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何と言う・・・シャイアン 作者:七木ゆづる千鉄

第3回   爆弾三人男VSシャイアン・柔
 その日の井頭小学校の周囲では、やたら爆発事件が多発した。消防車・救急車・パトカーがフル稼働で、近所の人達はもう生きた心地がしなかったのだが、まさかそれがシャイアンと関係しているとは、柔以外には知る由も無かった。その柔は、何か胴着のようなものを三着繕っている。一体何を作っているのか?
 一方シャイアン・オネ夫・ともえちゃんの三人は、いつもと違う緊張感に包まれた教室にいた。其処にいたのは、何とも凶悪な顔をした三人組と、そいつらに苦しめられているクラスメイト達だった。
「一体どうしたの?」と言おうとしたオネ夫とともえちゃんを制したシャイアン、携帯電話が柔からかかり、オネ夫とともえちゃんの二人にすぐ家へ来るようにとのこと。二人は「何で?」といぶかしげな顔をしたが、シャイアンは「母ちゃんの言うとおりにしてれば大丈夫だから」と二人を送り出した。そして自らは、凶悪三人組の前に進んだ。
「皆をいじめるのは止めてくれない?いじめるなら俺をいじめてよ」
「何?・・・そうか、お前がいじめさせっ子の柔三か。待っていたぞ」
「柔三って本名じゃなくて、シャイアンってあだ名で呼んでよ」
「そんなのはどうでもいい!お前がこれからどんな目に合うか、この(と、木で出来た人形を取り出し)人形で見せてやろう。それ!」
 すると、奴等の中の一人が頭突きをした人形はまるで爆薬でも入れられたように爆発して粉々に散った。クラス中に広がる悲鳴、しかしシャイアンは何ら怯むことなく教室の隅へ行き、亀になって奴等が来るのを待った。見ると首には何か紐のようなものが巻いてある。其処には・・・。

 シャイアンの家へ向かったオネ夫とともえちゃん、家に居た柔は、二人にさっきまで繕っていた、今自分が着ている胴着の残り二着を渡した。そしてこう言った。
「この胴着は、柔三の首に巻いてある紐と繋がっていて、この町にある爆薬の場所を教えてくれるのよ。私と一緒に行ってくれるかい?」
 二人はこの言葉に賛成して、町中の爆薬探査が此処に始まった。胴着を着た三人組なんて、傍目からみたら何事か?と思われるかもしれない。実際お巡りさんから、「一体どうしたんだね」と聞かれることもあったが、柔の「何でも無いわよ!」との睨みにお巡りさんがびびる、などということがあり、何とか事件が知られることは無く、最初の爆薬がある場所に辿り着いた。

 丁度それと同じ頃、シャイアンは一人目の頭突き男をいじめさせていた。男が頭突きをするたびにシャイアンの首の紐から火花が走り、それと同時に柔達の見つけた爆薬に火が付きそうになる。しかし柔が「はっ」と気を吐くとその火が消える。そんなことが何回か続くうちに男が気を失って倒れた。すると爆薬から完全に火の気が消えた。
「これで一つ目は大丈夫。オネ夫君、ともえちゃん。二つ目を探すから、又手伝ってね・・・ああそうだ。忘れてた」と柔は携帯電話を取り出して119番を呼んだ。そう、倒れた男に救急車を呼んだのである。そして次の爆薬探査に二人を連れて行った。

 一方学校では、二人目の男がシャイアンに向かってこう言った。
「奴を倒すとは、お前もなかなかやるな。だが外で何が起こっているかまでは解るまい、なあ兄貴」
 兄貴といわれた男は、
「おかしい、町に全く変化が無い」と言った。そして此処で二人の会話。
「何?全く変化が無いってのは一体どういうことだ?奴があれだけ暴れて、全く爆発が起こらない訳が無いだろう?」
「どうやら、爆薬処理をしている奴等が居るようだ」
「何と、だったらそいつ等には消えて貰ったほうがいいな」
 そして男は何か火の塊のようなものを外へ向かって投げた。その火は柔達の目の前に現れ、三人を焼き尽くそうとした。しかし柔が「はっ」と気を吐くと、その火は小さくなり、三人は軽く火傷をしただけになった。
「何?俺達の火を消せるとは・・・あの女は一体何者だ?」
「俺の母ちゃんだよ。柔田柔。あんたらも知ってるだろう?悪行の限りを尽くした柔田一族を。その柔田一族を内部壊滅させた哲三の妻。俺はその息子、柔田柔三、人呼んでいじめさせっ子のシャイアンだ!」
「何、柔田一族?哲三、柔?お、お前は!」
「さあ、いじめの続き、行こうじゃないか」
 シャイアンの言葉に驚く男達、かくしていじめ&爆薬処理はまだまだ続く。

 少し間が開いて、二人目の男が気を取り直したと見えて、亀になっているシャイアンのすねを蹴り始めた。その度に柔達に爆発が襲い掛かる。オネ夫やともえちゃんの二人は「・・・もう駄目・・・」と気弱な台詞を言うが、柔は「はっ!間駄間駄!」と一人気を吐いて、二人に水を掛けて「大丈夫」と優しく言葉を掛けた。男の蹴り方はだんだん激しくなり、同時に爆発も頻繁に起こるようになって来た。男&爆発が勝つか、シャイアン&柔達が勝つか、緊張は最高潮に達した。
 やがて、シャイアンを蹴った男がそのままぱたりと倒れ込んだ。と同時に爆発も治まった。シャイアン&柔達が勝ったのである。すると三人目の男はこう言って来た。
「まさか、俺の出番が来るとは思わなかった。しかし俺は前の二人とは違うぞ。俺の得意技は絞め技だ。爆発も今までとは桁が違う。それでも良いのか?」
「母ちゃん、良いかな?」と柔に聞くシャイアン、「好きにしな」と答えた柔、ついに今回の最後のいじめに突入するのであった。

「さあ、首を出せ!きっちり絞めてやる」
「ちょっと待って、母ちゃん、準備いい?」
 男の言葉に柔の状態をシャイアンは聞いた。その柔は、
「一寸待っとくれ。さあ、オネ夫君・ともえちゃん。アタイの腋の下に、そう、頭を付けて」と、二人を脇に抱えて、ふんっ!と気合を入れた。
 すると、何と三人が空に浮かび、ゆっくりと飛び始めた。驚いたのはオネ夫とともえちゃんの二人、そして三人目の男である。「何で空なんか飛べるんだ?人間離れしすぎだ!」
「あんたらだって、攻撃するたびに爆発なんて、人間離れしてるじゃないか。常人じゃない同士、勝負しようぜ」と、三人目の男とシャイアン。
 一方、オネ夫とともえちゃんは、
「これからボク達どうなるの?」と目を白黒している。それに対して柔は、
「この先どんな相手が来ても、二人だけは惑わないようにこうしているのよ。あんな唐変朴な息子だけれど、よろしく頼んだわよ」と、内なる優しさを秘めたぶっきらぼうな言い方をした。そして、
「柔三!用意できたわよ」この一言の後、シャイアンの首を三人目の男が絞め始めた。それと同じ頃、町のある所から何度か炎が現れ、その度に柔達がその火を空から消す、そんなことがしばらく続いた。
「どうだ、もう降参だろう?」
「絞め方緩いよ。まだまだ」
こんなセリフのやり取りが何回か続き、三人目の男が、
「もう腕が、力が続かない。俺ももう駄目だ」と言って気絶した。それは柔達にも伝わって、
「やったー、万歳万歳」とオネ夫とともえちゃんが喜びの声をあげた。シャイアン達が遂に勝ったのである。柔は又携帯電話で119番を呼び、此処に爆発男三人組は全員病院送りとなった。そこで柔が一言、
「これで、暫くはうちも静かになるわね。どの位かは解らないけれど」と漏らした。これからこの話は、いじめっ子とシャイアン達の対決、と言うよりは、いじめに関する心の傷をシャイアンが治していくと言う方に変わって行く。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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