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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第16回   難問・コミュニケーションというもの
 季節は春を迎え、今回石・鉄・木三兄弟に課せられた課題は、今までになく難解なものだった。士族特Aクラス全員を連れて、「コミュニケーション」の何たるかを知るというものである。出かける際に一同の前に現れたのは、何と大河兆一!「十分気をつけるんだよ」とのメッセージに沸いた特Aクラス全員、逆に神妙な面持ちになったのは石一郎・鉄次郎。木三郎は「ようし、やるぞ!」と気合満々である。
 今回船に特殊空間を造ってクラス全員を乗せ、目指すは外山。其処から銀河系の無限遠点を過ぎた時、船が「何か」を感じてその場に止まった。
「目の前から何かミサイルのようなものが来ているぞ」と木三郎。しかし害意は感じられない。これは一体どういうことなのか?恐怖に慄く特Aクラス一同。しかし鉄次郎が一言「大丈夫」と。石一郎も「この石・鉄・木号はそんじょそこらのことじゃ何ともならない」と太鼓判を押した。その通り、ミサイルが衝突しても船は軽く揺れるだけで何事も無かった。ミサイルの飛んできた方を見ると宇宙人のUFOらしきものが見える。その様子から木三郎は「今のは、『こんにちは』っていう言葉だな」と理解した。そして「こちらも『こんにちは』って返そう」と「右波」を送った。送った先のUFOは少し乱れたようだが、宇宙人側も表情を崩してはいない。
「石兄、鉄兄。上を見て」と木三郎。上には大きな宇宙人の影が見える。「私らも影を造ろう」と鉄次郎。石・鉄・木と三角形になって、「垓!」と一言垓通拍手をして石・鉄・木号の影を上に作った。
 それからは、時々来るミサイル、返す右派、そんなことが暫く続いて「埒があかないな」と石一郎。奴等にコミュニケーションの本当を見せないといけない、と上の影をUFOの影に近づけて「いいかげんにしろ!」と一言言った。するとUFOは驚いて逃げようとしたが、「逃げるな!」と更に一言、びくついている宇宙人と石一郎が握手をして、その場は丸く収まった。
「それにしても、ミサイルのやり取りがコミュニケーションになるなんて、本当に難しいもんだな」と木三郎が漏らした言葉に頷いた一同。宇宙人とだからまだいいけれど、地球人同士でこんな事がまかり通ったら・・・本当にぞっとする話である。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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