UFOからこんな声が億次郎・兆一・京の三人に届いた。 「少し急ぎたいんで空間を飛んでいいですか?」三人の返事は「是」。何処へ行こうが三人の力なら追いつく事が出来る事は明白、問題はどれだけ早く笙子の元へ行けるかなのだから。そしてUFOは空間を飛び、三人はその後を追って、やがて土野河に似た、水が極端に少ない「地球」に辿り着いた。 ついた途端に、此処の地球人らしき人から、 「あ!私達に水をくれた船に似た、大きな船だ!」と、兆一のウルトラ・リンガルの通訳で声が聞こえた。笙子はこの地球に降りたことに間違いはないらしい。今、一体何処で待ち構えているのだろうか?そのときが来るまで、三人は暫く此処の地球人と話をする事にした。 「お三人さんは一体どんなご関係なんですか?鎧を着た子供と、赤ちゃんと、そして若いお嬢さん、全員姉弟ですか?」 「いや、あの・・・」言葉に戸惑う京、 「俺はこいつの兄貴だよ」きっぱりと言う億次郎、さらに、 「この赤ん坊だけど、こいつの息子かも知れないし、恋人かも知れないんだよな、兆」と兆一に語りかけた。それに対して「だあ」と頷く兆一。 これを聞いて驚いたのは聞いたおじさん、 「あなた方は、一体何者なんですか?この船といい、今の事といい・・・!」 「あの、それは・・・」と京は口篭ったが、 「只の地球人だよ。ちょっと変わってはいるけどな」との億次郎の一言に、おじさんは、 「じゃあ私達もあなたたちみたいになれるってことですか?UFOなんかに恐れなくても済むように」と歓びと興奮の入り混じった声で聞いてきた。 「そうだなあ、それは・・・」億次郎が言いかけたその時、空から何か工事をする音が聞こえて来た。 「どうやらその時が来たようですね」と京。元山電鉄の地球連絡線の線路がとうとうこの地球にもやって来たのだ。この地球がどんな名前になるかはまだ解らないが、やって来たりくの話によると、この線路は丸内に繋がるらしい。京はおじさんにこの線に乗って其処まで行って峠の水を飲めば力が出ますよと言っておじさんと分かれて、これから笙子の、今は「消子」の所へ向かおうとしているUFOへと兆一を負んぶして、億次郎を連れて行った。 「それじゃ行きます。お三人とも、宜しくお願いします」この言葉と共に動き始めるUFO、京は兆一を負んぶ、億次郎を抱っこしながらその後を追いかけた。飛ぶエネルギーは三人の力を一つにしているからUFOの全速力にもスピードは負けない。やがてUFOは空間をジャンプした。その瞬間兆一が天通拍手、 UFOの後を正確に追いかける。やがて三人は何か異様な空気のある地球の地上へと辿り着いた。見るとUFOはどこかに隠れている。どうやら消子に消されたら大変だ、と何処かへ身を隠したようだ。さて、其処で待ち受けている一団とは・・・。
一団の中の長らしき女が、これから生まれようとしている消子に声をかけていた。 「消子よ、あらゆるものを消すものよ、わらわの前に顔を見せるのじゃ」 「そう、ボクの名は消子」笙子の声だ。しかしやはり自分の名前を勘違いしている。億次郎が「違うぞ」と声をかけかけたが、兆一がそれを止めた。 「未だ早い、それはこれからのあいつの行動を見れば解る」兆一は一体何が解っているのか?
