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此処に兆一・始動章 作者:七木ゆづる千鉄

第14回   圭と京の融合?そしてオリエンテーション前日
 京が「ガンダの祠」へ行ったその日の夜、兆一は不思議な夢を見た。それは、目の前に現れた圭と京が、白銀の光を放った後で一つになってしまうというものだった。
「な・・・なんだ?今の夢は、母さんと京さんが一つになるなんて・・・」自分の希望的憶測がそんな幻を作ったのかと、「しっかりしろ!」と自らを戒めた兆一だったが、隣の部屋から億次郎の、やはり「しっかりしろ!」の声を聞いて、今の映像を見たのが自分だけでないことが解った。その後二人は今見た「映像」について語り合った。その途中で「ヨロズ」の声が、
「このことはお前達二人だけの秘密にしておけ」と割って入って来た。
「そんなこと言ったって『ガンダ石』で俺達の心は直ぐみんなに解ってしまうじゃないか?」この兆一の言葉に対しての「ヨロズ」の返事はこうだった。
「お前達二人、それに京さんの心は意識すれば『ガンダ石』を持った仲間にも解らないで済む。考えても見ろ。億次郎は『オリジナルガンダ』、兆一は『ヨロズの言霊使い』の末裔、そして京さんは『新人間』じゃないか」
 この言葉に納得した二人は、明日の春合宿最終日、「空間拳・活法編」と「ガンダの力・初級編」の会得の最終段階に思いを馳せていた。

 春合宿最終日、応援団一同は茂野河の河口にある港・茂野河港に来ていた。元山電鉄の終点・「茂野河港駅」がある港である。此処で兆一はみんなが、あっ!ということを言った。何と腐黄色者を此処に呼び出すというのだ。
「奴らが本番中に来ても慌てない様に、練習をしなくちゃいけないからね」その口調はあっさりとして、それが逆に全員を緊張させた。
「大丈夫だって。前に家に奴らが来た時に、億次郎と二人で事なきを得たことがあったのは解るだろ。『ガンダ石』からその光景を全身に叩き込めばいいんだよ」この言葉にそれぞれの石に気合いを入れた一同だったが、
「良く解ったが、俺達にこれほどのことが出来るか、今一つ確信が持てないんだがな」といった天河に、他の大部分の団員がうなずいた。
 しかし、善三郎と中が、自分にも出来ると豪語した。これを聞いた兆一は何かの型なのか、両手の手首を付け何か掴むような形で左側に構えた。そして、
「ばうぅー、右場捨て!」と叫んで両腕を右側に動かして手から何か捨てた瞬間に港の海から腐黄色者が次から次へと現れた。これを見た善三郎は、何とかやってみるぞ、はいとばかりに「不定の定」を敢行して、何とかある程度の腐黄色者を実体化して、中は「ガンダ石」から青い光を放ち緑に変えた。「やったー」と喜ぶ二人に、しかし残りの腐黄色者達が、
「ヨクモ仲間達ヲ消シタナー!」と襲いかかってきた。まずい!とほとんどの団員が息を呑んだその時、兆一は右手の人差し指と中指を伸ばし、左手でそれを掴み丁度鞘から刀を抜く様に出しながら、
「ぶぁさ!左場読み」と右手の刀で空を切った後、鞘の左手に戻した。その途端に残っていた腐黄色者が黄金色に輝いた何かに変わって海の中に消えていった。
 一体今のは何なのか?とほとんどの団員達が目を丸くする中、天河と億次郎が同時に頷いた。天河は億次郎に言わせようとしたが、億次郎がテンさんに任せますと、仕草で囁いたので、天河が口を開いた。
「みんな、これが『空間拳』の技の一つなんだ。名前は『右場捨て打』と『左場読み剣』、それで良いんだよな、兆一」
「そうです、テンさん『不定の定』だけだと腐黄色者の全部は消化出来ませんから、これを使って残りを全て浄化させるんです。3つを覚えればもう心配はありません」
 そしてこの後、2つの技を覚えるための練習が始まった。右手の人差し指と中指だけで逆立ちをして腕立てをしたり、それぞれの「ガンダ石」を手首に挟んで気を出すなど、とても尋常な練習ではないが、初めてから1時間もしない家に全員が何とか出来る様になっていた。やはり「ヨロズ」と「ガンダ」は凄いんだと思った団員一同だった。そして明日、いよいよ運命のオリエンテーションが始まる。

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Novel Editor