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此処に兆一・運動章 作者:七木ゆづる千鉄

第3回   土野河・茂野河応接談?そして最強の剣術使いと銃使い
 列車は今土野河へと向かっている。それにしても土
野河とはどんな所なのだろうか?その疑問は億次郎・
兆一にも解けない。そこに口を挟んできたのは、
「皆さんこんにちは」・・・何と、無量紫光団の団員の
一人だった。そして彼は話をこう続けた。土野河地球
はほとんど土に覆われて水が非常に少ないということ。
その地球に水を授ける役は茂野河応援団など、他の
地球から来た者が担って行くということ。それと同時に
億次郎の娘・陶子探しの旅は、この地球にいる一人
の少年が強く絡んでいるということなどである。その少年
の名は・・・「シンジ」だという。驚くべきはその出生星な
のだが、何と、火野河地球だという。
 また、何で火野河の少年が土野河に来るんだ?大
きな衝撃・疑問に包まれた一同に、紫光無量団のそ
の団員が言った言葉、
「これは、華美さんから陶子さんへのプレゼントです。土
野河には余りにも物が無さ過ぎる。だからシンジさんに
はある技を教えて此処へ来させたのです。それが何なの
かは、皆さんで確かめて下さい」そして彼は一同の前か
ら姿を消した。そして暫くして車内アナウンスの声、
「間もなく、土野河です。お降りの際は誰か一人、道
連れの人をお捜し下さい」何?この列車に乗っている
のは俺達茂野河応援団だけじゃなかったのか?と善
三郎が言った時、車両の出入り口から大勢の人の
声が聞こえてきた。火野河で大騒ぎしたツケが此処に
来たのかな、と天河が一言。やがて列車は停車して、
大勢の人々が騒ぎながらホームへと足を運んでいく。こ
の時応援団一同は敢えて直ぐには降りなかった。他の
人達が消えた後にシンジは残るだろう、と確信していた
からである。

 やがて人々の声も静まり、残っているのは応援団一
同と後二人だけ。一体どちらがシンジなのか、それは片
方の「ようこそ」の声で解った。この声はさっきの無量紫
光団の団員だ。とするともう一人がシンジか。そのシンジ
は開口一番、こう言った。
「あなた方が茂野河応接団の皆さんですか?」
 応接団?一体それは何だと誰もが思ったが、ただ一
人兆一だけは違った。
「そうです。俺達が茂野河応接団です。貴方のような
人を接待するのが仕事、無量紫光団から聞いてきた
んですね。これから一緒に行きましょう」と、他の「応接
って何だ?」の心の声にはガンダ石を使って、「後で教
える」と答えながら言った。

 元山電鉄・七地球環状線も、此処まで来ると様々
な人々が利用するようになった。今まで応援団一同が
通った、木野河・火野河はいざ知らず、今来ている土
野河、そして金野河の人々がこの鉄道を使っているの
だ。しかし、水河、その先の戊野河からは誰も来ていな
いことを一同はそれぞれのガンダ石で感じていた。一体
何故か?それはこの先水河により、そこから戊野河を
目指した時に解ると、無量紫光団の団長が言ってき
た。
「水河の水奈美さん、彼女が今回の旅の鍵を握って
いるのだが、それはまだ先のこと。今は陶子さんを捜すこ
とが最重要課題。まあ頑張ってくれたまえ」この言葉の
真意とは?それは兎も角今は目の前のこと、言われた
ように陶子探しに集中しなければいけない、だからシンジ
を接待するんだ。そう言ったのは天河、兆一、億次郎
の三人、いや京も含めた四人である。今は真夜中の
土野河駅、此処を夜明けには出ようと応援団一同
はそれぞれのミニ茂野河号の中で(シンジは億次郎の
所に入り)眠りに就いた。