女の長の声に導かれて、兆一たちの前に現れた「消」子。長はどうやら三人を消したいらしく、 「解っておるな笙子、この奇妙な三人組こそお前が・・・」最初に消すべき相手だと言いかけた長の声を、 「解っている」と止めた「消」子。 「最初に消すべきなのは・・・」と指を長に向けて、 「こんなボクを作り出したお前達だ!」と叫んだ。 驚いたのは長である。すぐに部下を呼んでコントローラーが働いているかと聞いた。部下の答えは、 「全く操縦不能です。あそこにいるショウ子は、我々が作り出したものではありません」それじゃ一体あのショウ子は何者なのか?兆一たち三人以外、このことを知っている者は居ない。やがてショウ子から放たれた「気の波」によって、奴等は全てこの場所から消えていった。兆一が解っていた事とはこの事だったのだ。 「もう大丈夫?」と京は兆一に聞いた。兆一の答えは、 「まだだ、むしろこれからが大事なんだ」その答えの終わるか終わらないかの内に笙子が京に話しかけてきた。 「お姉ちゃん」その声は何処か寂しげである。 「ボク、お姉ちゃんにお願いがあるの」 「お願いって何?笙子ちゃん」 「お願いだからボクを殺して」 「え!何でそんな事を言うの?」 「だって例えあんな奴等と入っても、自分を生んだ人を消しちゃうぐらいの奴なんだよ。ボクは」 「違う!あなたを生んだのはあいつ等じゃない。ヨロズと零子さんよ」 「え?」笙子は少し自分の事を考えた。だが、 「やっぱりボクは死ななきゃいけない!お姉ちゃんお願い。そうさせて。ボクを殺して」 「そんな事・・・」京は少しためらって、 「それなら此処に居るほかの二人でも出来る事よ。笙子ちゃん、何故私なの?」 「その二人には何処か偽りの形が見える。この中でありのままの姿をしているのは、お姉ちゃん只一人だもん」 億次郎と兆一は二人のこの会話が続いている間ずっと心で話し合っていた。 「兆一どうだ?京はどうすると思う?」 「やっぱり、ああすると思うぞ」 「それじゃ京に伝えようか」 二人は京に「天通拍手をしろ」と言った。そして億次郎が地通拍手、兆一が人通拍手をするとも。 そして三人の拍手が同時に鳴った。これを聞いていた茂野河応援団の他の面々は、一体何が起こったのか?と驚きを隠せない顔でそれぞれを見た。只一人、垓和を除いては。 「最後は私が勤めないといけないようですね」この言葉の真意とは?
三人の拍手が鳴り響いた後、笙子はふと我に帰った。 「あれ?ボク何で此処に居るんだろう?」そして近くで気絶している京を見て、「全て」を悟った。 「あ!ボク自分で自分のこと勘違いしていて、お姉ちゃんにあんな無理難題を・・・何てことをしちゃったんだ!大丈夫?お姉ちゃん」 「大丈夫だよ笙子、此処には俺たち二人もいる」 「あ!お兄ちゃん!それに億次郎さんも、今まで二人は何処にいたの?・・・・あ!まさか!」 「そうだ笙子君、兆一と俺は今まで仮の姿で君の傍にずっと居たんだ」 「そんな事に気が付かなかったなんて、何てボクはあさはかなんだ!」 「そんなことはないぞ笙子」此処でヨロズが一言、 「俺の惑いをその身で振り払ってくれたお前の行動は誰よりも素晴らしい。その後自分が乱れてしまうのは仕方ない事だ」 「でも・・・だけど・・・でも・・・」自分を責め続ける笙子。どうしたらいいのか億次郎・兆一・京の三人にも解らなかった。 「ピーン」 突然響いた拍手の音、これは垓通拍手だ! すると笙子はその場で気を失い、ゆっくりと倒れて眠り始めた。代わりに起き上がった京、 「垓和さんは、笙子ちゃんの自責の念をなかった事にしてくれたのよ」眠りの中でそれを感じたという。 そして四人はその場に笙子が乗って来ていたミニ茂野河号を呼び寄せ、それに乗って皆の所へ戻って来た。そのミニ茂野河号の中には、白い色をしたガンダ石が落ちていた、これはいったい誰のだ?中と善三郎がそう聞くと、天河・明・寛・億次郎・兆一が「聞くまでもない!」と顔で言った。そう、笙子のである。 「これは、これから面白い事ができるかもしれないな」と兆一は言う。その「面白い事」とは一体何か?
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