ」開戦式の最中に億次郎の声が石・鉄・木三兄弟に響いた。石一郎はそうだったのかと納得し、鉄次郎はそういう事だと言い、そして木三郎はだから僕達ががんばらないといけないんだ!とさらに気合の入った口調で気を吐いた。これから七地球の命運をかけた戦いが始まる、そんな時に突然大雨が降り出した。全六が言うには、これは水河から丸打への差し入れだそうだ。どうりでこの雨には不思議な力が込められているわけだ。雨の後の丸打球場には茂野河より何倍も強い生命力のある草が生えていた。これにはそれまで余裕のあった茂野河高校のチームもかなりうろたえている。自分達の土地よりも豊かな草が何故此処に生えてきたのか解らない、と言う感じである。
 大雨のため、試合開始は翌日に延期となった。そこで戊野河チームはその夜、これからの戦いを迎えてのミーティングを行なった。木野河・火野河・土野河・金野河は兎も角、元山や茂野河と如何に戦うかである。予定で行くと元山が初戦、茂野河が最終戦である。ミーティングでは元山とは引き分け、茂野河とは接戦の末に勝つようにしようという事になった。他のチームとの戦いはその成り行きで決めると言う事も決め、戊野河チーム一同は明日の初戦に望むことになった。

 そして翌日、昨日の雨が嘘のように晴れ渡った丸打球場で最初の試合、元山対戊野河の試合が始まった。先攻は元山、一番打者から既に「宇宙人」の匂いが感じられる。それは観戦している他のチームにも感じられているようで、「負けるな!」の声がどのチームからも聞こえて来ている。
 そんな中石一郎が投じた第一球、さながら岩のように重い剛速球にスタンドは沸いた。「これなら勝てるぞ!」とどのチームからも聞こえてきたが、その球を受けた鉄次郎が一言、「石兄、もっと気合を入れて投げろ!」この言葉にビックリしたのは元山のベンチ。「あやつ、もっと速くて重い球が投げられるのか」と戦意を削がれた感じである。かくして一回表は三者三振で終了。これから元山がどんな投手を繰り出して来るか、それが見ものだなと全六が一言。その通り元山の投手は何とも奇怪な魔球を投げて来た。球がバットをすり抜けるのである。速さはそこそこ、そこで林太郎が打とうとしても打てない。結果林太郎・森次は二者連続三振。しかし木三郎は違った。そんなすり抜ける球を「打った」のである。驚いたのは元山のチームの一同。「何故あいつはあの球を打てるんだ?」結果はライト前ヒット。次の鉄次郎もまた「打った」。結果はレフト前ヒット。しかし次の五郎はまたすり抜ける球を打てずに三球三振。この時石一郎は見ていた。元山のベンチで木三郎と鉄次郎が「打った」ところをじっと見つめていた「目」の存在を。今度の回は三振では終わらないだろうな、と他のメンバー全員に告げることにした。
 石一郎がメンバー全員に告げたとき、一番驚いたのは木三郎だった。
「石兄、それじゃあ僕達の行動全てがその『目』に見られてるってことなの?」
「そう言うことになるだろうな。だけどそれならこっちも『見れ』ばいい。伍子君、ミゾレ君、ユキ君、お願いできるかな?」
「え?私達?・・・解りました。任せてください」
 かくしての二回表、四番打者を迎えた所で鉄次郎が「タイム」の一声。さっきの「目」が石一郎の球をどう見たかをナインとベンチで再確認した。そして投じた第一球を四番打者は痛打。あわや外野への飛球かと思われたところを石一郎が「地打ち」、打球は木三郎が捕球して結果ファーストフライに終わった。此処で再び「目」の存在、その「目」を伍子・ミゾレ・ユキが「見て」、五番打者を迎える。此処で戊野河チームは投手交代を告げた。一塁手の木三郎が投手、投手の石一郎が一塁手となった。
 先ず木三郎が「天指し」をして球を天高く放り上げ、次に石一郎が「地打ち」をして捕手の鉄次郎へ送る「天地ボール・二人版」を披露した。これに対して「目」は来なかった。どうやら見切れなかったようだ。この球に対して六番、七番と連続三振をして二回表は終わった。
 続いての二回裏は、一美・次代・三子の全員が球を「見る」ことに集中して全員見逃しの三振に終わった。此処で全六が一言、
「これから試合は大きく動くぞ!」一体何を「見て」そう言ったのか?

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Novel Editor by BS CGI Rental
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