 明けて次の日、全員が起きた時、駅の周りは黄色い
砂嵐に覆われていた。川の近くの筈なのに、これは一
体何故なのか?
「此処、土野河には水がほとんど無いんです。これから
向かう先でそれがもっと解るでしょう」答えたのはシンジで
ある。実際その通り、進めば進むほど土野河の地面は
乾燥していて「水」の気配が全くない。こんな所でどうや
ってシンジ・応接(応援)団の探す陶子に会えるという
のか?沈黙する一同、そんな時それぞれのガンダ石から
樹の声が聞こえてきた。
「みんな心配しないで。水なら私の所の七木で作った、
そうそのミニ茂野河号から出るから。そしてシンジ君、
華美から聞いたわ。貴方の火野河で身に付けたその
『炎』の力を。その時が来たら、私も華美も力を送るか
ら。頑張ってね」そう、もう応接団は孤立無援ではない。
今まで廻ってきた「木野河」・「火野河」の力も味方に
なっているのだ。
「よし、みんな気合い入れて行くぞ!天(天差し)!地
(地打ち)!人(人呼)!」と叫びながら型を振ったのは
兆一で、
「俺達にくれ、介錯の自由!」と指に刀を込めたのは
億次郎である。こうなると全員に硬さはなくなり、あのオ
リエンテーション・演芸番を再現しようとの意気込みで
あり、更にはかつての多野河で地球を空間的に増や
した時のモチベーションでこれから進む、と、何も知らな
かったシンジにまで解らせてしまう程のエネルギーに満ち
溢れるようになっていった。すると其処で一旦辺りが暗
転して出て来たのは空穴球八、こんな一言を言って
来た。「これから皆さんに色んな『山師』を当てます。ど
んどん蹴散らしてシンジ君を陶子さんに会わせて下さ
い」その後に見えた伍四郎の目の輝き、それから景色
は元に戻った。

 水のない河をミニ茂野河号で進む一行、やがて何か
の集落らしき所に出くわした。なにやら大きな声が行き
交っている。
「誰か、強い剣の使い手は居ないかぁ?此処にいるこ
の男、鉄も真っ二つに出来る強者の中の強者だぁ。
この男に勝つことが出来たならどんな願いも聞いてやる
と、この村長の仰せだぁ」声の奥でどうやら村長が両眼
を光らしている。一体どうする?と一同が思ったその中
で、兆一が「俺だ!」と手を挙げていた。
「おぬしの剣はどんな剣じゃ?」この村長の言葉に、兆
一は右手の人差し指と中指を伸ばして指剣であるこ
とを主張。周りからは馬鹿にした大笑いが聞こえた。そ
んな、指で剣の真似事をするなど愚の骨頂、真面目
に相手をする者など誰もいなかった、応援団一同とシ
ンジ、そしてもう一人・村長を除いては。村長は兆一を
自分の側にいるように手招きした。驚いたのは他の応
援団一同。何故村長には兆一のことが解るんだ?と
各々の顔を見合っている。するとシンジが一言小声で
こう言った。
「昨日の夜の伍四郎さんの眼差し、あれを見た時にひ
らめいて今日・此処に来ることが解ったので、火野河
の力を少し使って『約束の灯り』として村長さんの手
元に置きました。そして、兆一さんの指剣に灯りは反
応して輝いたんです」これからは、この溢れた「山師」を
茂野河の力であっと言わせる、それが陶子発見の糸
口を掴むという。しかし一体どんな形で陶子はみんなの
前に出て来るのだろうか?それは兎も角、これから最強
の剣の使い手を決める興行が行われる。兆一は其処
にどう関わるか・・・?

