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七木一族、石・鉄・木 作者:七木ゆづる千鉄

第11回   火野河・温泉めぐりとちょっとしたトラブル
 火野河へ到着する寸前、りくが三人にこんな事を言って来た。
「先ずは今までの旅の疲れを癒してから、次の問題に取り掛かりましょう」
 それが一体何なのか、答えは直ぐに解った。三人を乗せた列車が火野河駅に着くと同時に水列車からの最後の放水が始まった。雨は火野河の火山の頂上にまで振り、麓には温泉が至る所に沸いていた。
「それじゃあ、りくさんも言ってたからこの温泉に入って、今までの旅の疲れを癒そうか」石一郎の言葉を待つまでもなく、鉄次郎・木三郎ははしゃぐように温泉へと入って行った。
 暫くのんびりと湯に浸かる三人、それにしてもここ・火野河ではどんな出来事が三人を待ち受けているのだろうか?それはやがてやって来たガンダ二人組みが教えてくれた。
「貴方たちは、ひょっとして大河億次郎さんと零子さんですか?」またも核心を突く木三郎の天然、二人は今火野河で起こっている問題を教えに来たのだ。
 何でも此処では湯の温度を上げすぎて人々に火傷をさせる輩がいるという。これからその討伐に向かうのだが自分達二人だけでは不十分だという。
「この、ガンダの格好だと警戒されてしまうんだ」と億次郎。だから丸裸の石一郎・鉄次郎・木三郎の三人に協力して欲しいという。
「これは是が非でも協力しなけりゃ。なあ、鉄・木」石一郎のこの言葉に頷く鉄次郎・木三郎。かくして火野河の温泉巡りと称してその実熱上げ野郎を討伐する旅が始まった。

 先ずは河の河口付近の湯から。何気無く入った三人に段々襲って来る熱さ。三人は三角形の形に固まって熱さに耐え、犯人の姿を探した。やがて石一郎の目に入った挙動不審な人物、「奴だ!」と叫ぶ鉄次郎、決して落ちない墨を奴につけた木三郎・・・。億次郎と零子がそいつを捕まえて、「三人ともご苦労さん」と労いの言葉をかけて最初の場は終わった。
 そして次の場所、次の場所と段々河の上流に向かってことを運び、最後の山の頂上付近の湯でことを収めようとしたそのとき、事件は起こった。
「鉄、指輪はどうした?」石一郎がそう声をかけて自分の薬指を見た鉄次郎、何?指輪が無い!あれが無いと次の木野河で連れ添いに三人全員が逢えない。困り果てた鉄次郎に億次郎が自分が探すと言った。鉄次郎の気を自らのガンダ石に込めて、今まで付き合ってくれたせめてもの礼だといってその場を去った。三人はこれからどうしようと意気消沈、零子が駅で待っていましょう、あいつは約束は絶対に守る男だから心配は要らないわよ、と三人を連れて行った。
 駅で待つ事一昼夜、億次郎が三人と零子の下にやって来た。無くしたのは頂上の湯ではなく途中の湯、討伐された奴の一人が腹いせに盗んでいったという。安心した鉄次郎はどうも有り難う御座いましたと億次郎に礼を言った。他の二人も頭を下げだが、礼には及ばないと億次郎零子と一緒に七地球循環線の逆周りに乗った。見ると空になった水列車が、火野河の下水を乗せている。火野河と木野河の間に荷物の出し入れは食料以外無いという事だ。かくして少しトラブルもあったが、三人は次なる目的地、木野河へと向かった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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