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此処に兆一・始動章 作者:七木ゆづる千鉄

第13回   練習中に初めて倒れた億次郎と兆一・京の決意
 明くる日、応援団の春合宿の練習で、億次郎と兆一が初めて調子を崩した。団員達は「一体どうしたんだ?」と驚きの声をあげたが、天河の次の一言に全員が「あっ」となった。
「みんな自分の『ガンダ石』で確かめて見ろ。二人とも京さんのことで、今までにないショックを受けてるんだ。億次郎、もう彼女はお前が守る必要はない。そして兆一、お前は何とか二人の『けい』の区別をするんだ」
 しかし、そう簡単に区別することが難しいことであることは、誰の目にも明らかだった。何しろ二人は似すぎている。顔だけではない、同じ『新人間』であること、これは如何に兆一といえども簡単に出来得ることではないのだから。しばらく全員が黙り込んだ後、億次郎が突然、兆一に一撃を食らわせた。「天通拍手」ではなく、拍手をすると同時に地団駄を踏むという、今まで誰も知らない「技」で。
「名付けて、空間拳・新奥義『地通(チーツー)拍手』、此処に誕生」と億次郎の一言に、応援団一同は驚きの声をあげたが、兆一は違った。
「有り難う億次郎。思えばお前は母親について何も知らなかったんだよな」と言った。それを聞いて全員がそれぞれの「ガンダ石」で億次郎の「記憶」を見た。出てきたのは、億次郎の母親は「ゼロ」という事実だった。父親の億太郎が元山市にいる時、億次郎が産まれたが、その場には母親の姿が何もないと言う事だった。
「元山のことは、親父はおろか、『ヨロズ』にも解らないんだ」兆一のこの言葉に唖然とする応援団一同だったが、
「おそらく、今度のオリエンテーションが終わればその糸口が見えてくるんだろう?億次郎、兆一」と言った天河にうなずく二人。どうやら自分の「ガンダ」がオリジナルになって、億次郎にも万和の「決意」が解ったらしい。そして二人の「心」が応援団一同にも伝わり、「超人間発生装置」のことを聞こうとした善三郎と中に他の全員の「ゴールデンハンマー」が炸裂した。今はそんなことを気にしている時じゃない、目の前の「オリエンテーション」での茂野河の大掃除に集中すべきだと団結心を増す応援団一同だった。

 応援団一同が団結したその時、京は万和に「ガンダの祠」に連れてきてもらっていた。兆一の「迷い」が自分の「ガンダ石」からまさに手に取る様に解って、そして自分の兆一への気持ちを固めるために強い意志を持って、「イニシャルK」すなわち圭に会いに来たのだ。
「此処からは私一人で行きます。万和さんは待っていて下さい。『ヨロズ』から聞くことが出来ますよね」この言葉の後圭に会いに行く京、万和はそれを了解して入り口で待つことにした。二人の『けい』がどんなことを話し合うのか万和は察していた。しかし、それはその時になってから応援団一同に告げようと思っていた。そこで二人が何を話したかはオリエンテーションが終わった時に明らかになる。その時に兆一がどんな反応をするかはまだ解らないが・・・。

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Novel Editor