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此処に兆一・激動章 作者:七木ゆづる千鉄

第8回   遂に起こった黄色い嵐・二人になった竜馬と継乃助
 Ray-O-Yellowの起こした黄色い嵐は、多野河地球の全てを取り巻いた。そしてこれで、西や東の街だけではなく、多野河の中州、元島や北夷島・南蘭島も含む島々も巻き込んで黄色い炎が起こった。これは一体なんだ?と驚く元島の応援団一同や竜馬・継乃助達に答えたのは垓和だった。
「腐黄色者達の怒りの炎だ。Ray-O-Yellowとして暗躍するだけにとどまらず、遂に地球を消し去るために自分の身を燃やし始めたんですよ」更に垓和はこう続けた。幾つもの命の惑星を一つにして出来た地球、それ故に命の輪廻に耐えかねた魂のカス=腐黄色者が知っていること、それは地球が自分達の生まれた訳であること。だから地球を消し去ることが自分達の楽になる道だと信じ切っている。でも本当はそうじゃない。地球を消し去れば、自分達と同じ者がもっと出来てしまうと言うこと、その事をどう伝えたらいいのか、それが解ればいいのだが、と。
 それを聞いていた竜馬が、
「おんし、どうしてそんな事が解るんじゃ」と聞いてきた。それに答えたのはヨロズ!竜馬・継乃助には初めての声になる。
「それは、彼が腐黄色者とは逆の立場で此処に来たからなんだ。脱落するのではなく、超えようとしたこと、それが彼に紫の色と、『垓通拍手』という技に出てきている、それをみんな見て欲しい」
「技なんて、私の拍手には何も力はありません。いくら拍手をしても、私は何も起こすことは出来なかったのですよ」と言った垓和の両手を握ったのは京、億次郎と兆一に目で合図を送った。二人はそれに応えて、億次郎のガンダ石に兆一がありったけの力を込めて拳をぶつけ、兆一の手から滝のように血が流れ始めた。そこで京が一言、「垓!」と。それと同時に垓和は自然と拍手をしていた。そこで起こったことに全員が驚愕。何と滝のように流れていたはずの血が止まっている、いやそれどころか血の出た痕跡が何処を見回しても無いのだ。
「垓和さん、これがあなたの『力』なんですよ」億次郎・兆一・京の三人がそう語り出した。垓和の拍手は、「天」・「地」・「人」のどれでもない、「垓通拍手」=拍手したその人物が「いけない」と思ったことを無かったことにすると言うものだというのだ。
「それじゃあ、私が拍手をして何も起こらなかった、あの状況は、起こらなかったのではなく、私が起こさなかったという訳なんですね」という垓和の言葉にうなずく三人。そこで善三郎が、
「それじゃぁ、今までの全て・・・俺達がここ・多野河地球に来るまでのことを無かったことに出来ないのかなあ」と質問をしてきた。
「そりゃあ無理だ」と兆一。「そこまでするには相当のエネルギーがいるし、第一そうすると、垓和さんが自分自身をいないものとしなきゃいけないじゃないか」言われてみれば成る程納得である。ほんわかとした一同に、「しかし、もし起きて欲しくないことが同時に二つ以上あった場合、如何に『垓通拍手』といえども二つとも無いことには出来ない」とヨロズが口を挟んだ。一体それはどういう事なんだ?全員が訳がわからないと言った顔をしている中、垓和だけが険しい表情をした。果たして彼の胸中にある二つ以上の「起きて欲しくないこと」とは何なのか?

 北夷島と南蘭島の家康を迎えに、億次郎と兆一に竜馬と継乃助を加えた四人組と、茂野河号に乗り込んだマネージャー以外の応援団の残り、垓和とマネージャー三人は零子とつなぎを取ろうとして元島に残った。北と南へ行った目的は唯一つ、二人の家康をやって来た山と海へ帰すことである。それぞれ街に連れて行った時に(文面では描いていないがそれぞれ東にも西にも連れて行っていたのだ)世界中のあらゆる事を見聞して、自らが造るべき江戸幕府の未来図が出来上がっている筈だ。だから黄色い炎に焼かれる前に、いや黄色い炎を逆にエネルギーとして、渡り切れなかった海や山を渡って行ってもらう、そうすれば茂野河からの地球が二つ出来上がる。竜馬と継乃助はそれぞれ別の地球へ行くと心に決めて茂野河応援団と行動を共にしている。この移動中に、四人組の中で不可解なことが起こった。四人の後を誰か二人が付いてきている。一体誰だ?億次郎と兆一は顔を合わせて頷き、移動のスピードを段々遅くした。これに驚いたのは竜馬である。
「おんしら、一体どうしたんじゃ?何を悠長なことをしとるんじゃ!」この言葉に、
「悠長?」と兆一の返事、
「そう悠鳥」と億次郎も答え、ここで継乃助が、
「うむ、俺達は何か不思議な鳥に乗っているのだな」と初めて口を開いた。四人+二人は悠鳥に乗っていたのである。この後の展開は、0の悠鳥・∞の悠鳥・不定形の悠鳥と、茂野河の垓乃島での悠鳥との対決と同じ順序で回り、そして不定形の悠鳥が竜馬・継乃助にこう語りかけてきた。
「お前は、何だ?」と。
 そして二人の答えは億次郎・兆一の心に響いた。
「俺は俺だ!(わしはわしじゃ!)」
 その瞬間四人に付いてきていた謎の二人の顔が露わになった。何と竜馬と継乃助がもう一組!その二人は北夷島へと向かって行った。そして南蘭島に辿り着いた四人、そこにいたのは炎の中島の人々の介抱に奔走していた家康であった。四人はその手伝いをして、その後家康を元島へと連れて行った。

 一方、北夷島に向かった茂野河号は、付いた途端にRay-O-Yellowの軍団に周りを囲まれた。連中が抱いているのが気を失っている家康である。
「こいつを消せば、全て終わる。お前達も長々と無駄なことを続けていたもんだなあ、わっはっはっはっ・・・」高笑いをしているその中に落ちてきた紫の稲妻、一体、何事かと誰もが思ったその中にいたのは、竜馬と継乃助である。悠鳥に乗った二人は、時間を超えて南から北へ来たのである。そして家康を奪還して茂野河号に乗り、応援団一同は元島へと引き返した。
 この後、二人の徳川家康・坂本竜馬・河合継乃助が関わることになる茂野河応援団の本拠地・元島で地球の激震・日本版が起こることになる。そしてその激震は多野河の至る所の他の島々、世界中の国々の激震へと続くのである。それは・・・。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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