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此処に兆一・激動章 作者:七木ゆづる千鉄

第3回   二人の徳川家康?そして億次郎の「臆次郎」再び
 此処多野河地球には夜がない。表の茂野河地球のちょうど裏側、表から言えばマントルに当たるところにあるからそれは当然のことだが、此処の太陽、表から言えば地核に当たるところが時々日食を起こす。その時元島の辺りも暫く暗くなる。そしてその時東の山、西の海の景色が一変するのだ。茂野河応援団の仕事始めは、その初めての日食の後にやって来た。東と西に分身ガンダを置いて、街の様子を探っていた億次郎の眼がそれを捕らえたのだ。
「東の山はさながら日光、西は・・・そう駿河湾だ!と言うことは今来ているのは徳川家康つながりか?よし、テンさんに至急報告だ!」そして応援団全員の招集、「山」チーム(名字に「山」がついている者)が東へ、「河」チーム(名前に「河」がついている者)が西へ行くことになった。それぞれが自分の分身ガンダ(と言っても億次郎の以外は小さい。一番大きい兆一でも拳大ぐらいの大きさだ)に掴まり空を飛び、それぞれの街へ向かう。そして向かう山側・東多野河市、海側・西多野河市、共に最先端の技術が駆使され街は栄えている。東には空港か山道から、西には港か海底から次々と人々が訪れる。その人々とは二次元時間的に違う世界中の人々がやって来るのだが、本人達はそれを知らない。それを知っているのは二つの街の間を流れる河・多野河のたくさんの中州にいる様々の集団である。元島の茂野河応援団もその一つなのであるが、その集団の中でたった一つ地球の破壊を目論んでいるのがRay-O-yellowなのである。奴らが何処にいるのか、探ろうとした億次郎がふと思ったこと、自分の母親がゼロ・・・0・・・レイ・・・Ray?とっさに確かめた赤色のガンダ石、赤・・・赤+黄=橙、この多野河の岸の色!そして伍四郎に渡されたそのガンダ石をまさぐった時、
「億次郎、元島に帰るぞ」と兆一からの一言が耳に入ってきた。
「帰るってったって、今俺達は大事な仕事を始めようとしている所じゃないか・・・」
「始めるにしても、今のお前の精神状況じゃあ、何も出来ないだろう?後のことはみんなに任せて、先ずはお前の悩みを解決するんだ」兆一のきっぱりとした言葉に億次郎は解ったと従い、二人は元島に戻った。

 一方、それぞれ東と西に分かれた応援団の他の団員は、街中を歩いて徳川家康を捜した。東では「我が名は徳川家康なり」というものがいくつもいたが、それが偽物であることは各々のガンダ石を通じて解った。そして街の、東は山道の街への入り口に倒れて、西は港の岸壁に浮かんで、「徳川家康」はいた。何、徳川家康が二人だって?一体、何がどうなっているんだと疑問の声をあげたのは善三郎である。それに答えたのは何とヨロズ、
「二人の徳川家康をどうするか、これこそが地球の数を増やすための第一段階だ。山・河組のそれぞれが、これから多野河の他の中州に彼等二人を連れて行く、それから始めてくれ」この声は、勿論持ち場を離れた億次郎・兆一にも聞こえている。億次郎は直ぐみんなと合流しようとしたが、兆一がそれを止めた。先ず自分のことが重要だと言って。

 今、元島には億次郎と兆一、そして伍四郎がいる。マネージャーの広美・順子・京は団員用の小屋の中にいる。兆一がそうするように京にそれとなく言っておいたのだ。
「伍四郎、この赤いガンダ石に俺のお袋の記憶があるって言っていたが、それをお前は知っているのか?」
「それなんだがな。億次郎、確かに俺はお前のお母さんを見たことがある。だがその人がどうやって億太郎さんと逢って、どうしてお前が生まれて直ぐに消えたのかは解らないんだ。ただ・・」
「ただ何だ?」
「そのガンダ石は、その人がお前を生んで消えていったその瞬間に億太郎さんが左手に握りしめていたってことは知っている」
「おい、億次郎・伍四郎」ここで兆一が二人の会話に割って入った。
「億次郎がそのガンダ石が気になっているのは他にもあるだろう?Ray-O-Yellowの『レイ』と『O』=零、そしてこの多野河地球の橙色=黄色+赤。それも確かめたいんだよな」
「ああ兆一、そうだ。しかし俺は怖い!・・・臆しているんだ。もしも俺の想像が当たっていたとしたら・・・」完全に涙声になっている億次郎。言葉を無くし、こんなものを渡さなければ良かったと俯いた伍四郎。そんな二人に兆一がきっぱりと言った。
「このガンダ石には恨みや憎しみなんてものは何も入っていない。有るのはただ一つ、『愛』だ」
 そして更に、二人ともそんなことは解っているだろうに何心配しているんだと言い、億次郎に億太郎と対話をするようにと、「天指し」、「地打ち」、「人呼」をしてその指剣を億次郎の所から赤いガンダ石の中に指し向けた。
そして億次郎が向かったその先は・・・遂に億次郎の出生の秘密が明らかとなる。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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