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此処に兆一・始動章 作者:七木ゆづる千鉄

第15回   オリエンテーション直前・河山伍四郎登場
 茂野河高校のオリエンテーションは、入学式の翌日、朝9時から夕方4時、実に7時間もの長い時間を使って行われる。その間に新入生は体育館を出ることは許されない。昼食時間もなく、与えられるのは応援団のマネージャーからのやかんの水のみである。しかし不思議なことに、途中でトイレに行きたくなる者は一人も出たことがない。これはひとえに考案者の小山万和と大河億太郎、即ち「ヨロズ」と「ガンダ」の力によるものである。オリエンテーションが終わった後、新入生はそれまでより格段に、心・技・体が向上して、「茂野高生」として一人前になる。そして終わった時、応援団側にも新入生側にも、それぞれにそれぞれの「感動」が生まれるので、在校生やOBから「こんな行事なんかやめろ」という言葉が全く起こらないのである。
 しかし今回の場合はいつもとは違う。体育館の北側に「北」の生徒が、南側には「南」の生徒、そして「北」と「南」の間に「村」の生徒が並び、さながら「村」を挟んで「北」と「南」の合戦とでも言えそうな雰囲気がみなぎっている。この「合戦」を使って茂野河市全部の腐黄色者を「緑」か「黄金」にすること、それこそが今回のオリエンテーションの目的であることは応援団一同の、そして万和と「ヨロズ」、更には二人の「けい」−圭と京の心の中にしっかりと刻まれている。そして更にもう一人、「全て」を知っている男が今茂野河高校にやってきた。その名は河山伍四郎(かわやまごしろう)、元山高校の二年にして生徒会会長になった、元山の名家河山家の六男である。億次郎がまだ元山高校通信制の生徒だった頃の唯一の親友であるこの男、一体何のためにわざわざ来たのかは、実はこの時点では誰も知らない。何と、「ヨロズ」でさえも。唯一知っていた億太郎が一体彼に何を伝えたのか?

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Novel Editor