 先ず鉄をも切ると豪語する剣術使いに相対するのは、
身長差は3倍はあるだろうか、斧のような大刀を振る大
男、大声と共に剣術使いごと潰してしまった。そして一
言、
「俺の刀は、鉄をも潰す!」
 これには周囲の者達もどよめいた。ここで兆一の出番
かと思ったら、村長からの指示はなし。身長は並の大
きさの槍のような刀を持った男が現れた。そして大男が
振り下ろすおお刀に一突き、大刀は砕け散り、大男
はそのまま気絶をして倒れた。そして槍刀男の一言、
「その代わりあなた達が勝ったら、この指剣の秘密を伝
授しますよ」(此処で中・善三郎が「何てことを!」と言
い掛けるが、そこを天河・京が制止する。「兆一はカマ
をかけているんだ」と)
 そんなことを知らない二人組は、これは良いものが頂
けるとほくそ笑みながら億次郎との「早撃ち」をむかえよ
うとしていた。

 大砲男・機関銃男・そして億次郎の三人が、ちょう
ど正三角形の形で背を向け合っている。これから1・
2・3と数えてから撃ち合いが始まる。その時、二人組
が土埃を上げて億次郎の眼を塞いだ。これで指剣は
俺達のものだ、とほくそ笑んだその額に、億次郎の分
身ガンダが!
「命だけは取らないでおこうと思ったが、こんな腐れ切っ
た、そう、腐黄色者よりもっと腐った魂はガンダで緑化
して置くしか無い」この時に水のないこの地に雨が降っ
て辺りが湿り始めた。分身ガンダから振ったこの雨、続
いてミニ茂野河号からも放水が起こり、遂に水の無い
土野河に水の流れが生まれた。この「水」とシンジの
「火」、そして土野河の「土」、この三つで出来るものと
言えば・・・そう陶芸だ。「陶」子!

 シンジの「約束の灯り」から火を借りて、村の中央の
釜で村中の人達と応援団一同、そしてシンジは陶芸
にいそしんでいた。しかし「山師」討伐はまだ終わってい
ない。残りの奴等は、これから出来る焼き物やこの後に
生まれる宝、そう陶子を狙っているのだ。何故村長が
剣術使いを探していたか、それはそういう奴等から何と
してもこの村、引いては陶子を守る為の人を見つける
為だった。辺りがもう暗くなり村人は皆寝る支度を始
めたが、シンジ・応援団一同はこれから寝ずの番をする。
そしてこの夜、一同は初めて陶子と話すことになった。
夜の闇に、シンジの「約束の灯り」から出てきたその映
像に、億次郎が喝を入れるのだが。
 お、お父さん、と出て来たその声は不安がいっぱいと
いう感じである。外に出たい、でも誰かが自分を遠くに
連れ出すんじゃないかと思うと、怖くて外に出られない、
肩は震え、両眼からは涙が溢れている。それに対しての
億次郎の「喝」は、
「何を言ってるんだ!お前は強い、それに一人じゃない。
俺達は又次の所へ行かなければいけないが、此処にシ
ンジ君が居る。彼がこれからお前を守ってくれる」そして
明日の朝出ておいでと優しく囁き、それに頷いた陶子
は安堵した顔になり、映像は消えていった。

 そして朝が訪れ、焼き物が出来上がり次から次へと
取り出された。そしてその後、空になった釜から紫色の
光が放たれ始めた。村人達は一体何だと恐れたが、
村長はこれぞ我々の希望の光だと言う。そう、陶子が
暗い地中から地上へと出ようとしているのだ。この時応
援団一同もガンダ石と指剣の用意をして、陶子をさら
おうと企む「山師」に備える。やがて紫色の光が消えた。
今だ!と釜へと飛び込もうとする邪な気配を指剣とガ
ンダ石から放たれる大小様々な分身ガンダが遮った。
その気配が無くなった時、億次郎は釜の中へと瞬間
移動。シンジと二人で陶子を迎えに行ったのである。

 土野河駅には、シンジと陶子が送りに来ていた。億
次郎は此処で陶子に分身ガンダの出し方を教え、今
ついでに樹と華美にも教えたから、と一言を添え、電
車に乗り込んだ。その時シンジが、今度行く金野河は、
もっと大変な所です、十分注意して下さいと告げた。
そして電車は出発、隣の車両に怪しい奴らを一緒に
乗せて、次なる地球・金野河へと向かった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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