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此処に兆一・激動章 作者:七木ゆづる千鉄

第4回   零子・億次郎の母と、垓乃島に現われた謎の人物
 赤いガンダ石の中に入っていった億次郎、最初に見たものは父・億太郎だった。
「億次郎、お前もとうとう此処まで来たんだな。これからお前の母、零子のことを話すからしっかり聞いてくれ」その口調は何処までも穏やかで、こんな父の態度は億次郎にとっても初めてだった。そしてその話の内容とは・・・。

 万和と圭が結ばれた後、億太郎は一人元山市に来ていた。自分の後継ぎを作ろう、そう思っては見たものの、実際誰をその為の相手にするか、今まで圭以外の女性を考えたことのない億太郎にとって、それは全く見当もつかないことだった。そんなある日、億太郎はある事故と出くわす。何と河山家の大邸宅が火事に見舞われたのだ。直ぐに分身ガンダを火の中に入れ、夫婦二人を救助したが、後の兄弟五人はもう手遅れだった。そして、億太郎はまだ一人息のある女性に気付く。普通ならもう手遅れの状態だったが、億太郎は昔からのガンダ使いのあることを思い出した。それは、ガンダ石を誰かの頭に入れながら何かを念ずれば、その人物を自分の思い道理に操れると言うこと。億太郎はただ一言、
「頼む、生きてくれ・・・!」と念じてそれをした。すると、火の赤い色が全てそのガンダ石に入り色を赤く染め、それを入れた女性はこう言った、
「あ・・・あれ、ここは何処、あんた誰?あれ?そう言えばアタイの名前なんていうの?」
 助かった。全く新しい人間として、彼女は生きることを始めたのである。億太郎は彼女に「零子」という名前を授けた。それから助けた河山夫妻に五人の息子達が全て焼死して、六人目を作るために是非ガンダの力を貸して欲しいと頼まれて、それを引き受け、六番目で「止め」という意味を込めて「伍四郎」と名付けた。それを見ていた零子は、
「アタイも、子供が欲しいな・・・」と億太郎を見つめて言った。
「俺とのか?」と聞いた億太郎に、ぷい、とそっぽを向いた零子。それを見て億太郎は、かつて圭に抱いた思いと同じものを自分の心の中に感じた。だが同時に、彼女に自分の子供を産ませる訳には行かないと肝に銘じた。彼女は自分のガンダ石で生きている。この上自分の種を植えたなら一体何が起きるか、少なくともこの元山・茂野河のエリア上には存在することが出来なくなることを確信していたからだ。だからそれからも二人は、まるで少年少女のような付き合いを続けた。
 しかし同時に億次郎の分身ガンダ・即ちオリジナルガンダは、子供を作り育て上げられる年齢の限界が近いことを億太郎自身に告げていた。一体どうすれば良いんだ?そんな悩みを零子には努めて隠す億次郎。零子も知らんぷりをしていた。
 そして年齢の限界に達したその日、零子が「あっ」という行動を起こした。
「ごめんね億太郎。アタイ知ってたの」と話を切り出した零子、自分が何故生きているかを彼女は知っていたのだ。そして彼女の中のガンダ石は炎の中での為か、赤い色をしているという。億太郎の限界も知っていた。でもなるべく一緒にいたかったから、今までずっと黙っていたと。
「それじゃあ、アタイは行くよ。さよなら億太郎。アタイが消えた後にあんたの子供、男の子が残るよ。名前は・・・『億次郎』にして、あんたに似た名前が良いから」
 そして、零子は消えた。後に億次郎と赤いガンダ石を残して。その時、億太郎は見た。未来に億次郎達が行くところ、多野河地球にいる零子の姿を。そして億太郎はこの時の自分の記憶を赤いガンダ石に封印した。

 母の全てを知った億次郎、父・億太郎に一体彼女は何処にいるのか聞こうとしたが直ぐ止めた。
「そう、あいつはお前の心の中にいる。これから何度と無く逢うだろう。それじゃ、俺は『次』に行く。後のことは任せたぞ」そして億次郎は元島にいる自分に戻った。側にいる兆一・伍四郎の二人は「言わなくても解る」と眼で言った。遠くで京達茂野河応援団マネージャー三人娘が呼んでいる。どうやら二人の徳川家康を連れた「山」組と「河」組がそれぞれの場所に辿り着いたらしい。億次郎と兆一は小屋へ、伍四郎は穴から元山へとそれぞれ向かった。

 そしてこの時、「垓乃島」茂野河ではなく、多野河の河口の遙か先にある島に男が一人驚いた表情で立っていた。この一言と共に。
「何と!此処は『地球』?地球に戻ったというのか、この私が・・・」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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