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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第12回   木野河・石鉄木号、完成
 木野河へ到着したとき、三人を沢山の女性が待ち受けていた。噂の石・鉄・木さんよ!この人の相手は私よ!と。
 こんなにいっぱい、どうしたら良いんだと頭を抱えた石一郎に鉄次郎が見せた「指輪」。そうだ、これを使えば相手は直ぐに解る筈だ。そこで鉄次郎が指輪を女性達に向けたところ、嵐のような風が起こり、後に三人の三つ児のような女性が残った。
「君達、名前はなんていうの?」木三郎のこの問い掛けに「解らない」との返事だ。鉄次郎は全身の気を指輪に込めて、石一郎の石版と僕三郎の証紙を出した。
そして石一郎が石版に一美(かずみ)と刻み、鉄次郎が指輪に次代(つぐよ)とあるのを確かめ、木三郎が証紙に三子(みつこ)と書いた。
 その時稲妻が六人に落ち、その後で三人の女性がそれぞれ個性のある顔つきで自分の名前を言い、それぞれ石一郎・鉄次郎・木三郎に抱きついた。
「遭いたかったあ!もう、ずっと自分が誰かも解らずにひたすら待ち続けて来たんだから」そう言いながら胸を叩く一美・次代・三子の三人、石一郎・鉄次郎・木三郎はうんうんと頷きながら誰か此処に来てくれないかなあと、辺りを見回したがそんな気配は何処にも無い。唯りくが「これからはあなた達自身の手で切り開いていくんですよ!」と言うばかりである。
 あっ!石一郎は思い出した。金野河で貨車に鉄を摘んでもらった事を。此処にまで届いているだろうか?確か火野河との間で貨車のやり取りは今は無いはずだが・・・。
「大丈夫ですよ、その天は私が口を聞いておきましたから」りくの言葉を聞いて、六人は駅へと向かった。其処には客車の他に貨車が一両、中身は鉄次郎が金野河で積んだ鉄である。あの時は何となく積んだものだったが、此処・木野河でその意味がはっきりとするのだ。
「此処で、俺達だけの船を作る」と石一郎。外を石、その中に鉄を入れ、中には七木の木を入れるという今までに無い形の船が出来上がる。石一郎は河の上流で石を集め、木三郎は船を造るにふさわしい七木を見つける事となった。鉄次郎はこの場所で二人を待ちながら鉄を鋳ることにした。
 さて、石一郎の石探しは直ぐに終わった。このぐらいあれば良いだろうと、河の上流から鉄次郎の鋳っている鉄と同じぐらいの量の石を持って来た。
問題は木三郎、どんな七木を使えば船を造るにふさわしくなるか、さしもの天然の木三郎も慎重になっていた。そこで石一郎と鉄次郎は一美と次代を三子と共に木三郎の所へ行かせて、二人の目を自分達の目と同化させて木三郎の木探しの手伝いをする事にした。
木三郎は河の最上流の大きな七木を見つけていた。この木なら船にふさわしいかもしれない、だけどこの木を切ったらこの地球にどんな影響が出てしまうか・・・迷っていた。そこに来た一美・次代・三子、代わりに石と鉄を置けば大丈夫、と遠くからの石一郎と鉄次郎の言葉を信じて、次代が用意した刀で木を伐採、直ぐに石と鉄で大仏を造りこの木野河の守護神の魂の宿り場を作り、麓の石一郎・鉄次郎の待つ船造り場まで舞い戻った。
船造りは凄まじい早さで行われた。木三郎が木で外形を造り、そこに鉄次郎が鉄をかけ、石一郎が石で蓋をする。そして出来上がったオリジナルの船、名前は何にしようか?と考えた三人に、りくがこう答えた。
「この船は貴方がた三人が作り上げたものです。だから名前は『石・鉄・木号』というのはどうですか?」
 これに三人同時に、よし!と一声。これから丸打に向かうのにはこの船を使う事になるだろう。りくは丸打までは私も乗せて下さいと言った。その先何処へ行くか、三人の腹はもう決まっていた。そう、丸打を通り、茂野河を抜け、戊野河へと帰るのである。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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