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此処に兆一・激動章 作者:七木ゆづる千鉄

第7回   命名・七木垓和(ななきがいほう)
 億次郎の二度目の夢、そこには兆一・京も加わった。オアシスの中の零子、見ると誰かと一緒にいるようだ。一体誰だ?・・・何?
「あれ、億次郎。何だ今日は友達も一緒なんだ。紹介するよ、アタイの此処に来てから初めての友達・よっちゃんだよ・・・って、その顔を見るとあんた等の知り合いかぁ」零子の言う「よっちゃん」、それは万和だった。それもヨロズとなる前の小山万和としての姿で。愕然とする三人を眺めながら零子は「よっちゃん」と億次郎・兆一・京、そして自分の関係を観察している。ふむふむ、よっちゃんは兆一の父親、億次郎は京の妹、京は兆一の・・・母親で恋人?それでアタイは・・・まさか、億次郎の・・・。
「そうなんだ零子」と、万和が彼女の肩を叩いて言った。三人が来るまでは黙っていたが、やっと言えるようになった、これで億太郎にやっと全てを預けられると。
「え?親父?」一体何処に居るんだと辺りを見渡す億次郎に、兆一があそこだと指を指した。そこは、垓乃島。これには京も驚いた。お父さんの姿なんて見えなかった、どうして見せてくれなかったのと。
 その時垓乃島がそれまでの黒い色から紫色に色を変えた。驚いたのは男、自分は「黒」の筈だ。何故「紫」なんだと。
「黒は俺の色です」この声は億太郎!丸打峠の家で消えゆく魂は次第に黒い渦の中に巻き込まれて行った。このままきえて行くのも良いか、そう思った時、黒の中で紫の魂の固まりを見つけ、「まだ俺は終われない」と黒くはなったが、まだ自我が消えていない自分しかこの魂を救えないと、ありったけの力を込めてその固まりを包み込んだ、そして辿り着いたのがこの垓乃島だったのだと。
「そうなんです。あなたは紫なんです、ええと何て呼んだらいいでしょうか・・・」と呼びかけた万和を、「天!」と兆一が突然天指しをした。そして「地!」と地打ち、「人!」と人呼。そして帰ってきた万和の抜け殻に、
「・・・垓!」と空間拳最新の技・「垓置」、いわゆる動く四股をして両手を水平にする技をした。すると万和の抜け殻が男に入り、見た目は全く万和そのものの人物が出来上がった。そして一言こう言った。
「あなたの名前は、垓和(がいほう)です」
「垓和?それじゃあ名字は・・・」垓和がそう訪ねた時、抜け殻を捨てたヨロズが叫んだ。
「それは、七木です」
 此処に、七木垓和・この物語を支える一人の人間が誕生したのである。

 それにしても、垓和なんて何処から持ってきたんだよと言う億次郎に、兆一は京の言った彼に「和」を授けると言ったこと、そして垓乃島の「垓」の字を付けてこしらえたんだと答えた。すると、「垓和」って何?と零子。兆一はちょっと考えて、麻雀での究極の引き分けの方法だと答えた。

役・垓和:
西入して輪廻ばかり続いた西4局、終局した時全員の待ちが同じ単騎待ちだった場合、この役が成立する。即ち全員引き分け。

「ちょっと無理矢理じゃないか?」
「まあ全員北なくない、つまり北があるから、から、わざわざ北をやる方法はないって事で」

 この会話、今は誰と誰の会話なのかは察しが行くだろうが、この会話で初めて見える垓和、それは果ての地には和があるべきだという兆一の意志が込められている。そして七木、これは茂野河に茂り、茂野河号を造り、そして多野河・元島で応援団一同の命の源になっている木の名前である。

 よっちゃんはもう此処には来ないの?と、少し寂しい顔をした零子に、これからは俺達三人と応援団の連中、それに垓和さんがいるじゃないか、寂しくなったら何時でも日食を起こせよ、無理しないぐらいにな。と背中に手を当てた億次郎。そんな二人を見て微笑み逢う兆一と京。そんな中垓和は次の危機を感じ取ったか、いや自分の思い過ごしであって欲しい、と心の中で呟いた。この呟きは他の誰かに聞こえたか?

 零黄島のRay-O-Yellowの連中は、この垓和の出現に慌て始めた。
「まさか奴が、こんなに早く現れるとは・・・仕方がない、我々自身にとってもマイナスになるが、あの方法をとるしかない」
 黄色い嵐は、更に激しく舞い上がる。これを見ていた、今は黒に色を変えた億太郎は、まだ自分は「次」へは行けない、奴らが本当の「救い」の手に気付くまで、自分は「今の自分」・垓乃島の砂でいようと

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Novel Editor by BS CGI Rental
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