わたしは彼女がコーヒーを入れてくれている間、べつに意味もなくぐるりと彼女の部屋を見回してみた。
かよちゃんが一人暮らしをしている部屋は、全体的に白で統一されたシンプルな部屋だった。六畳もないくらい部屋なのに、空間の使い方が上手なせいで、あまり窮屈な感じを受けない。
ほぼ正方形に近い形をした部屋の右隅にベッドがあって、その反対側にはスチールラックがある。ラックには、テレビとかコンポとか雑誌とか絵本とか、その他細々としたものが綺麗に整頓されて並べられている。ラックとベッドの中間くらいのスペースに、白くて丸いデザインの、かわいらしいテーブルがひとつ置いてあった。ベッドの後ろには鏡台があって、その反対側には、タンスがひとつある。
化粧台とタンス向こう側はベランダになっていて、そのベランダの前には無地で白のカーテンがかかっている。突然のわたしの訪問にもかかわらず、彼女の部屋は綺麗に片付けられていて、わたしの部屋とは大違いだな、と、わたしは感心した。
「できたよ。」と、言って、やがてかよちゃんがコーヒーの入ったマグカップをふたつ持って戻ってきた。マグカップは赤と黄色の可愛い感じのもので、そのマグカップのふちの内側には、フランス語で、こんにちは。楽しいひとときをどうぞ、というようなことが書かれてあった。
「砂糖とかミルクとかいる?」と、かよちゃんはテーブルの上にマグカップを置くと言った。
「あ、大丈夫。」と、わたしは微笑んで答えると、そのままコーヒーを一口啜った。かよちゃんも何も入れずに口に含んだ。
かよちゃんのいれてくれたコーヒーは濃くがあって、すごく美味しかった。わたしがそう言うと、彼女は少し嬉しそうに笑って、「このコーヒー豆、スターバックスで買ってきたやつやねん。」と、いくらか得意そうに教えてくれた。
わたしとかよちゃんは少しの間テレビを見るともなく見ながら無言でコーヒーを啜った。しばらくするとテレビ画面を眺めていたかよちゃんが、「あのひと、誰かに似てるなぁって思ったら、太陽に似てるなぁ。」と、可笑しそうに笑いながら言った。
彼女に言われて今テレビに映っているその若いお笑い芸人のひとの顔をよく見てみると、なるほど、彼女のいうとおり、そのひとは学生時代の友人である太陽にそっくりだった。
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