■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

此処に兆一・命動章 作者:七木ゆづる千鉄

第9回   対抗戦開幕・何十人の元山対九人の茂野河
 対抗戦の当日、丸打はそれこそ貫けるような青空の下だった。茂野河応援団一同は学ランの天河・始太郎・穣次郎とセーラー服の順子・広美と後野球のユニホームの連中で野球場の一塁側入り口に向かった。
 その途中で学ランの伍四郎・野球のユニホームの球八と出くわした。
「伍四郎、今日俺達は負けないぞ」
「ああ解ってる兆一、俺達も負けないからな」
 見ると球八の後には、八人のユニホームを着た連中がついて来ている。どうやら元山側も選手は九人に限定しているようだ。
 そして九人対九人がダッグアウトに並び、これからグラウンドへ出よう、としたその時、
「ちょっと待った!」と荒々しい声が響いた。見ると其処には何十人もの元山のユニホームを着た面々がいた。
「球八さんよ、俺達をメンバーに何で入れてくれなかったんだ?」
「いや、あの、それは・・・」答えに窮した球八を救ったのは兆一の、
「いいじゃん入れれば、但し先発メンバーじゃなくて控えメンバーとしてね」との一言だった。
「良いんでやんすか?兆一さん」球八の言ったこの「兆一」の名前に元山側の誰もが、「何?」と驚きの表情を見せた。しかし兆一はそんなことは異彩構わずに球八を呼び寄せてこちょこちょ話をした。その内容は、後で解る。

 そして対抗戦初戦の野球が始まった。此処で億次郎が兆一にこうこぼした。
「兆一よ、こっちは九人しかいないのに、向こうは何十人なんて、少し不公平じゃないか?」
「大丈夫だ億次郎、元山側の先発メンバー九人はリエントリーして貰うことにしたし、それに審判を見てみろ、解るだろう?あれは・・・」
「あ!あれは無量紫光団の団員だ!」
「それにこのボールを触ってみろ」
「こ、この感触は!」
 そして試合は元山先攻で始まった。茂野河の先発投手は兆一、右の下手投げで元山攻撃陣に合い臨む。これが「山」元山と「河」茂野河を丸打で完全につなげる為の戦いであることを知っているのは、茂野河応援団一同と、元山で言えば伍四郎・球八・りく位だろう。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections